ブログ:思い込みを変える具体的な方法①

私たちは様々な思い込みがあり、
それがもとで、いろいろ悩みや問題を
生み出していると言っても過言ではありません。

例えば、
「自分はダメな人間だ」
「私はみんなから嫌われている」
「私は家族や職場に恵まれていない」

そんな思い込みがあると
さらに自分を追い詰めることになり、
どんどん悩みや問題は悪化するばかりです。

逆に、その思い込みが
緩んだり外れたりすれば
今まで悩んでいたことも、
あまり深刻に考えないようになり、
一気に気持ちは楽になります。

そんなことは誰でも
わかっていることなのですが、
その思い込みから逃れることは
言うほど簡単ではありません。

一方で、その思い込みを緩めるための方法は
たくさんあります。

私も心療内科医のときには、
よく患者さんの思い込みを緩めるために
いろいろなことをやりました。

もっともポピュラーで、
最も難しいのがリフレーミングです。

これは有害な思い込みを
無害な思い込みに変えるという方法です。

一般的には、
根暗だと思っている人に対して、
「あなたはとても思慮深い人ですね」
などと言うのが有名です。

どんなことにも表と裏があるので、
違った視点から表現すれが、
見方が変わるというわけです。

しかし、これは実際には
あまりうまく機能しません。
失敗して落ち込んでいる人に
「失敗は成功のもと」などと言っても、
何の意味もないのと一緒です。

よほど、インパクトのあることを
言われた場合は、
その一言でガラッと変わることがありますが、
実際にはそこまで心に響くような言葉は
そう簡単に出てくるものではありません。

以前、難治の白血病の患者さんが
必死になって治療法を探していましたが、
ある人から「必死になったらだめだよ、
『必死』って「必ず死ぬ」って書くでしょ」
と言われ、ハッとしたというのです。

それ以来、その患者さんは
あれこれ考え過ぎることはせず、
自然のままに生きて行こうと思えるようになり、
とても楽になったと言っていました。

このように状況や時機、タイミングにより
ストンと入ることはありますが、
実際はそう簡単ではありません。

直接思い込みに働きかける方法としては
論理療法も有名ですが、
これはその人の「思い込み」を指摘し、
反駁し、打破するという
少々強引なやり方であり、
私はあまり好きではありません。

他にもNLPのようにイメージを使った方法や
認知療法のように思い込みを拾い上げ、
それをワークを通して
少しずつ修正していく方法などがありますが、

これらも操作的で自然さに欠けるところがあり、
私はあまり好きではありません。

私は、思い込みに直接働きかけるのではなく、
行動と絡めて間接的に思い込みを変える方が、
実際的で有効性が高いと思っています。

思い込みは、そこに意識が向いている限り
どんどん強くなってしまいます。

逆に、何か他の行動による経験や学習を通して
新しい思い込みが生まれることで、
従来の思い込みが影響を受け、
遅かれ早かれ薄れていくという側面があります。

ですから、いかにして
何かしらの行動に目を向けてもらい、
実際に行動してくれるようなかかわりが
できるかがポイントになります。

そのための方法もいろいろあります。
もっとも一般的なものとしては
何でもよいので自分のやりたいことを見つけ、
それに日々熱中するという方法があります。

それは絵を書くでも、
新しい料理を工夫して作るでも、
習い事を始めるでも何でも構いません。

自分がやりたいと思うことや、
自分にとって役立つと思えることなら
何でも構わないのです。

そうしたことに取り組むようになり、
次第に夢中になってくれば、
そこには楽しさや新たな発見、
喜びや幸せを感じられるようになります。

それらが不都合な自身の思い込みを
薄めてくれる役割を果たすのです。

例えば、自分はダメだという
思い込みを持っていたとしても、
やりたいことをやっているうちに、
「やりたいことを楽しめている自分」は
必ずしもダメだとは限らないなあという
思いが出てくる可能性は十分にあります。

そのうち、
自分はダメだという思いは次第に薄れ、
こんな自分でもOKという思いに
少しずつ変わっていくというわけです。

ただ、自分はダメだと思い込んでいる人は
往々にしてやりたいことや
自分に役立つことに気づいていないことが多く、
いかにして、それらに気づいてもらい、
とりあえず、その第一歩を
踏み出してもらえるようなかかわりができるかが
ポイントになります。

その際にネックとなるのが、
ネガティブな思いへの引き戻しです。

せっかく、少し前向きになってきたとしても
「自分はダメだ」という思いが
ふと出てきてしまったりすると、
またそこにこだわるようになってしまうのです。

それに対しては、
昨年の12月4日のブログで紹介した、
思い込みを客観視することで
その思いに巻き込まれることを
防ぐというACT的な方法が役立ちます。

もちろん、こんな時も
運動するとか掃除をするといった、
何か「行動」することで、
ネガティブな思いを逸らすという
方法もあります。

さらに私が考案した(と思っているのですが)
「まあいいか」療法もあります。
ネガティブな思いが出てきたら、
心の中で「まあいいか」と唱えるのです。

最初は、ただ機械的に唱えるだけでいいのです。
それをしばらくしていると、
次第に気持ちも伴ってきて、
本当に「まあいいか」という気持ちになるのです。

お経のように唱えるという、
その「行動」自体にも効果はありますが、
結果としてネガティブな思いが、
「まあいいか」という思いに変わるので、
とりあえず出てきた思い込みを外すのには
とても有効です。

いずれにせよ、
「行動」に目を向けるというのは
思い込みを軽減させるためには
とても有効な方法です。
(続く)

    ブログ:思い込みを変える具体的な方法①” に対して4件のコメントがあります。

    1. 思い込みを変える具体的な方法① ということはこの後、②も③もあるのですね!
      うれしい~ 期待しています(^O^)/

      今、92歳と88歳の両親を介護中ですが、不安神経症の傾向が強い母の介護に行くと、それに影響された自分が立ち直るのに3~4日かかっていますが、最近になりようやく、「まあいいかっ」がちょっと上手になってきました。
      その②が楽しみです!

    2. 佐藤弘樹 より:

      先日、「実戦 心理療法(村上伸治 著)」という書籍を読んだのですが、
      強迫症の患者さんへの対処として紹介されていた「ジャマイカ人間」(じゃあ、まあ、いっか)というのがあり、同じことを考えておられるのだなと思いました。

    3. holicommu より:

      「まあ、いいか」というのは比較的思いつきやすいワードだと思いますが、私としては心のなかで「お経のように唱える」というところがポイントだと思っています。無理に「まあ、いいか」と思う必要はないということです。そこがオリジナル?かも

    4. holicommu より:

      いつもブログを読んで下さりありがとうございます。第二弾もこうご期待を

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