ブログ:「思い込み」を変えるコツ

前回のブログでは、
どうしたら思い込みを
変えられるのかということについては
全く触れませんでした。

そこで今回は、ACT(アクト)という
心理療法の考え方に基づいて
私が理解している範囲内で
それについて簡単に説明をさせて頂きます。

前回の志村Drの話に出てきた
よりよい思い込みの一つに、
「思考と感情はコントロールできない」が
ありました。

これはACTの中では中核をなす視点ですが、
意味するところは、
少々理解しにくいかもしれません。

例えば、「自分はダメだ」とか
「Aさんに会うのが嫌だなあ」という
思いや感情があったとしましょう。

しかし、これらは
知らず知らずのうちに思ってしまったり
感じてしまったりするものであり、
「自分はできる!」などと
自分に言い聞かせたところで、
そう簡単に思いが変わるものではありません。

不安や落ち込み、好き嫌いといった感情も同様で、
理屈ではなく
自然にわきあがってくるものですから、
どうしようもないのです。

逆に、それらの思いや感情を
何とかしようと思って、
もがけばもがくほど
さらにぬかるみにははまり込んでしまい、
かえってこだわりが強くしてしまという
悪循環に陥ることになります。

それがここで言う、
「思考と感情はコントロールできない」の意味です。

ではどうすればいいんだという話になりますが、
答えは単純明快、
そのままスルーしておけばよいのです。

つまり、思いや感情がわきあがってきても、
それを何とかしようとするのではなく、
とりあえずわきに置いておく、
BGMのように流しておく、
森田療法的に言えば
「あるがまま」に受け止めるということです。

ただし、ここでまた疑問がわいてきます。
それらの思考や感情は
自然とわきあがってくるので、
知らず知らずのうちに
それらにとらわれてしまっているのが普通です。

すると、
「またとらわれている!」と気づいたとき、
気を取り直し、「よし、スルーしよう!」と
再度取り組むか、
やっぱり「スルーする」なんて無理と思って、
あきらめてしまうことも多いのですが、
どちらの対応もよいとはいえません。

あきらめてしまったら、
今までと何も変わりませんし、
「スルーしよう!」と意識すると、
今度は「スルーする」ことに
とらわれてしまうのです。

つまり、「自分はダメだ」という思いが
「自分はダメだという思いをスルーしなくては!」
という思いに変わっただけの話で、
その「思い」に巻き込まれていることには
変わりないのです。

ですから、
思いや感情を流れるままにしておくというのは
実はなかなか難しいのです。

ではどうしたらよいのか。
それはわきあがってくる思いや感情を
客観的に眺めることが
できるようになればよいのです。

それができれば、
思いや感情に巻き込まれずにすむので、
とらわれやこだわりから
離れることが可能になります。

どういうことかと言うと、
他人が「自分がダメだ」とか「不安だ」とか
思っていたとしても、
それを見ている自分は、
「その人は自分はダメだ、不安だ」と
思っているんだなと、
他人事として受け止めることができます。

同じように、自分の思いや感情も
第三者的に眺めることができれば、
それらに巻き込まれずにすむので、
流したり、やり過ごしたりできるのです。

そのためのテクニックがいくつかあります。
その一つが脱フュージョンです。
例えば、「自分はダメだ」という思いが
わきあがってきたときに、
「自分はダメだという考えを持っている」と
言い換えればよいのです。

つまり、不都合な思い込みの言葉が出てきたら、
「~という考えを持っている」と
付け加えてつぶやけばよいだけのことです。

こうすることで、
「自分はダメだ」という主観的な思いが、
客観的な事実に変換できるので、
それに伴って自分のとらえ方も
第三者視点に変わるというわけです。

他にも、「ハッピーバースデー」や
「ジングルベル」の節回しで
「自分はダメだ」という歌詞を
頭の中で歌ってみるとかという方法などもあります。

こうすると、自然と顔がほころび、
気持ちが楽になるので、
とらわれが緩み、
その思いから少し離れることが
できるようになるというわけです。

要するに、自分の思考や感情を
他人事のように客観視できたり
緩めたりできれば、
とらわれ感がなくなり、
気持ちも楽になるので、
本来やるべきことに
目を向けられるようになるというわけです。

また、行動に目を向けるというのも
ACTのもう一つの大切な視点です。

人は自分にとって価値あることに
取り組んだり行動したりすることで、
小さな成功体験を作り出し、
小さな喜びや充実感を持つことができます。

そうすれば、「自分はダメだ」といった
思い込みは次第に薄れ、
そのうちそんな思いは自然と消えてしまうか、
ほとんど気にならないくらいにまで
小さくなってしまうというわけです。

思い込みを変えるテクニックや、
価値ある行動をみつけ、
それに取り組むためのコツなどは
ACT関連の本に詳しいので
そちらもご覧ください。

ACT関連の本も今はたくさんでていますが、
私が読んだ中で一番役立ったのは、
ラス・ハリス著、岩下慶一訳の
「幸福になりたいなら
幸福になろうとしてはいけない」(筑摩書房)
です。

また、初心者の方には、
志村祥瑚著、「人生のタネ明かし」(講談社)が
とても読みやすく、よいかと思います。

ご参考までに。

    ブログ:「思い込み」を変えるコツ” に対して1件のコメントがあります。

    1. 中川 より:

      『もうなにをやってもあかんわ』って曲を聴いて思わず『うふっ』と。先生の仰るジングルベルの感覚かなと思いました。

      人生の種明かし読みました。
      人生残り少ないからと焦って学ぼうとして、パニック発作を起こしてたのかもしれません。焦って過ごすこともミスディレクション。この歳まで母親に振り回されてきたからしゃーない、焦って当たり前なんだなと。

      読みたいけど難しくて無理と思ってたラスハリスの本も読めそうな気がしてきました。先生のブログ勝手に活用してます。いつもありがとうございます。

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