前回は、好きな行動に目を向け、
実際に行動してもらうことで
ネガティブな思い込みを緩める方法について
お話をさせて頂きました。
今回はその続きです。

ネガティブな思い込みを変えるためには
好きな行動や一般的な行動ではなく、
その思いを変えることにつながる行動に
目を向けてもらうという方法もあります。
これはよく私が治療に使っていたやり方です。

先ず、どうなったら自分の悩みや問題が
解決したと思えるか、
そのゴールを明確にします。

例えば、公認会計士になりたいという
思いはあるが、
今は勉強する時間もお金もないので、
その夢は叶えられないという
思い込みがある場合などです。

この場合は、
公認会計士の資格を取るための
時間とお金が手に入ることが、
とりあえずの
目指すべきゴールだということになります。

そうであれば、
時間やお金を作るための工夫を一緒に考え、
本人ができそうだと思うことを見つけ、
それを実行してもらいます。

その行動が、公認会計士になることに
つながるわけですから、
公認会計士になるのは無理という思い込みを
緩めることにもなります。

このように、問題解決につながる
具体的で実行可能と思われる
小さな行動を見つけることができれば、
モチベーションも高まり、
結果としてネガティブな思い込みも
外れる可能性が高くなるというわけです。

こちらの方が、前回紹介した
好きなことをやるという方法よりも
本人の悩みにフィットしている分、
より有効性が高いと思います。

「行動」をうまく利用して
思い込みを変える方法は
他にもたくさんあります。

そのひとつが逆説的アプローチです。

これはうまく入るととても効果的ですが、
当然、いつもうまくいくとは限りません。
私はよく、パニック障害などの
不安を抱く患者さんに対して使っていました。

不安は、未来に対する
ネガティブな思い込みが引き起こす感情です。

不安はそこから逃げようとすればするほど
追いかけてきますが、
立ち向かって行くと半減します。

しかし、不安に立ち向かって行くのは
かなりの勇気と覚悟がいります。

しかも、ただ立ち向かおうとするだけでは
うまくいきません。

不安に立ち向かおうと気張れば気張るほど、
より一層不安や緊張が高まり、
さらに立ち向かうことができなくなるという
悪循環にはまってしまうからです。

この悪循環を切るための方法が
逆説的アプローチです。

例えばパニック障害の人は、
パニック発作への不安から
パニックを起こすような状況を
できるだけ避けようとします。

しかし不安を克服するためには
不安に立ち向かい、
それを乗り越えるという成功体験が
どうしても必要になってきます。

そこで、あまり気張らずに
かつ、不安な状況に立ち向かえるような
状況をいかに作れるかがポイントになります。

私はときに、患者さんに
ホルター心電図(24時間心電図)を
つけてもらい、
以下のような説明をしていました。

パニック障害の治療には、
パニック発作を起こしたときの
心電図のデータが必要になります。

ですから、このホルター心電図をつけて、
その間は意識的にできるだけ
パニックを起こすようにしてください。
そうしないと必要なデータが取れませんので。

このような説明をすると
患者さんはデータを取るために、
人混みに行ったり電車に乗ったりと
普段ならパニックを起こすようなところに
行ってくれます。

ところが不思議なことに、
パニックを起こそうと思うと、
逆にパニックは起こりにくくなります。
これがまさに「逆説」なのです。

不安のこの特性を利用して
「パニックになったらどうしよう」という
本人の思いをうまく緩めるのです。

実際、パニックを起こそうと思うと
なかなか起こらないし、
起こったとしても
普段よりも程度が軽いことが多いので、
それが成功体験となり、
「パニックになったら怖い」という思い込みをが
「結構いけるかもしれない」という思いに
変えることができるのです。

拙著「心の治癒力をうまく引き出す」には
歯の治療をするために、
歯医者の椅子に座り口を開けると
ゲーっとえずいてしまうため
10年以上歯科治療ができなかった患者さんが
この逆説的アプローチで改善した例が
載っていますので、
興味のある方はそちらもご覧ください。

他にも思い込みを緩めるための方法には
体から入っていく方法や
いろいろな「道具」や「儀式」を使う方法、
成功体験を積まざるを得ない状況に追いやる方法など
様々なものがあります。

これらについては
また他の機会にお話ししたいと思います。