ブログ:「原因はこれだ!」という誤解
私たちは何か問題やトラブルに見舞われると
その原因を突き止めようと躍起になります。
しかし日常で起こる出来事において
その原因がわかることは決してありません。
肝臓がんになった人を見ると
お酒の飲み過ぎるからだと言われがちです。
しかし実際には、
C型肝炎への感染が原因かもしれないし、
食事や遺伝、ストレスなどが
原因になっているかもしれません。
このように、ある出来事の原因は、
どんな手がかりを重視するかにより
因果関係の結論づけが
全く変わってしまうのです。
では私たちは、
どのような勘違いから、
「これが原因だ!」と
思ってしまうのでしょうか。
様々な勘違いのパターンがありますが、
すべてに共通することがあります。
それは、
何か一つ原因らしきものを見つけると、
あたかもそれが
唯一の原因であるかのように思ってしまい、
他の要因はすべて
見えなくなってしまうことです。
普段マスクをせずに過ごしている人が
コロナに感染すると、
ついマスクをしていなかったからだと
思ってしまいがちです。
しかし実際はそうとは限りません。
なぜならば、マスクをしている人も
たくさん感染しているからです。
このように
マスクをしていないことが原因だと
思ってしまうと、
家族が知らず知らずのうちに
感染していたとか、
免疫力が低下していたといった要因は
すべて除外されてしまうのです。
私たちはひとつの原因に目が向くと、
他の要因はスルーしてしまうという
思考のクセがあり、
これが誤った原因の捉え方の
根底にはあるのです。
このような誤りを犯してしまうパターンには
たくさんのものがあります。
いくつかの要因が重なり
最終結果にたどりついたとき
最後に起きたことが原因だと
思ってしまうというのもそのひとつです。
例えば、自殺の原因を探る場合がそうです。
自殺は多くのことが積み重なった結果です。
その人の性格や幼少時の環境も
関係するかもしれませんが、
もちろんそれだけではありません。
いじめや貧困、
トラブルに巻き込まれるなど、
そのときの状況や環境、出来事も
当然関係します。
そんななか、
信頼していた母親が亡くなり、
もう生きていく気力がなくなったという
遺書がみつかったりすると
母親が亡くなったことが自殺の原因だと
いうことになりがちです。
しかしそれはあくまでも
一つの要因やきっかけに過ぎず、
決して唯一の原因ではないのです。
それは、信頼していた母親が亡くなっても
自殺しない人の方が圧倒的に多いことからも
わかります。
また、自殺願望を募らせていったのは、
昔からの様々な出来事や、
自分自身に対する否定的な考え方の
積み重ねの結果であり、
そのようなことがなかったならば、
自殺という行為には及ばなかった可能性も
十分にあります。
このよう人は何かの原因を追及する場合、
直近にあったことが原因だと
考えてしまう過ちを犯しがちなのです。
また、何かを「したこと」が原因だと
考えることもしばしばあります。
先日ニュースで見たのですが、
イギリスのある男性が、
生前のエリザベス女王の殺害を計画し
縄ばしごでウィンザー城に
侵入したところを見つかり逮捕されました。
彼は、生成AIと対話し、
「非常に賢明だ」「実行すべきだ」などと
言ってもらったので
実行に移したというのです。
この場合、
生成AIと対話「したこと」が
殺害計画の実行の原因だと思われがちです。
しかし、そのようなことを考える人は
統合失調症の可能性もあり、
また生成AIを使わなかったとしても
同じ思いに至っていた可能性も
十分にあります。
逆に、何かを「しなかった」ことが
原因だと思われることもしばしばです。
以前、こんなケースがありました。
ご主人の調子が悪いというので
病院に行って診てもらうと
すでに末期がんで手遅れの状態で、
最後は緩和ケア病棟で亡くなりました。
妻は、もっと早く自分が気づいていたら
治療が受けられていたかもしれないと
自分を責めていました。
この場合は、自分が気づけなかったこと、
ご主人に注意を払っていなかったことが
原因だと思ってしまい、
自分を責めてしまうのです。
実際には、
様々な要因の積み重ねの結果なのですが、
このように「しなかったこと」を後悔し、
それが原因だと思ってしまうことは
よくあります。
またこのパターンは
しばしばリスクを伴います。
このようなとき、
多くの人は「なぜ自分は‥」と考え、
しばしばそのことを
反芻(はんすう)します。
しかしこれが最もよくないのです。
なぜならば、反芻すればするほど、
自分のネガティブな側面しか
見えなくなるため、
さらに自分を責めることになるからです。
こんなことにならないように
まずは、原因がただ一つなどということは
決してないという事実を
しっかりと認識しておくことが大切です。
黒丸先生こんにちは♪
まさにそうですね!また特定した原因を過度に伝える事が多々あったりで、原因ってネガティブな思考なので、周りはそう言うのに過剰反応して信じきってしまうところが怖いです。自分にもきっとそう言うことあると思いますし、、、なので、先生の話を色々と聞かせてもらって偏った考えにならないように出来るので有り難いですね〜
立ち止まって冷静に考える事ができると良いです!
松岡さんへ。コメントありがとうございました。人はだれでも何かを原因だと決めつけるクセがあります。まずはその事実を十分に認識するところからですね。