ブログ:あなたの体は9割が細菌②

(前回からの続き)
パンダは竹や笹を食べるイメージが強いため
草食動物だと思われていますが、
実際には肉食性の消化機能を持つ
雑食動物です。

実際、パンダは食物繊維を分解する酵素を
持っていません。

でも、パンダは竹や笹を食べても
そこから栄養を吸収することができます。

なぜかというと、
食物繊維を分解する腸内細菌を
体内に住まわせているからです。

このことは、人にも言えます。

実際、日本人だけが
海苔を消化する酵素を持っていますが
これは、日本人の腸には
これらを分解できる腸内細菌がいるからです。

また、食物繊維は消化されず、
便として出るだけだと
言われています。

しかし実際には、
食物繊維も腸内細菌によって、
その一部は分解され、
腸内細菌のエネルギー源になります。

重要なのは、腸内細菌が
食物繊維を分解するときに出す
酪酸などの短鎖脂肪酸です。

これは、腸壁を堅固にし、
有害物質が体内に
入り込むのを防いでくれます。

また、短鎖脂肪酸は、
脂肪細胞の分裂を促すと同時に、
レプチンという満腹中枢を刺激する
ホルモンの分泌も促します。

食物繊維を食べると
満腹感が得られるのはそのためです。

要するに、
食物繊維は腸内細菌の餌として
重要であると同時に、
腸の健康や肥満の予防にも
大切な役割を果たしているのです。

ですから体重が増えてしまうのは、
炭水化物や脂質を
多く取り過ぎるためではなく、
それに見合った食物繊維が
取れていないためだとも
言われるようになりました。

また、腸内細菌は
免疫系の発達も後押ししています。

例えば、通常のモルモットは
赤痢菌に感染してもなんともありませんが、
無菌モルモット(無菌状態で育てたもの)は
必ず死にます。

無菌モルモットの免疫系は
未発達状態だからです。

ところが、
たった1種類の腸内細菌を与えただけで、
無菌モルモットは死ななくなります。

これは腸内細菌により
免疫系の発達が促されるからです。

逆に、通常のモルモットであったとしても
抗生剤を投与すると
腸内細菌のバランスが乱れます。

そのマウスにインフルエンザウイルスを
感染させると、
通常は、追い払えるウイスルを
追い払えず病気になります。

これは、抗生剤の投与により
腸内細菌のバランスが崩れ、
十分量の免疫細胞を産生することが
できなくなってしまったからです。

抗生剤に関しては、
人での研究もあります。

8万5000人を対象とした試験では、
ニキビの治療に
抗生剤を長期間服用していた人は、
抗生剤を使用しなかった人に比べ、
二倍も多く、風邪などの気道感染症に
感染していたというものです。

他にも、2歳になるまでに
抗生剤が与えられていた小児は、
8歳になるまでに、
喘息を発症する率が二倍近くになり、
抗生剤治療の回数が多い子供ほど、
喘息や皮膚炎、花粉症の
発症率が高かったのです。

このように、
感染症を治療する抗生剤の投与により、
腸内細菌のバランスが崩れ、
かえって他の感染症やアレルギー疾患に
かかりやすくなってしまうという
皮肉な現象が起きているのです。

このことから、
腸内細菌を改善する方法として
「糞便移植」も試みられており、
現在、治療として
病院で受けることも可能です。

これは、簡単に言うと、
健康な人の糞便と生理食塩水を混ぜ、
患者の大腸内に注入するというものです。

偽膜性腸炎という病気がありますが、
これは抗生剤の使用により
腸内細菌のバランスが崩れ、
クロストリジウム・ディフィシルという菌が
はびこることにより、
下痢や発熱を生じる病気です。

偽膜性腸炎に対して
さらなる抗生剤を投与するという
通常の治療では治癒率が30%程度ですが、
糞便移植による治療率は80%です。

また、過敏性腸症候群も
腸内細菌のバランスが崩れた結果が
大きな原因のひとつだと言われていますが、
下痢型の過敏性腸症候群の治療にも
糞便移植が効果的であることが
わかっています。

このように腸内細菌のバランスの乱れは
私たちの健康や病気と密接な関係があります。

そのバランスを改善するためには、
食物繊維を多く含んだ食事をすることが
必要不可欠です。

一般に、細菌は悪いものであり、
それをできるだけ排除し、
清潔を保とうという傾向があります。

しかし実際は、
今見てきたように細菌、特に腸内細菌は、
私たちが健康的に生きている上において
必要不可欠であり、
ヒトとは共生関係にある存在なのです。

特に日本は、清潔好きな国民ですが、
それも度が過ぎると、
健康を害することになるのです。

細菌に対するイメージ、
少しは変わりましたか?
(「あなたの体は9割が細菌」より)

    ブログ:あなたの体は9割が細菌②” に対して2件のコメントがあります。

    1. 大滝 初代 より:

      何時も配信ありがとうございます。
       私はステージ4の大腸がんで、16年前に大腸を70センチ程切除しました。
       抗がん剤必須でしたが、感じるものがありドクターに見放されながら服用を拒否し現在に至っています。
      大腸がん短いと言うことは、免疫系に細胞も小さなお部屋にいるだけだから身体にとって不利な状況なのかなぁと思いました。夏でも足裏は氷の様に冷たく、リュウマチもあり朝は辛いです。他にも身体の不調は言い切れませんが、小さなお部屋の細胞たちに感謝と愛の思いを常に届け続けたらきっと大活躍してくれるんだ!と、何故か安心感が湧いて来ました。

    2. holicommu より:

      コメントありがとうございました。
      大腸が短くなっても、それに応じて体に適応して
      頑張ってくれていると思いますよ。
      ありがとうございました。

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