私たちは何か物事を考えるとき
脳で考えると思っていませんか?

そんなもん、当たり前だと
思われるかもしれませんが、
これは必ずしも正しいとは言えません。

例えば、生まれたての赤ちゃんは
当然、言葉をしゃべりませんし
歩くこともできません。

しかし脳が発達するにつれ
歩いたり、母親か否かを判断したり、
考えたりしゃべったりすることが
できるようになります。

ではなぜ脳はこのように
どんどん発達していくのでしょうか。

それは外部からの刺激によってです。

抱っことされたり、言葉かけをされたり
おしっこやうんこの不快感を感じたり、
周囲のものを見たり聞いたりといった
五感や体感、動作からのメッセージを受け、
それが脳を発達させるのです。

これは大人になってからも同様です。
常に周囲からの様々な刺激や情報を受け
それを脳が処理をする過程を通して
脳神経回路のつながりが広がり、
それにより考えや思いが練られ、
進歩、発展、成長していくのです。

もしも、五感からの刺激が
全くない世界に過ごしたならば
人間はどうなるのでしょうか。

過去にはそのような研究も行われており、
拷問や洗脳にも利用されており、
長時間にわたり感覚を遮断されると
精神的な異常をきたすことも
知られています。

私たちは、
視、聴、味、嗅、触といった
感覚刺激を適切な形で
外部から受けているからこそ
脳も発達するのです。

ですから、
頭の中だけで考えることには限界があり、
アインシュタインも西田幾多郎も
思索に行き詰まると
自然豊かな風景の中を
散歩をしたりしていたのです。

私も以前は、
物事は頭で考えると思っていました。

でも今は違います。
刺激や環境と脳との相互作用があってこそ
物事は考えられ、練られ
アイデアや気づきも
もたらされると思うようになりました。

その思いを裏付けるような本を
先日本屋で見つけました。

アニー・マーフィー・ポール著、
「脳の外で考える」(ダイヤモンド社)です。

この本は500ページ以上もある大著ですが
なかなか内容の濃い本です。

全体は以下の3部で構成されています。

1,体で思考する
2,環境で思考する
3,人と思考する

今回はこのうち
「体で思考する」の一部について
簡単に紹介させていただきます。

これはなかなか意外性があり
興味深かったです。

一言で言うならば、
体の感覚や行動からの刺激を脳が受け取り、
それを基に脳は活発に働くというのです。

体の感覚で重要となるのが
「内受容感覚」です。

私たちには五感以外に
いくつかの感覚があることが
知られていますが、
その一つがこの内受容感覚です。

例えば、空腹感、ドキドキする、
胃がムカムカする、なんか体の調子が悪い、
といった体の感覚のことです。

内受容感覚は体内にあるセンサーであり、
この感覚に鋭敏な人は
無意識の持っている情報を
大いに活用できることがわかっています。

例えば金融業界で
証券を売買するトレーダーの中で
自分の心臓の鼓動のリズを
正確に感じ取れる人ほど稼ぎがよいという
研究があります。

つまり、体からのシグナルを
敏感に感じ取れる内受容感覚の鋭い人は
直感に優れており、
教育水準や知性が高い人よりも
金融市場では成功するというのです。

このようなことからもわかるように、
体が脳に、内受容的な情報を
提供することで、
より適切な判断を下すことが
できるようになるため、
単に頭だけで考え、理解するよりも
正しい答えにたどり着けるのです。

さらに、内受容感覚の鋭い人は、
困難な状況に取り組む際にも
体内からの情報を無意識レベルで感じ取り、
それをもとに適切な判断を下し、
うまく対応することができます。

実際、ジョージタウン大学の
スタンリー准教授は
非常のストレスがかかる状態にある
軍人や消防士、警察官、医療従事者などに
内受容感覚を鍛えるトレーニングを行い、
それにより現場での判断力や対応力を向上に
大いに貢献しています。

なお、内受容感覚は
マインドフルネス瞑想などにより
鍛えることができます。

このように、
常に変化する状況に合わせた
瞬間瞬間の柔軟な対応には、
内受容感覚が
大きな役割を果たしているのです。
(続く)