前回は、アニー・マーフィー・ポール著、
「脳の外で考える」(ダイヤモンド社)の
「体で思考する」の中の
「感覚を使う」という話をしました。

今回はその続きで、
「動きを使う」「ジェスチャーを使う」について
お話させていただきます。

これは身体的な活動や運動が
いかに思考やアイデアに
影響を及ぼすかということです。

先週、座り続けることの
体への有害性について
ブログを書きましたが、
逆に動くことは体によいだけではなく、
脳の働きにもよい影響を及ぼします。

例えば、放射線科医が、
レントゲンやCTの画像にある
異常所見を見つける精度に関して、
座った状態とウォーキング状態では、
どれくらい違うのかを
調べた研究があります。

この場合のウォーキングは、
大きなディスプレイの前に
トレッドミルを設置し、
画像をディスプレイに表示しながら、
歩くというやり方をします。

結果は、
座っている状態が85%だったのに対し、
ウォーキングの場合は99%と、
ほぼすべての異常を特定できました。

このような研究からもわかるように、
身体活動を行っているときは
認知機能が高まり
頭脳が明晰になるのです。

私たちはどうも
考えているときは静かに
座っているべきだという
思い込みがありますが、
どうもこれには、
近年、疑問がもたれています。

実際、アメリカの小学校では
従来の椅子と机をやめ
スタンディングデスクに換え、
かつ、多少動いても
よいということにしました。

すると、動くことを許された生徒たちは
集中力が高まり、自信を持つようになり、
生産的になったというのです。

最近私も
スタンディングデスクに換えましたが、
確かに集中力や生産性は上がったという
印象があります。

実際、立っていることに慣れてくると、
座って考えているよりも
頭の働きがよくなることが
実感できるようになりました。

またランチ休憩、コーヒーブレイク、
すきま時間などに体を動かすようにすると
休憩前よりも頭の回転がよくなり
その後の仕事を効率的に進めることが
できるようになるという研究もあります。

記憶についても同様のことが言えます。

俳優が覚えた台詞でも
舞台上で動きながら
ジェスチャーを交えて口にした台詞は
動かずに立った状態や座った状態で
口にした台詞よりも
舞台が終わったあとでも
覚えていることが多いと言われています。

さらにウォーキングも、
アイデアを思い浮かべやすくしますし、
固定された直線よりも
曲がりくねった自由なルートを歩いた方が
創造的な思考プロセスが
さらに強化されます。

このように、体を動かすことは
脳の働きと連動しており、
思考や記憶、集中力、ひらめきといった
脳の働きに大きな影響を与えるのです。

また、ジェスチャーについても
脳と深いつながりがあることが
示されています。

例えば、話をしている人が
何か言い間違いをしたと気づき、
修正しようと話を止めた場合、
じつはその数百ミリ秒前に
ジェスチャーを止めています。

これが意味することは何かと言うと、
意識よりも先に手の方が
自分が何を言おうとしているのかを
「知って」いるということです。

ジェスチャーは、
正しい語句が口から出てくるように
頭の中で言葉を準備するのに
役立っているのです。

逆に、ジェスチャーができなくなると
流暢に話ができなくなります。

つまり、ジェスチャーは、
脳の知的プロセスを援助しているのです。

またジェスチャーは
スピーチを聴く側にも影響を及ぼします。

スピーチを聴く際に
言葉だけでなくジェスチャーを
同時に見ると、
スピーチだけ、もしくは
ジェスチャーだけのときよりも
聞き手の脳がより強く反応するのです。

要するに、ジェスチャーには
スピーチのインパクトを
増幅させる効果があるということです。

私も講演をする際、
よく手を動かします。

また立って話をするので、
多少なりとも体を動かしますが、
これらの動作は無意識に行っています。

ところが以前、座った状態で
講演をする必要に迫られたときがあり、
そのときは座って話しをしました。

すると座りながら話をすると
とても話しづらく、
いつものように話が浮かんでこず、
とても苦労したのを覚えています。

このように、人の脳は
体の感覚や動き、
ジェスチャーといったことと
密接なつながりを持っており、
それが思いやひらめきに
影響を及ぼしているのです。

これが、人は「体で思考する」
ということの意味です。