前回は「お姉ちゃん」療法と
「イケメン」療法に終始してしまったので、
今回は、もう少し一般的な視点から
「環境」が「心」を変えるという話を
したいと思います。

例えば、部屋の環境などにより
仕事や勉強への集中度が
大きく変わってきます。

机の上が散らかっている場合と、
必要なものしかない場合とでは、
当然、後者の方が集中できます。

人は、仕事に集中しているときでも、
五感からは絶えず情報が入ってきており、
それが必要なものか否かを
無意識が瞬時に判別し、
ふるい分けているのです。

この事実は、
カクテルパーティー効果や
カラーバス効果として、
よく知られています。

例えば、パーティ会場のように
多くの人が雑談をしている状態だと、
自分が話している相手の話に集中していれば
周囲の人の会話は聞こえません。

ところが、そんな状態でも、
誰かが自分の名前を言ったりすると、
それは聞こえるのです。
これがカクテルパーティー効果です。

周囲の声は聞こえていないと思っていても、
無意識は常に、
耳から入ってくる情報を峻別し、
必要な情報を
意識に上げるという作業をしています。

だからこそ、
周囲の人の会話は、
たんなる「音」にしか聞こえませんが、
その中で自分の名前が語られると、
それは必要な情報だと判断され、
意識化されるため「聞こえる」のです。

一方、視覚に関する無意識の反応が
カラーバス効果として知られています。

例えば、車で走っていると、
自分が乗っている車と同種の車に
自然と目が留まります。

また、自分が妊娠すると、
急に、妊婦さんを
多く見かけるようになった気がします。

このように、
自分が何か特定のことを意識していると、
日常のなかで、
それに関する情報が
自然と目に入ってきてしまうというのが
カラーバス効果です。

これらのことからもわかるように、
私たちは無意識レベルで、
視覚や聴覚などの五感から入ってくる
環境からの情報を、
絶えず判断、峻別しているのです。

ですから、机の上が
散らかっているか整理されているかにより、
集中力に違いが出てくるのです。

このようなモノ的な環境からのみならず、
人とのつながりとしての環境の方が
より影響力があることは
誰もが経験的に知っていることです。

会社の上司や仲間が
よい雰囲気の人が多ければ、
当然、仕事も楽しいと感じます。

逆に、嫌だと思っている人がいると、
その人が同じ空間にいるというだけで、
気持ちが萎えるという経験は
誰もがあると思います。

また、人とのつながりは、
心のみならず、体にも影響を及ぼします。

皆さんは、
肥満は伝染するということを
ご存知でしょうか。

この事実を2007年、ハーバード大学の
ニコラス・クリスタキス教授が発表し、
大きな話題となりました。

この研究では、肥満になる率は、
配偶者が肥満の場合は 37%増え、
兄弟姉妹だと 40%、
友人だと 57%増えるというのです。

また肥満の人の友人や、友人の友人、
さらには友人の友人の友人も、
肥満である可能性が、
通常よりも高いというのです。

このように社会的つながりは、
心の面にも身体の面にも
影響を及ぼすことがわかっています。

興味のある方は、
「つながり:社会的ネットワークの驚くべき力」(講談社)
読んでみて下さい。

400ページもある分厚い本ですが、
中身はとても濃く、有益な本です。

このように私たちは、
社会や人から知らず知らずのうちに
影響を受けています。

ここには、
かの有名なミラーニューロンの存在が
大きな役割を果たしていると
言われています。

ご存知のようにわれわれの脳内には
他者の行動を見て、
あたかも自分も相手と同じような行動を
取っているかのような反応をする
ミラーニューロンが存在しています。

ですから、肥満の友達が
たくさんの食べ物を食べているのを見ると、
その影響を受けて、
自分もたくさんの食べ物を食べるようになり
肥満になる可能性が高まるのです。

また、友達がたくさん食べるのを見て、
自分も食べてもいいかと、
思ってしまう傾向があることも
それに拍車をかけています。

このように、
われわれを取り囲む「環境」は、
意識する、しないにかかわりなく、
「心」や「行動」に
大きな影響を及ぼしているのです。

みなさんも、
「心」を変えようとするならば、
心ばかりに目を向けるのではなく、
ぜひ、「環境」にも
目を向けて頂けたらと思います。

きっと、視野が広がり、
新しい景色が目の前に開けてきますよ。