前回は、
「心」にアプローチする具体的な方法について
述べました。

今回は、「環境」をうまく利用して
「心」に働きかけるアプローチについて
お話します。

まずは「お姉ちゃん」療法です。

これは、緩和ケア病棟に入院している
前立腺がんの骨転移の患者さんに
たまたま有効であった方法から
生み出されたアイデアです。

その患者さんは、
月に2回ボランティアで来る
カラーセラピーがとてもお気に入りでした。

ここで言うカラーセラピーとは、
たんなる塗り絵です。

簡単な下絵があり、
それに患者さんが自由に色を塗るのですが、
二人のセラピストとおしゃべりをしながら
それを完成させるというものでした。

この患者さんは、
長い間、状態が安定していたため、
半年たった頃に、
一度、採血をしてみたところ、
腫瘍マーカー(がんの進行状態の指標)が
当初よりも低下していたのです!

治療をしていない末期がんの患者さんの
腫瘍マーカーが低下するということは
通常ありません。

なぜこのようなことが
起きたのかを考えていたところ、
カラーセラピーがよかったのではという
思いに至ったのです。

なぜ、そう思ったのかというと、
カラーセラピーのボランティアの二人が
とてもきれいな女性だったのです。

そのためか、
その患者さんは、彼女らが来るのを
毎回、心待ちにしていました。

楽しみや喜びは人の心をハッピーにし、
それが免疫系に影響を及ぼし、
ときに、がんの進行も
抑えることが知られています。

この患者さんは、
彼女らが来てくれるようになってから、
まさにその状態になったと推測されます。

カラーセラピーそのもので、
こんなにハッピーになったとは
なかなか考えにくいことです。

また、心の持ち方や
喜びや楽しみが大切だと言っても、
患者さん一人では、
とてもこのような心境には
なれなかったと思います。

そう考えると、
きれいなお姉さんという「環境」が
「心」を変え、結果として、
腫瘍マーカーを低下させたと考える方が
理にかなっていると思ったのです。

講演なんかでも、
「お姉ちゃん」療法の話はよくしますが、
結構、みんな笑ってくれます。

しかし、その一方で、
あまりいい顔をしない人が
いるのも事実です。

この人たちは、
神聖で?科学的な医療や治療の場に、
「お姉ちゃん」療法などという、
下品?な方法を取り入れるなんて
けしからんと思っているのかもしれません。

確かに、一部の人からは、
スケベだとか、いやらしいといった声も
聞こえないわけではありません。

しかし、きれいなものや美しいものに
心が惹かれるのは人間の本能だと
私は思っています。

そこで、今度は
男性だけではなく、
女性を対象としたアプローチも
考えるようになりました。

それが「イケメン」療法です。

例えば、入院中の患者さんに
2週間に1度くらい、
キムタクや佐藤健のような
イケメンのお兄さんが来てくれて、
ハンドマッサージをしながら、
30分程度、おしゃべりをするという時間を
持ってもらうというのはどうでしょうか。

当然、「お姉ちゃん」療法と
同様の効果があると思われます。

今のところ
「イケメン」療法に関しては、
「いやらしい」といったコメントは
ありません。

「お姉ちゃん」療法は嫌だと思う人でも、
「イケメン」療法だったらいいんだなと、
勝手に理解しています。

講演などでこの話をすると、
イケメンのお兄さんに
ハンドマッサージをしてもらっている光景を
思い浮かべているせいか、
皆さん、幸せそうな顔をして聞いてくれます。

あまり常識という偏見に囚われるのではなく、
「もっと自由に、もっと楽しく!」を
念頭に置きつつ、
かかわりというものを考えていくことが
大切なのではと思っています。

私は、その人をハッピーにさせるものは
何でも治療になると思っています。

当然、「イケメン」療法も
私にとって「環境」を利用した
立派な治療法のひとつです。

以前、他の病棟に、
モデルをしていたという
イケメンの男性看護師がおり、
彼が緩和ケア病棟に配属にならないかなと、
心ひそかに期待していました。

しかし、結局その彼は、
2年程で病院をやめてしまいました。

看護師という仕事が
思った以上にきつかったのか、
それとも、患者さんや他のナースから、
あまりに誘いが多く、
それがしんどかったのか、
実際のところはわかりません。

でも、いつかは「イケメン」療法も
やってみたいと思っています。