前回の続きです。
「コミュニケーション医学とは」の
講座の内容を考えているときに、
新たに気付いたことがありました。

それは「身体」の働きについてです。

人は日常において、
いろいろな思いを持っており、
また、快・不快や喜怒哀楽といった
様々な感情を抱きます。

この思いや感情のことを
通常、「心」と表現しています。

また、気分がよければ
身体の調子もよいと感じるし、
ストレスが溜まって悶々とすると
体がだるくなったり、食欲が落ちたり、
ときには腹痛やむかつきといった
身体症状としてあらわれることもあります。

このような事実から、
「心」と「身体」はつながっていることは
誰もが理解しているところです。

私はよく、こんな話をします。

好きな人や嫌いな人から、
「この仕事手伝ってくれない?」と、
全く同じ事を頼まれたとき、
好きな人であれば喜んで仕事を引き受けます。

ところが嫌いな人からの頼みだった場合、
いやいや引き受けるか、
何かと理由をつけて断るかもしれません。

このように、相手によって、
自分の行動は全く異なるのです。

つまり、どう思うか、どう感じるかにより
自分の取る行動(身体)が
全く異なってくるのです。

そのため、
心は行動(身体)よりも上位にある存在だと
思っていたのです。

ところがよく考えてみると、
その前の段階があるのです。

私たちは、
目の前に好きな人や嫌いな人がいるというのは
どうやってわかるのでしょうか。

多くはその存在を見て認識します。
さらに声を聞きてもわかるでしょう。

つまり視覚や聴覚を通して、
その人の存在を認識しているのです。

視覚や聴覚は何かというと、
れっきとした「身体」の働きです。

つまり、五感の働きがなければ、
外部からの情報は全く入ってこないのです。

外からの情報が入ってこなければ、
相手のことについて、
あれこれ思ったり
感じたりすることもできません。

そう考えると、
先ず「身体」が働き、
五感を使って外部の情報を心に伝え、
その情報をもとに人は思い、感じ、判断し、
その結果として行動を起こすのです。

要するに、
心が身体の上位にあるのではなく、
「身体」が先で、
そのあとに「心」が働くのです。

これは私にとっては大きな発見でした。
なぜならば外部からの刺激は
直接心に届くと思っていたからです。

言われてみれば、
五感という身体の働きを通して
外部からの情報が心に入り、
それをもとにして
考えたり感じたりするというのは
ごく当たり前のことなのですが、
それに今まで気づかなかったということです。

今までさんざん、
「やる気があるから行動するのではない!
行動するからやる気がでるのだ!」
と言っていましたが、
これも少々考え方を
変えざるをえなくなりました。

勉強をやらなくてはと思いながらも、
なかなか教科書を開くことが
できないということはしばしばあります。

でも、とりあえず教科書を開いてしまったら
あとは何となく読み始めますし、
少し問題を解いてみようという気にも
なるかもしれません。

このように、現実の世界では、
行動がやる気を引きだすのです。

ところが、このときの行動とは
言うまでもなく「身体」の動きです。

さらに言うのであれば、
教科書を見たり、ページをめくったりと
明らかに視覚や触覚が機能しています。

それらの情報が「心」に伝わり、
その結果、気持ちが教科書に向かい始め、
勉強をしようという思いに
自ずとなっていくのです。

もしこの時に、
教科書が真っ赤であったり、
字がとても読みにくかったり、
ページが重かったり冷たかったりしたら、
多分、やる気が引き出されることは
ないのではないでしょうか。

つまり、行動も重要なのですが、
五感で感じる情報も大切だということです。

そう考えると、
五感からの情報により
行動は大きな影響をうけると言っても
過言ではありません。

だからこそ、行動するためには
五感の世界、
つまり私たちをとりまく外部環境も
とても重要になってくるのです。

「身体」とは、まさに
外部環境と「心」を結び付ける
架け橋の役割を果たしていたのです。

このことは私にとって、
とても大きな発見でした。