ブログ:コミュニケーション医学の挑戦②
コミュニケーション医学の挑戦②
(前回の続き)
講演の後半は、
コミュニケーション医学の三つの段階について
具体例を交えながら話をしました。
その三段階とは
コミュニケーション医学を
先ずは理解してもらうこと、
次に学んでもらうこと、
最後は実践してもらうことです。
①理解する
ここは、
前半で話したことと重複するため
ポイントに触れるだけにとどめました。
要するに、患者さんの心や体の治癒力には、
治療的自己、コミュニケーション、
食事、運動、環境といった要素が関与し、
喜びや希望、可能性が引き出されれば
心身の治癒力が高まり、
症状や病気の改善につながるということです。
②学ぶ。
ただ、いくら頭でコミュニケーション医学を
理解したとしても、
実際にそれを臨床の場で利用できなければ
絵に描いた餅に過ぎません。
だからこそコミュニケーション医学の実際、
つまりどのようなコミュニケーションが
心の治癒力を引きだし、
患者さんが喜びや希望、可能性を
感じられるようになるかを
学ぶ必要があるのです。
本来は、この部分が最も重要なところなので、
詳しく話をしたかったのですが、
とても時間が足りないので
ポイントだけを述べるにとどめました。
心の治癒力を引きだすコミュニケーションは
実はそう簡単なことではありません。
もちろん、患者さんの話をよく聞き、
丁寧にかかわることで、
安心感や信頼感は生まれるので、
それでも心の治癒力を
ある程度引きだすことは可能です。
ただその一方で、
よかれと思って言ったことでも
知らず知らずのうちに、
患者さんを傷つけてしまったり、
落ち込ませてしまったりすることも
しばしばあります。
例えば、
「クヨクヨせずに、
前向きな気持ちを持つことが大切です」
「自分を変えるんだという
強い気持ちを持つことが大切です」
といった言葉かけが、
人を落ち込ませてしまう典型例です。
私は決してそんなことは言いません。
なぜならば、
誰だってクヨクヨなんかしたくないし、
強い気持ちを持てるんだったら
とっくのとうに変わっています。
それができないからこそ、
みんな悩んでいるわけですから、
そんなことを言っても意味がないどころか、
かえって患者さんを
落ち込ませてしまうだけです。
ですから私だったら、
「今はクヨクヨしていてもいいですよ」
「自分を変えようなんて思う必要はありません、
自ずと変わるのを待っていればいいんですよ」と言い、
まずは、「今の自分でいいんだ」と
思ってもらうことから始めます。
このように、われわれがよいと思っていることが
実は患者さんを傷つけたり
落ち込ませたりしていることがしばしばあります。
そのため先ずは、その現実を知り、
心の治癒力を引きだすことができる
言い方や考え方を
身につけることが大切になってきます。
これ以外にも
心の治癒力を引きだすコミュニケーションには、
心の問題は原因を追究しないとか、
希望や可能性、「できていること」や
「できそうなこと」に目を向けるといった視点の
大切さにも触れました。
さらに「変えよう」とするのではなく、
「自ずと変わる」ようなかかわりをする、
という話もしました。
その具体例として、
毎日ナースコール100回、
ナースに対するマッサージの強要や暴言で
病棟が困り果てていたモンスターペイシェントに
対応した経験について話をしました。
ここではその詳細は書きませんが、
どのような対応をしたかについて興味のある方は
http://holicommu.blog84.fc2.com/blog-date-201501.html
をご覧ください。
③実践する
最後は、コミュニケーション医学を
どのようにして実践に役立てるかについて
話をしました。
先ずは何と言っても治療に取り入れることです。
医者のかかわり方や態度、
コミュニケーションいかんにより、
治療効果や結果が違ってくるのですから、
治療には積極的に取り入れてもらいたいのです。
これは代替療法に取り組んでいる
治療家やセラピストにも言えることです。
彼ら彼女らの中には、
セラピーや療法、サプリメントが
病気や症状を改善させている中心だと
思っている人もいますが、
実際には治療的自己による安心感や
治療への期待感といった心の治癒力の側面も
それに勝るとも劣らず
関与しているという事実を
知ってもらいたいのです。
だからこそ治療者やセラピストも、
治療技術のみならず、
心の治癒力を引きだすコミュニケーションも
身につけてもらいたいと思っているのです。
あと私が注目しているのは
生活習慣病の指導の実際に利用することです。
運動や食事といったことの指導は、
ただ単にその大切さを説いたところで、
実践されることはほとんどありません。
誰もが運動習慣や健康的な食事習慣を
身につけたいと思いながらも
それができなくて困っているのです。
だからこそ、
心の治癒力を引きだすコミュニケーションの
出番なのです。
どのような指導やアドバイスをするかも
ここでは詳細は省きますが、
要するに、患者さんが、
「そんなことならできるかもしれない」と
思ってもらえるような提案を引きだし、
それを継続できるような仕組みを
作る必要があります。
さて、シンポジウムでの講演は以上ですが、
来月の12月20日(日)には京都(山科)で
第2回コミュニケーション医学研究会も開催します。
https://www.holistic-kansai.com/mf.html
ここでもまた、
いろいろな話をさせて頂きますので
興味のある方はぜひお出で下さい。
お待ちしております。
講演、ありがとうございました。先生から加藤先生への質問によって、母親の左脳のおぼつかなさを、これまたおぼつかない子供の右脳と左脳で肩代わりしてもキリがないと思いました。常に臨戦態勢の過緊張。この役割を辞めることが、連鎖する愛着障害の克服に繋がりそうな気がします。
それから、『人に嫌われたくないと思って行動するのは承認欲求なのでよくない』との思い込みがあるのに気づきました。先生のモンスターPtへの症例から、『人に嫌われたくない』という思いも、使い方次第でその方の自立に繋げることが出来るんだなと思いました。
先生、これからも講演は続けてほしいです。