先日、ホリスティック医学シンポジウム
「脳科学とホリスティック医学
~コロナうつから死後の世界まで~」で
講演をさせて頂きました。

今回はスタジオでのライブ講演を
オンラインで配信するという形を取りました。

演者は私の他に、
ホリスティック医学協会名誉会長の帯津良一先生、
「脳の学校」代表の加藤俊徳先生が講演をし、
最後に山本記念病院理事長の山本百合子先生の
司会進行のもと、
パネルトークを行いました。

私は「コミュニケーション医学の挑戦」
というテーマで40分間の、
以下のような講演をさせて頂きました。

コミュニケーション医学には、
その根底を支える三つの要素があります。
①体の治癒力(自然治癒力)
②心の治癒力
③治療的自己

体の病気や症状を改善させる根本は、
免疫系やホルモン系、自律神経系、
遺伝子系といった、
体全体のバランスの調整や改善を担っている
「体の治癒力」(自然治癒力)です。

一方、その体の治癒力の働きに
大きな影響を与えるのが「心の治癒力」です。

安心感や信頼感、期待感、
喜びや楽しみ、希望、可能性、
自信や意欲、やる気などは、
心の治癒力の働きを高め、
それは体の治癒力と相互作用的に機能し、
病気や症状の改善に影響を与えます。

もう一つの要素が「治療的自己」です。
これは、医者やセラピストの存在が
患者さんやクライエントに
治療的効果を及ぼすという意味の言葉であり、
当然そこには、
治療者の雰囲気や態度、かかわり方、
コミュニケーションの良し悪しといった要素が
含まれています。

コミュニケーション医学は、
どちらかと言うと医療者側に立った視点であり、
医療者の存在抜きには語れません。

そのため医療者の患者さんに及ぼす影響が大きい
治療的自己という概念は、
コミュニケーション医学の
重要な要素の一つであり、
これを外すことはできないのです。

また広い意味では、
治療的自己が必ずしも
医者やセラピストである必要はありません。

患者さんやクライエントの
「心の治癒力」を引きだすようなかかわりが
できる人であれば、
ナースであろうと友人であろうと、
誰でも治療的自己を
発揮することができるからです。

以上の心の治癒力、体の治癒力、治療的自己の
三つの要素の相互作用を通して、
いかにして病気や症状の改善につなげ、
それを治療や予防に
活かしていくかを考えていくのかが
コミュニケーション医学のめざすところです。

そう考えるとコミュニケーション医学は、
すべての医療の根底を支える
通奏低音のような存在だと言えます。

つまり、目立たない存在ではありますが、
確実に治療効果に影響を及ぼす
とても大切なものなのです。

講演では、三者の関係を図を使って説明しました。
その際、心や体の治癒力に影響を及ぼす
食事や運動、睡眠、ストレス対処、
西洋医学的治療や代替療法、
つながりや環境などとの関連にも
簡単に触れました。

また、医療者の態度や思い込みが、
患者さんの症状の改善に
影響を及ぼすことを示す論文を2本
紹介させて頂きました。

ひとつは、不定愁訴を訴える患者さんに対して
肯定的な態度で診療をした場合と、
拒否的な態度で診察をした場合とでは、
症状の改善に違いがあるかについて
調べた論文です。

結果は前者は64%、後者は38%が改善し、
当然、肯定的な態度でかかわった方が、
治療成績が良かったというものです。

もう一つの論文は、
医者が鎮痛剤の注射をする際、
「この薬は効くかも」と思って投与するのと
「この薬は効かない」と思って
投与するのとでは、
前者の方が鎮痛効果があったという論文です。

つまり、医者の思いは、
たとえそれを言葉にしなくても、
雰囲気や態度で知らず知らずのうちに
患者さんに伝わってしまうという可能性が
あるということです。

時間の関係で、講演では割愛しましたが、
心の治癒力の存在を知ってもらうために、
以下のような患者さんの症例も
紹介させていただく予定でした。

それは、肝臓がんと診断され、
手術をしたら治るが、
治療をしなければ3年の命と言われた
患者さんの話です。

結局その患者さんは、
あと3年生きられたらもう十分だと言い、
全く治療を受けることなく、
3年の間、悠々と
世界旅行を楽しんでいました。

診断から3年後に、
そろそろ死ぬ時期だろうと思い、
私の緩和ケア外来を訪れたのですが、
その時撮ったCTでは、
腫瘍の大きさは3㎝と
当初の大きさと変わありませんでした。

また、AFPという腫瘍マーカーも
ピークのときは6,000以上あったのですが、
無治療であるにもかかわらず
3年後には900台まで下がっていたのです。

この患者さんを通して私は、
開き直りと楽しみや喜びという心の治癒力が
がんの増大を押えてくれたのではと考えました。

まさに心の治癒力のすごさを
目の当たりにした患者さんでした。

だからこそ、
心の治癒力の働きは大切であり、
その働きを左右する医療者の態度やかかわりは
きわめて重要になってくるのです。

その点を医療者にもしっかりと知ってもらい、
患者さんの心の治癒力をうまく引き出すような
かかわりやコミュニケーションを
心がけてもらえるような医療者が
一人でも多く出て来てくれることを
私は期待しているのです。
(続く)