先日、エフエムひこねのラジオ番組、
「こころと体の放送室」の収録を行いまいた。

これは週3日、うちの病院の医師らが、
健康や病気のことについて
いろいろな話をするというコーナーです。

1回5分と短いコーナーなので、
収録は2週間分、合計6回を一気にとりました。

この番組は、かれこれ10年以上続いており、
私もすでに5回くらいは登場しています。

毎回、面白いテーマを考えるのですが、
今回は「心のクセを知ろう」にしました。

これは、いわゆる認知バイアス、
つまり偏った見方や判断を
ついしてしまう心のクセのことであり、
このブログでも
しばしば取り上げているテーマです。

パーソナリティーの方も
とても興味深く聞いて下さっていたので、
今回は、そこで話した内容について
かいつまんで紹介させて頂きます。

初日は確証バイアスについてです。
人は、自分の都合のよい情報に注目し、
都合の悪い情報はスルーするという心のクセです。

身近なところで言うと雨男、雨女があります。
「私って雨女なの、だから出かけると必ず雨なの」
などと言っているのを時々耳にします。

彼女からすると、
自分が出かけて雨が降った日は、
「やっぱり」と思い、
雨女という思いを強くします。

一方、出かけた日が晴れていると、
その事実はスルーされます。

雨女と思っているのに晴れていては、
自分の思い込みに反する事実なので、
無意識はそれを
なかったかのごとく無視するのです。

こうして自分は雨女だという思い込みが
出来上がっていくのです。

このような例はたくさんあります。
喫煙と肺がんは関係ないと主張する人たちは、
90歳のヘビースモーカーで
ピンピンしている人を知っているとか、
喫煙率は減少しているにもかかわらず、
肺がん患者数は増えているといった情報は
積極的に取り入れます。

当然、喫煙と肺がんの関係を示す
数多くの研究データなどは無視します。

このような心のクセが私たちには
歴然と存在しているのです。

二日目は社会的証明について話をしました。
これは、他の人たちと同じ行動をしていれば、
間違うことはないだろうと
判断してしまうクセのことです。

典型例としては、
行列ができているラーメン屋と
ガラガラのラーメン屋があったら、
多くの人は行列に並びます。

なぜならば、
みんなが並んでいるということは、
きっとこちらの方が
美味しいに違いないという判断を
知らず知らずのうちにしているからです。

実際には食べてみないとわからないし、
さくらの人が並んでいるかもしれません。

この心のクセは様々なところで利用されています。
「今一番売れています」と宣伝すれば、
みんなが買っている商品なので、
いいものに違いないと思い込んでしまい、
その結果、多くの人はそれを買うことになります。

売りたい商品があれば、
「今一番売れています」と書いておけば、
他の商品よりも確実に売れることになるのです。

これは社会的証明という心のクセを
うまく利用した販売テクニックなのです。

またランキング付けされている商品も、
つい、1位のものが一番いいと
思ってしまう傾向があります。

それを見て買う人が増えれば、
より一層売れ、一位は不動のものになります。
こうしてそこそこの商品でも、
人気商品になっていくのです。

三日目はフレーミング効果の話をしました。
これは、同じ情報でも、
見せ方や説明の仕方いかんで、
判断が正反対になるというものです。

例えば、
この薬を飲めば3人のうち
1人は助かりますと言うのと、
この薬を飲んでも3人のうち
2人は助かりませんと言うのでは、
同じ内容を伝えているのに、
聞こえ方が全く違うのです。

ですから薬を飲ませたい場合は前者の、
飲ませたくない場合は後者の言い方をすれば
その可能性が高くなるというわけです。

がんの治療で、
手術と放射線治療の効果が同等と思われる場合、
外科医は手術の方が、
放射線治療医は放射線の方が
優れている印象を与えるような説明を
する傾向があります。

そのときは、知ってか知らずか、
フレーミング効果を取り入れた説明を
している可能性が高いと思われます。

新型コロナウイルスについても同様です。
日本での感染者はついに
「10万人を突破しました」と言うのと、
「日本人の99.9%以上の人は
未だ感染していません」と言うのとでは、
明らかに印象が違います。

同じ情報について、
どちらも正しい表現をしているのですが、
発信者の意図により、
不安を煽ることも安心感を与えることも
できてしまうのです。