ブログ:面会禁止への疑問

新型コロナウイルスの影響で、
どの病院でも入院患者さんへの面会は、
原則、禁止になっていると思います。

私が勤務している病院でも
全病棟で面会禁止になっており、
当然、緩和ケア病棟でも同様です。

ただ、面会禁止と言っても、
必要なものを持って来たり、
洗濯物を取りに来るといった、
必要最小限の面会に限り、
5分程度ならOKというルールになっています。

これは、外部から入ってきた人が、
万が一、コロナウイルスを院内に持ち込み、
それで感染を広げてしまったら
大変なことになるので、
その予防策として
面会禁止の措置が取られるようになりました。

これはやむを得ないことです。
そのため、本当に申し訳ないことですが、
緩和ケア病棟に入院している
患者さんの家族に対しても、
話をし、理解してもらったうえで、
同様の対応をしています。

ただ、末期がん患者の家族の場合は、
話はそう単純ではありません。

家族からすれば、
ルールとしては理解できても、
実際にはすんなりとは
納得できるものではありません。

残された時間がないとわかっていれば、
できるだけそばにいてあげたいと思うのは
家族として当然のことです。

そのため、なかには、
そろそろお帰り下さいと促しても
なかなか帰ろうとせず、
そのうち、やるせない気持ちが爆発し、
医療者に対して怒りをぶつける家族もいます。

家族の思いも十分に理解できるので、
その場合は怒りを受け止めつつ、
時機を見計らって丁重に退室を促すということを
繰り返すしかありません。

しかしその一方で、
いつまで面会禁止を
続けるのかという疑問もあります。

非常事態宣言が解除された滋賀県では
5月7日から先日の5月21日までの2週間で、
新規感染者が2名だけであり、
当院のある彦根市では4月23日以降、
1か月間、新規の感染者は出ていません。

そんな状態でも、
未だに面会禁止は当初のままなのです。
県内のお店や映画館も段階的に
制限を緩和しているにもかかわらずです。

一般病棟の場合は、面会制限を続けたところで、
多少の不便は強いられても、
いずれは病気も落ち着き、
退院できる人がほとんどです。

つまり、多少我慢してでも、
今の時期さえ乗り越えれば、
また家族と普通に会える時が来るのです。

しかし緩和ケア病棟の患者さんは
そうはいきません。
今を逃してしまったら、
もう一生涯会えなくなる可能性が高いのです。
だからこそ、一日でも早く、
この面会問題を解決したいのです。

もちろん面会禁止を解く、
または緩和することにより、
コロナウイルスが持ち込まれるリスクはあります。

しかし、現状において
その可能性を考えるならば、
滋賀県の人口は約140万人ですから、
70万人に1人くらいであり、
彦根市に限ればゼロです。

つまり病院に感染者が紛れ込む可能性は
極めて低いと言えます。
おまけに、来院者はすべて
発熱の有無をチェックしていますから
なおさらリスクは下がります。

そうであれば、
万が一(70万が一?)のことばかり
考えるのではなく、
家族が最後の時間を共に過ごせなかった
口惜しさや後悔の念のことも
もう少し考えてもらいたいものです。

医療はどうしても身体を中心に考えるため、
心のことは二の次になってしまう傾向があります。
そのため、このような問題は
どうしても軽視されがちです。

私としては、時間制限は5分ではなく
せめて1時間にしてほしいと思っています。

また、大阪モデルのように
面会禁止を緩和するための基準を
明確にしてもらいたいと思っています。

さもないと、
決してゼロにはならない
感染リスクの可能性を盾に、
この状態がダラダラと
継続されてしまう可能性があるからです。

本当は、子供の入院には
母親の付き添いが許可されているように、
余命いくばくもない患者さんにも
家族の付き添いが必要だという視点に立ち、
一日も早く付き添いを
許可してもらいたいというのが本音です。

    ブログ:面会禁止への疑問” に対して2件のコメントがあります。

    1. 松原 佳子 より:

      本当にそのとおりです。
      現在、訪問看護しております。51歳の癌末期女性を今、コロナの為、リモート授業中の大学生の娘2人と在宅勤務の夫が、在宅でみています。
      娘達ばべったり寄り添い、お母様が食べたいものはすぐに差し出し、話しかけ、身体をさすり、とても明るく献身的にお母様をみておられます。予後1ヶ月の言われていましたが、在宅に帰ってきて、3ヶ月過ぎました。
      コロナで今の情勢の為、家族4人が、お母様の最期の時をみっちり思う存分過ごされています。コロナがなければこの状況にはなりません。
      家族の愛、看病は、病状の進行にとても影響すると身にしみています。在宅で予後を過ごす、すばらしさも感じます。

    2. たにやん より:

      一般にも緩和へ移行中の方やエンドオブライフケアの対象にあるご高齢の方がみえます。本人も家族も感染対策とはいえ辛い状況にある方も、、、。誰にとっても一日一日が貴重ときをいかに納得して過ごせるか考えさせられました。

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