前回の例のように
仕事をするのが遅いのが悩みという問題の背景に
実は、仕事を辞めたいと思っているといった、
もっと重要な問題が隠れている場合、
当然こちらの問題を扱う必要があるという
話をしました。

ただしこの場合、
今までとは異なる視点が必要になってきます。

通常の場合だと、
どうしたら、会社を辞めたいという思いを変え、
積極的に仕事に取り組んでいけるようになるか、
そんな視点で話を進めていくことになります。

しかし実際には、
すべての悩みや問題が、
理想の形で解決するとは限りません。

なぜならば、理想の解決の形が
たんなる願望に過ぎず、
必ずしも現実的ではないことも
しばしばあるからです。

問題解決を考える際の方向性には
大きく分けて三つあります。

一つ目は積極的に対処することで、
自分がある程度満足する形で
問題解決を実現することです。
これが一般的な理想とする解決法です。

二つ目は逃げる、諦めるという解決法です。
例えば、会社を辞めるとか離婚するといった、
一見、消極的な解決法のように思いますが、
現実や全体的なこと、さらには未来を考えると、
それが結果として最良の解決策であることは
しばしば経験するところです。

三つめは、「今はじっと待つ」という解決法です。
悩みや問題の中には、
すぐさま解決できず、
そうかと言って逃げ出すわけにもいかない、
という問題がたくさんあります。
嫁姑関係や上司とそりが合わないといった問題が
その典型です。

この場合の解決手段は、
いかに「今」をうまくやり過ごすか、
つまり、いかんともしがたい状況の中で、
小さな逃避やとりあえずの対応を繰り返しながら、
時期が来るのをじっと待つということです。

朝の来ない夜はありません。
どんな状況であろうと、
時間が経つにつれて、
何かしらの変化やチャンスがあるものです。

いかんともしがたい状況に置かれている場合は、
その時が来るまで、
何とか耐え忍んで現状維持していくしかなく、
そのための小さな努力や工夫が
立派な問題解決の方法となるのです。

このように、問題解決のための方向性には
積極的に対処していくだけではなく、
逃げたり、じっと待つという方法も
あることを知っておくとは大切です。

そうすることで、
解決の幅がぐんと広がると同時に、
セラピストもクライエントも
気持ちに余裕が出てくるからです。

辛い思いをしている人が、
何が何でも今の問題を
解決したいという思いになるのは理解できますが、
しかしその思いが、
「解決しなければならない」という
思い込みになってしまうと、
それが焦りとなり空回りを生むことになります。

結果、何とかしようという思いが、
かえって自分を追い込んでしまうという
悪循環に入っていってしまうのです。

そのような状況にならないためにも、
三つの方向性を常に念頭に置きつつ、
今はどの方向でやっていくのが
現実的なのかを考えながら
対処していくことが重要になってきます。