ブログ:マインドセットとトラウマ

今回も、
キャサリン・A・サンダーソン著
「ポジティブ・シフト」を読んで
書かせてもらっています。

この本の第7章は
「マインドセットとトラウマ」について
書かれています。

ここで大切になる概念が
心的外傷後成長(PTG)です。

これは事故や病気、災難など
人生における大きな危機を体験し、
それを乗り越えることで
物の見方や考え方が大きく変化することを
言い表す概念です。

例えば、交通事故で両足を失った人が
パラリンピックで優勝するとか、
子供を殺害される経験を経て、
被害者の親を救う会を
設立するといった人たちが
例としてあげられます。

そこまで大それたことではなくても、
自分ががんになったことをきっかけに
家族を大切にして
生きるようになったというのも
PTGだと言えます。

人は少なからず、
大切な人の死や離婚、
重い病気やケガといった
ネガティブな出来事を経験します。

それらに対処することができた人は
ポジティブな出来事の経験を
味わう能力が高くなると言われます。

このことは年を取るとともに、
幸福感が増すという事実を
説明するのにも役立ちます。

つまり人生を長く生きた人ほど、
様々な人生の難局を乗り越えた経験があり、
それがほんの小さなポジティブな経験にも
幸せを感じる力をもたらしてくれるので、
人は年を取るにつれ
幸福感が増すというのです。

その意味では苦労を乗り越えるという経験は
将来、幸福を感じられるようになるためには
必要なことなのかもしれません。

実際、比較的ストレスのない生活を
送っている人たちは、
ストレスとなるイベントを
たくさん経験している人たちに比べ、
幸福感は高くありません。

最も幸せだと感じた人たちは、
離婚や大病、愛する人の死といった
ストレスになるような出来事が
2~6個くらい経験している人でした。

また、人は困難に直面することで
それに対処し乗り越える力、
つまりレジリエンスを
身につけていくのだとも言われています。

これがマインドセットの変化です。

マインドセットはある程度までは
努力で変えることは可能です。

でも多くの場合、
様々な人生経験を通して
自ずと変わっていくという側面があります。

実際、高齢者は若い人に比べ
身体的、認知的機能は低くなりますが、
心理的な幸福感は高くなることが
知られています。

高齢者は一般に、
ネガティブな情報よりも
ポジティブな情報を好み、
そこに持続的な注意を払うようになります。

異なる表情を浮かべた
多数の顔を見せる実験では、
若い人は恐れの表情に最も注目しますが、
高齢者の注意は
幸せな表情に向けられることが
報告されています。

このような研究により、
人は年齢を重ねるごとに、
よいことに目を向け、
悪いことには目をつぶることが
できるようになるようです。

当然そのようなマインドセットの変化は
私たちの幸福感を高めてくれます。

「若いときの苦労は買ってでもしろ」という
ことわざがありますが、
そういうことなのかと納得しました。

もちろん、仕事などでの苦労は
ある意味必要な経験だと思います。

しかし、犯罪や災害に巻き込まれたり、
子供を事故や病気で亡くすといった
悪夢のような経験は
できたらしたくないものです。

そうは言っても、
一定数の人はこのような悲惨な体験に
見舞われてしまうことは避けられません。

でも、このような人であっても
将来、人生を振り返ったときに、
あの経験があったからこそ今の自分があると
言える人たちが少なからずいるのです。

まさにPTGのなせる技です。

ただし、このような悲惨な経験をした人は
その後、普通の人よりも
幸福感が高くなるとは言うものの、
それはあくまでも、
そのようなつらい経験を
乗り越えたあとの話です。

PTGという概念を知ると、
つい今大きな不幸に直面して
苦しんでいる人に対して励ますつもりで、
「必ず乗り越えられるからね」
「今を乗り越えることでより幸せになれる」
などと言いたくなってしまうものです。

しかしこれは禁句です。

今、苦しみの真っ最中にある人にとっては
将来のことなどに
目を向ける余裕などありません。

ましてや、「大丈夫」などといった
第三者の無責任な言葉を聞くと、
多くの人は落ち込みます。

「他人事だと思って適当なこと言って、
私の苦しみなんかわからないくせに」
というのが当事者の本音です。

PTGはあくまでも
苦難を乗り越えた後、
自分の人生を振り返ったときに初めて
認識するものであり、
苦しんでいる人を励ますために
PTGの考え方を持ち出しては
いけないということは、
肝に銘じておくべきです。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA


    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください