ブログ：マインドセットの影響

先日、キャサリン・A・サンダーソン著
「ポジティブ・シフト」を読みました。

これはポジティブ心理学に基づく知見を
様々な視点から紹介してくれている本です。

簡単に言ってしまえば、
幸福や健康につながる心の状態を
どうしたら持てるかということです。

ここで焦点が当てられているのが
マインドセットです。

マインドセットとは
ものごとをどのようにとらえるのか、
その捉え方のクセとでもいうものです。

ただし無意識レベルで働くものなので
誰もが知らず知らずのうちに
自分のマインドセットに従って
ものごとを見ています。

ある人は楽観的に、
またある人は悲観的に
ものごとをとらえるのも
その人のマインドセットによるものです。

このマインドセットが
健康や寿命、記憶力などに
影響を及ぼすというのです。

例えばロキソニンという鎮痛剤がありますが
今はそのジェネリックが
何十種類も出ています。

当然最初に発売されたロキソニンよりも
ジェネリックの方が安くなります。

すると値段が安いジェネリックよりも
値段が高い先発品（ブランド品）の方が、
効くと言う人が少なくありません。

また同じ薬を使っても
値段が高い方が効果があるような
気がするものです。

実際、パーキンソン病の患者さんに
注射（実際には生理食塩水）をする実験があり、
1回当たり1,500ドルだと伝える場合と
1回当たり100ドルだと伝える場合とでは
前者のほうが2倍以上の効果があったことが
報告されています。

これらの研究から、
ブランド品や値段が高い方が
効果が高いというマインドセットを
持っている人が多いことがわかります。

このマインドセットは
寿命にも大きな影響を及ぼすことが
知られています。

例えば、老化に対しては
ポジティブな思いを持っている人もいれば、
ネガティブな思いを持っている人もいます。

30年以上にわたる調査によると、
老化にネガティブな思いを持っている人の
25％が何かしらの心疾患を
経験しているのに対して、
ポジティブな思いを持っている人は
13％でした。

老化に対して
ポジティブな思いを持っている人は、
日々の生活でストレスに感じることが
少ないことがその要因のひとつだと
思われます。

さらに、
ポジティブな人はネガティブな人よりも
平均7.5年も長生きだったのです。

意外なことに、
老化に対する思いが長生きに及ぼす影響は、
喫煙や運動よりもはるかに強いことが
示されたのです。

もちろんタバコは吸わない方がいいし、
運動はした方がいいのですが、
それ以上にポジティブな思いが
長生きに影響を及ぼしているという結果は、
いかに心の治癒力が健康を維持するのに
重要なのかを物語っています。

また、修道女が若い頃に書いた自伝を調べ、
その内容に含まれるポジティブ感情の割合が
寿命にどのような影響を与えるのかを
調べた研究もあります。

これによると
ポジティブな感情の割合が多い人は
ネガティブな感情の割合が多い人に比べ、
寿命に7年近くの差があることが
わかりました。

実は、この本で一番面白かったのは
記憶に関するところです。

記憶力は年を取るにつれて低下しますが、
マインドセットが記憶力をさらに
低下させている可能性があるというのです。

例えば、記憶力に関する
三種類の文章を読んでもらい、
その後に記憶力のテストを行なうという
研究があります。

そこに書かれている文章は、
一つ目が年齢による記憶力の低下を
強調したネガティブなもの、
二つ目は記憶力の低下は
ある程度コントロールできるという
ポジティブなもの、
三つ目は中立的な文章です。

この文章を読んでもらった後に
30個の単語リストを2分間学習し、
覚えている単語を書き出すという
課題に取り組んでもらいました。

この研究では、
高齢者グループ（62～84歳）と
若年者グループ（18～30歳）に
参加してもらい比較しています。

結果は明らかでした。
若年者の場合は、
三つの文章に差はなく、
平均60％の単語を記憶していました。

高齢者の場合は、
中立的、ポジティブな文章の場合は
57％の単語を思い出すことができ、
若年者と大きな差はありませんでした。

しかし、
年齢が記憶力に悪影響を及ぼすことを
強調した文章を読んだ場合は、
44％しか思い出せませんでした。

このような研究から、
年齢により記憶力が低下するという
マインドセットが
記憶のパフォーマンスを低下させる可能性が
示唆されました。

このことからわかることは、
物忘れをすべて老化のせいだと決めつけると
かえって記憶に関する問題を
悪化させる可能性があるということです。

私も今後はあまり
記憶力が低下したと嘆かないように
気をつけようと思いました。