ブログ:科学論文の過失や誇張の問題

つい力が入ってしまった
科学論文は信頼できないという話しも
いよいよ今回が最後になります。

「あなたが知らない科学の真実」
(ダイヤモンド社)では
過失や誇張といった問題点も
指摘しています。

例えば、
「男性は女性よりも平均して体重が重い」
という仮説を検証する場合、
何人くらいのサンプルを集めたら
はっきりしたことが言えるでしょうか。

答えは34人です。
20人程度のデータで解析しても
実際には断定的なことは言えません。

このようにデータを分析する場合、
それなりのサンプル数を
集める必要があります。

例えばコイン投げをした場合、
表が出る確率は2分の1だということを
私たちは知っています。

ところが実際にやってみると
かなりのばらつきが出ます。

例えばコインを10回投げて
3回しか表が出ない確率は約10%あり、
10回に1回は起こり得るのです。

しかしコイン投げを100回行なったならば
そのうち30回以下しか表が出ない確率は
0.0038%となり、1万回に1回も
起こらないような確率になります。

何が言いたいかというと、
サンプル数が少ないと、
おかしなデータが偶然出てきてしまう確率が
高くなってしまうということです。

そういうことがないように、
サンプル数は十分に集めた上で、
統計処理をしないと間違った答えを
導くことになってしまうのです。

ところが実際には
十分なサンプル数を集めずに
結論を出している論文が
たくさんあります。

例えばマウスが迷路を進む能力に
性差があるかを調べる実験では、
本来は134匹のマウスを
集める必要があります。

ところが平均的な研究のサンプルは
22匹でした。

このようなサンプル数の不足は
生物医学研究や経済学、
脳機能イメージング、看護研究、
行動生態学、心理学の研究でも
蔓延していることがわかっています。

そのため、
これらの論文で発表された結論が
間違っている可能性も十分にあるのです。

またプレスリリースによる誇張表現が
一般の人たちに誤解を与えているというのも
問題になっています。

例えばマウスでえられた結果の90%は
人間には適用されません。

にもかかわらず、
「○○という成分ががんに有効!」
などと大々的に発表されたりします。

もちろん、最後には
「ただしマウスの実験で」と
さりげなく書いているので、
ウソを言っているわけではありませんが、
誤解を招く表現であることは確かです。

調査によって、
このような誇張が含まれたプレスリリースは
全体の36%にも及ぶことがわかりました。

また相関関係を
因果関係のように伝えるという
誇大広告もよくあります。

スウェーデンのある期間の統計によると
コウノトリの飛来数が増えると
出生数も増えるというデータがあります。

このデータを見て、
まさかコウノトリが赤ちゃんを
運んできてくれるんだと思う人は
いないと思います。

つまりコウノトリと赤ちゃんの数には
相関関係はありますが、
因果関係などないのです。

ところがコーヒーをたくさん飲む人は
IQが高いという研究結果が出ると、
「コーヒーを飲むとIQが高くなる」と
言いたくなってしまうのです。

実際はIQが高い人は
コーヒーをたくさん飲む傾向に
あるのかもしれないし、
第三の要因が
関与しているのかもしれません。

もちろん研究者のほとんどは
「相関関係は因果関係ではない」ということを
知っています。

でもプレスリリースでは、
あたかも因果関係があるかのような
書き方をしてしまうことがしばしばです。

それをジャーナリストが記事にすると、
一般読者はコーヒーを飲めば
IQが高くなると思って、
コーヒーをたくさん飲もうと思う人が
出てくるのです。

また、喫茶店などでも
「コーヒーがIQを高める!」といった
記事の切り抜きが
お店に貼られていることもあります。

こうしてプレスリリースの誇張表現が
間違った情報として
どんどん広がっていくのです。

実際、カーディフ大学の研究では
33%のプレスリリースが
因果関係を強調していました。

プレスリリースが誇張すると
メディアも同様の誇張をする確率は
20倍にも増えることがわかりました。

健康に関する研究を見てみると
そのうち最終的に立証されたものは
全体の約50%でした。

もちろん、
立証されなかった研究結果でも、
すでにメディアで取り上げられているものも
少なくありません。

だからと言って、
最終的には
立証されませんでしたという記事は
ほとんど書かれることはありません。

こうして根拠のない
サプリメントや健康食品でも
科学的根拠があるかのように宣伝され、
堂々と販売されているのです。

今回、
「あなたが知らない科学の真実」を読んで、
科学論文は
信頼できないものが多いということが
よくわかりました。

医者はすぐに
「エビデンスはあるのか!」
「科学的根拠はあるのか!」と言います。

しかし、科学的根拠があるという主張の
基になっている論文の信頼性も
疑わしいという事実があるのですから、
「科学的」という言葉を盾に、
あまり偉そうな言い方をするのは
やめてもらいたいという思いを
より強くした次第でした。

皆さんはいかがでしょうか。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA


    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください