ブログ:あなたが知らない科学の真実

前々回のブログで、
実は科学論文そのものの研究結果が
かなり歪められている可能性があると
書きました。

なぜそのようなことが言えるかというと、
最近、新しい研究分野として
科学研究そのものの間違いを見つけ出し、
それを正していこうという
「メタサイエンス」が
注目を浴びるようになったからです。

その研究をまとめた本が
スチュアート・リッチー著、
「あなたが知らない科学の真実」
(ダイヤモンド社)です。

この本を読んでかなりの衝撃を受けました。

今までは、医学論文や科学論文は
真実が書かれているというのが前提です。

人間の書く論文ですから、
いろいろなミスや思い込み、
ときには捏造があることも知っていました。

しかし、この本を読むと、
私の想像を遥かに越えた不正が
科学研究にはあることがわかり、
かなりショックを受けました。

今回は、そのことについて
お話ししよう思います。

科学論文を書くためにはどの分野にせよ、
それなりの準備がいります。

先ずは、実験や研究をするにあたり
それなりのお金が必要です。

通常は助成金を申請します。
助成金は政府や企業、基金、
非営利団体医、慈善団体、
あるいは裕福な個人から出ます。

実際の研究を行なったら、
集めたデータを分析し、
結果や結論、考察などを書いて
ひとつの論文にまとめ上げます。

それを学術誌に投稿するのですが、
投稿した論文が掲載されるとは限りません。

なぜならば投稿された論文は
その雑誌の編集者により
掲載に値するかどうかが判断されます。
つまり最初のふるいにかけられるのです。

掲載に値すると思われた論文は
次に査読に回されます。

査読とは、その分野の専門家2,3名が
論文の評価をする作業のことです。

2度、3度の査読者とのやりとりを通して
これならOKと査読者が判断したら
めでたく採用となり、
学術誌に掲載されることになります。

もちろん査読の結果、
論文の掲載を却下されることもあります。

権威ある学術誌であればあるほど
掲載される確率は低くなり、
例えば「サイエンス」の掲載率は
投稿された論文の7%です。

学術論文は通常、
このよう過程を経て論文になります。

一般の人からすると、
そこまで労力と時間、お金がかかり、
なおかつ厳しいチェックが入った上で
認められた論文であれば、
さぞかし信頼性も高いだろうと
思うかもしれません。

しかし、現実はそうではないのです。

例えば、科学論文では
再現性が重要になってきます。

同じ条件で実験をすれば
誰がやっても同じ結果になるというのが
再現性があるということです。

再現性があるということは
その論文の信頼性が
それなりにあるということを意味します。

逆に再現性がないということは、
その論文の信頼性は低く、
間違っている可能性も
あるということを意味します。

私がショックを受けたのは、
今まで信じて疑わなかった
「プライミング効果」や
「パワーボーズ」には
再現性が認められなかったという事実です。

プライミング効果の実験はこうです。

披験者に「古い」「遅い」といった
老人をイメージする単語を使って
文章を作った場合、
「平らな」「普通の」といった
中立的な単語で文章を作った披験者よりも
終了後、退出し廊下を歩く速度が
遅かったという結果が出ました。

つまり、老人を想起させるイメージは
その後の歩くという行動に影響を
及ぼしたことがわかり、
これが「プライミング効果」と
言われるものです。

またパワーポーズは
面接などストレスのかかる場面の直前に
トイレなどの一人になれる場所で
「よっしゃ!」といったポーズを
2分間とるだけで、
心理的にもホルモン的にも高まり、
やるべきことがうまくできる可能性が
高くなるというものです。

プライミング効果やパワーポーズは
とても有名な研究なので
このブログでも取り上げていますが、
実はそれらに再現性がなかったのです。

要するに、これらが真実であるかは
疑わしいということです。

その後、再現性に関する
大規模な調査をしたところ、
心理学の研究の約半分に
再現性が認められないことがわかりました。

「サイエンス」という超一流の雑誌でも
2015年に掲載された論文のうち、
再現に成功したのは39%だったのです。

つまり、6割以上の論文は
真実ではないかもしれないということです。

心理学の研究ならまだしも、
医薬品などの研究となると、
医療の問題に直接かかわってきます。

医薬品開発などでは、
「前臨床」研究といって、
最初はマウスや人の細胞を使った研究が
行なわれます。

一流雑誌に載った
「前臨床」研究の再現を試みたところ
再現できたのは約11%だけでした。

開発される抗がん剤などの
臨床試験がうまくいかないのは、
このような確実性のない結果に基づき
研究が進められることが
大きな理由の一つかもしれません。

再現性の問題からもわかるように、
科学的根拠の基となっている論文は、
実は科学的な裏付けが
あるように「見えた」だけで
実際には価値のないものである可能性が
大いにあるのです。

医者の場合は、
もしかしたら有害ですらある治療法を
有効性のある治療法だと思って
患者に施している可能性が
それなりにあるということです。

実は、問題は再現性だけではありません。
そのことについては
次回お話しさせていただきます。

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