ブログ:原因療法と対症療法②

前回は外来レベルのほとんどの病気は
対症療法で十分ですが、
その背景には自然治癒力が働くからこそ
よくなっているという事実を
忘れてはいけないという話しをしました。

今回はもう少し話しを進めます。

では、がんや心筋梗塞といった
死に至る病の治療はどうでしょうか。

がんは、
悪性化した細胞が勝手に増殖して大きくなり
それが全身に様々な障害を
引き起こす病気です。

心筋梗塞は、
心臓を養う血管が詰まることが原因で
起こる病気です。

これらは何もしないと
死に至る可能性が極めて高い病気です。

つまり自然治癒力に頼っても
それだけでは対応できない場合が
ほとんどです。

その意味では前回話をした肺炎と同様、
原因を特定し、それに対応するという
原因療法「的」かかわりが必要になります。

つまり、心筋梗塞の場合は
血管の詰まりを解消し、
再び血液が十分に流れるような治療をします。

がんの場合は、
がんの存在そのものが、
からだ全体に様々な悪影響を及ぼすため、
がんそのものを完全に取り除く手術を
するというのが治療の基本になります。

こうして病気の原因を取り除くことにより
がんや心筋梗塞は治療可能であり、
患者さんを死から救うこともできます。

しかしここで疑問が生じます。

なぜ、がんが生じたのか、
どうして心臓の血管が詰まってしまったのか
その原因を突き止め、
それに対する対応をしない限り
原因療法「的」ではあっても
本当の意味での原因療法には
ならないのです。

では、本当の原因とは何でしょうか。
実はよくわかっていないのです。

もちろん様々な仮説はあります。
喫煙や不適切な食事、
遺伝子や有害な化学物質などは
がんや心筋梗塞を発症させる
「要因」だとは言われています。

しかし、これらの要因があるからといって
必ずしもがんや心筋梗塞になるとは
限りません。

ですから、これらは原因ではなく
あくまでもたくさんある要因のひとつに
過ぎないのです。

実際には根本原因などなく
心理的要因や環境要因も含め、
様々な要因が関与した結果として
がんや心筋梗塞が生じるという方が
正しいと思います。

では本当の原因がわからない病気に対しては
対応策はないのかというと
そんなことはありません。

とても曖昧な言い方にはなりますが、
適切な食事や適度な運動、
ストレスへの対応などが
がんや心筋梗塞の発症を
防ぐことにはなります。

しかし、食事ひとつとっても
様々な人がいろいろなことを言っているので
これが適切な食事だとは
言い切れないところがあります。

さらに文化や風土、習慣、
持っている遺伝子によっても異なります。

北極圏で生きるイヌイットと
赤道直下のケニアに住む人々とでは
当然、食生活も異なります。

ですから、適切な食事が何かとは
単純には言えないのです。

ここで重要になってくるのが
やはり自然治癒力です。

広い意味での自然治癒力は
身体のバランスを調整し、
必要な物を取り入れ、
不要な物を排泄するという仕組みを
コントロールしている存在です。

自然治癒力が十分に機能すれば
細菌やウイルスはもちろんのこと、
身体に悪影響を与える食品などが
多少身体に入ってきたとしても、
適切に対処してくれるのです。

また自然治癒力が十分に発揮されるためには
心の状態や環境、身体的刺激といった要因も
大いに影響を与えます。

要するに、自然治癒力が最大限に働くような
運動や食事、環境、心の状態といった要因を
うまく調整しながら生活することが
病気の発症を防ぐ
最も大切になってくるという、
全く面白みのない結論になってしまいます。

原因療法と言うと
壊れた機械を直すかのように、
病気の原因を見つけ出し、
それを取り除くことで
病気は治るという考え方です。

しかし、今見てきたように、
病気を治す根本の力は自然治癒力ですし、
それを低下させ、がんをはじめとする
様々な病気を発症させる要因となるものは
食事や環境、心の状態など様々です。

今、原因療法といわれている治療は
発症したがんや
血管の詰まりを取り除くことで、
とりあえずの難を逃れるだけのことです。

そう考えると、
原因療法と言われているものは
広い意味での対症療法だといえます。

本当の意味での原因療法は、
医者がすることではなく、
あくまでも
私たち自身が取り組むべきものなのです。

自然治癒力や心の治癒力を高めるために、
運動や食事、環境、心の状態に
気を配りながら生活していくことが
本当の意味での原因療法だと
私は思っています。

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