ブログ:原因療法と対症療法①

医療の世界では
原因療法とか対症療法という言葉を
よく使います。

簡単に言えば
病気の原因を除去するのが原因療法であり、
症状を抑えるだけの治療法が対症療法です。

肺炎になった場合、咳や熱に対して
鎮咳剤や解熱剤での治療が対症療法であり、
肺炎の原因となった細菌を特定し、
それをやっつける抗菌剤を投与する治療が
原因療法となります。

高校時代(当然医者になる前です)、
原因療法が本来の治療であるにもかかわらず
西洋医学の多くの治療が
対症療法であることに
違和感を持っていました。

根本原因に対処するのではなく、
表向きの症状だけを取る対症療法は
まやかしだと思っていたのです。

しかし今は、
ほとんどの病気に対する治療は
対症療法で十分だと思っています。

このことについてもう少し説明します。

なお、がんや心筋梗塞のような
死に至る病いや慢性疾患については
次回お話しします。

対象とするのは
外来レベルで治療される
風邪やちょっとした腹痛といった
多くの急性疾患であり、
これらは対症療法で十分です。

痛みや発熱などの症状を
引き起こしている根本原因が
わからないことには
本当の意味で
病気は治せないと思うのは錯覚です。

そもそも原因などわからなくても、
一般的な病気や症状の大半は
自然治癒力により勝手によくなるのです。

ですから余計な薬などを飲まなくても、
実際には自然とよくなります。

でも痛みや発熱はつらいので、
薬を飲んで楽になりたいと思うものです。

薬を飲むことで症状が治ると
錯覚している人が結構いますが
実際には症状を一時的に抑えて、
自然治癒力が本当に治してくれるまでの
時間稼ぎをしているだけのことです。

この際、薬を飲んだ方が早く治るのか
飲まない方が早く治るのかは
ケースバイケースといえます。

発熱などは無理に下げることにより
免疫系の働きを弱めてしまうため
治るまでの期間をかえって
延ばしてしまうと言われています。

実際、小児のかぜの研究があり、
解熱剤を使わない方が使うよりも
平均1日早く回復したという
報告もあります。

ただし、解熱剤を使っても治るわけですから
そこまで神経質になる必要も
ないかなと思います。

一時的な痛みの場合も
時間が経てばよくなりますが、
痛みがない方がストレスが少なくなり
自然治癒力が活性化しやすくなるため
薬を飲んだ方が早く治るかもしれません。

いずれにせよ、
対症療法で治る(治ったと錯覚する)
程度の病気ならば、
時間が経てばよくなるのです。

その意味で、
多くの病気や症状の治療は
対症療法で十分だと思うのです。

ただし、ときに原因療法「的」な
対応が必要になる場合があります。

例えば肺炎になった場合、
原因となった細菌を特定し
それをやっつける抗菌剤を投与することで
肺炎の治療をします。

しかし実際には、
細菌に感染したからと言って
すべての人が
肺炎になるわけではありません。

当然、自然治癒力が働き、
細菌をやっつけようとします。

ですから軽い肺炎なら自然に治りますし、
まだ抗菌剤がなかった昔、
不治の病と恐れられていた結核でも
自然とよくなる人はたくさんいました。

しかし自然治癒力の働きが不十分の場合は、
細菌の活動の方が勝り抑えきれないため、
肺炎が「発症」するのです。

この場合は、抗菌剤などで治療をしないと
肺炎で死ぬ可能性が出てきます。

ですから死なないようにするためには
抗菌剤で細菌を叩くことで
肺炎の治療をするわけです。

ただし、細菌を叩きさえすれば
肺炎が治るわけではありません。

実際には自然治癒力(免疫力)が機能し、
最終的には細菌を駆逐してくれることで
肺炎が治るのです。

ですから、自然治癒力の働きが弱い人は
残った細菌を完全には駆逐できないため、
いくら抗菌剤で治療しても
結局は肺炎で亡くなることになります。

実際、エイズの患者さんのように
免疫力の力(自然治癒力)が
極端に低下していると
いくら薬を使っても、
軽い肺炎といえども治らないのです。

要するに抗菌剤が肺炎を治すというよりも
自然治癒力が本来の力を十分に発揮できるように
ある程度細菌の量を少なくすることが
抗生剤の役割です。

ですから、ときには
西洋医学による治療は必要になりますが、
最終的には自然治癒力が
十分に力を発揮してくれるか否かが
問題になるのです。

そう考えると原因療法と言えども、
それはあくまでも自然治癒力を
最大限に発揮できるようにすうための
援助をしているに過ぎないということです。

では、がんや心筋梗塞といった
死に至る病の治療は
原因療法と言えるのでしょうか。

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