ブログ:「問う」ことが下手なわけ

コミュニケーションのセミナーを
やっていることもあり、
私は「問う」ことは極めて重要だと
思っています。

特に悩みや問題、
考えがまとまらないというときには
この「問う」ということが
大いに力を発揮します。

ところが、
問うことは誰にでもできますが、
有用な問いをすることは
そう簡単ではありません。

悩み相談に乗る際も、
多くの人は、あまり考えることなく
気軽に普通に問いを発します。

「いつごろから?」
「上司は何て言ってた?」
「友達はいるの?」

これらの問いは、
相手の相談に応えるためには
もう少し情報を知りたいと思って
発する問いです。

ところが多くの人は、
自分の知りたいことを興味の赴くままに、
あれこれたずねることや
原因探しに終始してしまい、
最後は、自分の思ったことを
アドバイスして終わるというパターンが
非常に多いのです。

こんな中途半端なことをするのであれば、
とことん相手の話を聴いてあげるだけの方が
まだましです。

なぜならば、
単なる問いやアドバイスは、
あくまでも問いを発する人自身の思いから
発せられたものであり、
悩みを抱えた人の思いに
寄り添っているとは言いがたいため、
かえって相手を失望させてしまうことに
なりかねないからです。

では、一般の人がする「問い」は
何が問題なのでしょうか。

それは、話しに一貫した「方向性」が
ないということです。

問題解決のサポートが上手な人は、
相談に乗る際に、
悩みのどこに焦点を当てたらよいのか、
どの方向に話しを進めたら、
問題解決の糸口が見つかりやすいのか、
そのためにはどんな問いを発すればよいのか、
そんなことを頭の中で考えながら
話しを聴いているのです。

これは、何の方向性もないまま、
ただ思いついた質問をし、
興味の赴くままに
いろいろなことをたずねるというのとは
根本的に異なる姿勢です。

この両者は端から見たら
お互いに話しをしているだけなので
同じように見えるかもしれません。

しかし、目には見えない心の動きが
全く異なる方向に向くため、
話し終えたときには相手の心の状態に
雲泥の差が生まれているのです。

では、相談に乗る際に重要な
「方向性」とはどういうことかについて
簡単に話をします。

まず重要なのは、
相手はどの方向に向かって
話しを進めたいかを知ることです。

そのための最もシンプルな質問が
「どうなったらいいと思いますか」
です。

これは自分が目指すべき目標や希望であり、
問題が解決したときの状態です。

これをはっきりさせずに話しを進めると
全く関係ない方向に話しが進んだり、
バラバラでまとまりのない話しが
止めどもなく続くことになります。

そのような話しは時間の無駄です。

ですから、まず進むべき方向性を
しっかりと定めることが重要です。

次に重要になってくるのが
漠然とした課題を具体的な行動にまで
落とすための質問です。

例えば早起きができるようになりたいと
思っている人がいたとしましょう。

ならば目覚ましを3つ用意しましょうとか、
夜は早く眠るようにしましょうと言っても、
そんなことで早起きができるようになる人は
まずいません。

なぜならば、
その人に見合った具体的な行動が
全く示されていないからです。

目覚ましを3つかけても
ほとんどの人はそれを止めるだけで
一部の人以外は起きることはできません。

早く眠るようにしようと思っていても、
夜になると、まあいいかと思って
いつも通り遅くまで
起きていることになるのが普通です。

大切なのはどの方向で話しを進めていけば
その人にあった解決法のヒントが
見つかるかを考えながら問うことです。

基本的な方向性は過去と未来です。
つまり、過去において
どんなときは早起きができたか、
こんな工夫をしたら
早起きができるかもしれないと思うことを
問えばよいのです。

また、妨げになっているものを
明確にするという方向性も重要です。

つまり、早起きを妨げているものは何かを
問うわけです。

すると、朝の寒さや睡眠不足、
一日が始まることへの億劫さなどが
出てくるかもしれません。

そこまでわかれば、
各々についての具体的な対策が
考えられやすくなります。

さらに、そもそも
なぜ早起きしたいのかという
意味や目的が不明瞭な場合も
少なくありません。

そこを明確にすることで、
もしかしたら早起きがしたいのではなく、
自分の時間が欲しいだけだったということに
気づくかもしれません。

そうであれば、
話しを進めるべき方向性を
修正する必要があります。

無理に早起きをする必要はなく、
どうしたら日中に
自分の時間が作れるかという方向で
話しを進めていけばよいのです。

このように悩みや問題を解決するためには
興味の赴くままに問うのではなく、
しっかりとした方向性を持って
問うことが重要なのです。

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