心の抵抗を緩めるには②

(前回の続き)
四つの抵抗の二番目は「労力」です。

人は最小の労力で
最大の見返りが得られる道を
探るようにプログラミングされています。
これが「最小努力の法則」です。

これは感覚的に理解できますが、
実はこの法則は友人関係にも
当てはまります。

私たちは、
相手の能力や共通の経験などで
友人を選んでいると思っていますが、
友人関係のほとんどは、
接近しやすさと
接近する機会の多さによって形成されます。

これが「接近性の原理」であり、
友人関係にも最小努力の法則が
関係していることの証です。

また私たちは無意識レベルでも
労力がほんのわずかでも少ない方が
魅力的に見えるように設計されています。

例えば、こんな研究があります。
IQテストの研究と称して希望者を募り、
実験をしました。

披験者はまず30分のIQテストを
2回受けますが、
その間に10分の休憩時間を取ります。

実はこの研究の主眼は、
IQテストではなく
休憩時間の行動にありました。

休憩時間のときに実験者が
お菓子の入ったボウルと雑誌を持ってきて
「休憩中はのんびりして下さい」と
伝えます。

その際、お菓子を置く位置を
披験者から75センチメートルのところと
25センチメートルのところの
二通りのパターンを作りました。

前者はお菓子を取ろうと思うと
身を乗り出さないと取れませんが、
後者は手を伸ばしたら取れる距離です。

休憩時間終了後、
お菓子の食べた量を調べてみると、
楽に手が届く披験者の方が、
およそ倍の量を食べていました。

たった50センチメートルの差ですが、
その小さな労力の違いが
大きな影響を及ぼすのです。

ではこの「労力」という抵抗を
どうすれば少なくすることが
できるのでしょうか。

そのために必要なのが
行動の簡素化と
ロードマップの作成です。

行動が簡素であれば、
提案されたアイデアや行動を
受け入れるさいの抵抗は
少なくなるだろうことは
容易に予想できます。

例えば20項目のアンケートよりも
3項目のアンケートの方が
答えてくれる人の数は当然増えます。

また、提案に対して
「ノー」と言いにくくする
といやり方もあります。

例えば賛同を得ようとするとき
「このアイデアについてどう思う?」と
質問してはいけません。

「このアイデアは気に入った?
それとももっといいアイデアがある?」と
たずねるのです。

当然相手は、
ノーと答えることの大変さがわかるので、
「イエス」と答えるようになるのです。

「ノー」と答えると
労力を強いられるので、
「イエス」と答えてしまおうとする人が
明らかに多くなるのです。

さらにデフォルトを
うまく設定するという方法も
行動の簡素化につながります。

例えばインターネットで
初めて商品を注文した際、
簡単なアンケートに答えてくださいと
言われる場合があります。

その際に、
資料が欲しいですかという質問に
最初から「イエス」の欄に
チェックが入っていることがあります。

この場合、
いらないという意思表示をする場合は
チェックを外す必要があります。

ただチェックを外すだけなのですが、
そこに「労力」による抵抗が働きます。

ですからデフォルトとして
イエス欄にチェックを入れておけば
こちらの望むことを
受け入れてもらいやすくなるのです。

労力の抵抗を減らすもうひとつの方法が
ロードマップの作成です。

これはどうしたらいいかわからないという
漠然とした思いがあることにより
行動に移せないという抵抗を
緩めるための方法です。

自分が何をすればよいのかが
はっきりわかっている場合は
人は行動しやすいのですが、
それが不明瞭だと、
そこに「労力」という抵抗が働き、
行動に移してくれなってしまいます。

だからこそ次に何をするかを
明確にしておくことは大切です。

実はその際、やるべきことを
忘れてしまうとこともあります。

例えば、乳がんの発見には
乳房を自分で触ってみるという
自己検診が有用です。

そのことを知っていても
乳房の自己検診をしない理由の70%が
たんに忘れてしまっていたとのことでした。

つまり、思い出せば自己検診を
するということです。

例えば「毎月第一日曜日に
お風呂に入ったときは自己検診をする」
といったように決めておくのです。

それを毎日見るカレンダーに
記録しておくのもよいでしょう。

そうすれば行動の確実性が
高まるというわけです。

このように行動の簡素化や
何をするべきかを明確にする
ロードマップの作成は
労力の抵抗を緩めるのに
とても有用な方法になるのです。

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