心の抵抗を緩めるには①

先日また面白い本を見つけました。
ロレン・ノードグレン+
デイヴィッド・ショルタン著、
『「変化を嫌う人」を動かす』(草思社)
です。

「人を動かす」という類いの本は
たくさん出版されていますし、
私もかなり読んでいます。

でもこの本はこれらのものと
一線を画すものです。

通常の場合、
いかにして相手に
やる気を起こさせるかという視点から
いろいろなアプローチがなされます。

しかしこの本で書かれているのは、
いかに人の抵抗を緩めるかという視点から
書かれているのです。

人がその気にならないのは
何かしらの抵抗があるからであり、
その抵抗の中心となっているのが
「惰性」「労力」「感情」「心理的反発」の
四つだと著者は言っています。

そのため、これら四つを
いかにして緩めるのか、
いかにして取り除くのかが
人を動かすためのポイントだと言うのです。

まず「惰性」です。

人は変化を嫌い、
今と同じ状態を続けることを
知らず知らずのうちに選択します。

これは現状維持バイアスとも言い、
私たちの無意識のクセの中で
最も影響力のあるもののひとつです。

例えば、
80%の人は既知のブランド品を買いますし、
交流会で最も多く話しをするのは
知っている人です。

このように人は、
新しいものや知らないものには抵抗を感じ、
つい今までと同じような行動を
取ってしまう傾向があるのです。

そのため、
新しいアイデや選択肢が与えられても、
なかなかそれを受け入れてくれません。

ではこの惰性という抵抗を克服するためには
どうしたらよいのでしょうか。

一つ目は、
新しいアイデアに慣れてもらうことです。

そのためには、
何度も何度もそれに触れることや
小さく始めることです。

何か目新しいアイデアであっても、
何度も見たり聞いたりしているうちに
それに対する抵抗が少なくなり、
そのうち親しみさえ覚えるようになります。

これが単純接触効果です。

宣伝やコマーシャルなどは
この効果を使っています。

何度も何度も同じことを伝えるうちに
最初はあまりよいとは思わなくても
そのうち抵抗がなくなり、
一度買ってみようかなという
気になってしまう人も出てくることを
期待しているのです。

よく「嘘も100回言えば真実になる」と
言われますが、
これは単純接触効果で説明できます。

また、大きな変化を求める場合、
まずは小さく始めることも
テクニックのひとつです。

アイデアも小出しにした方が
すんなり聞き入れてくれる可能性が
高くなるのです。

これはフット・イン・ザ・ドア
テクニックとしても知られています。

セールスマンが「1分だけ」と言って
商品の説明を始めますが、
相手も1分ならいいかと思って
話しを聞いてしまいます。

でもこれが5分になり10分になるのですが、
相手も「まあいいか」と思い
話しを聞き続けてしまうというわけです。

もしも最初から「10分だけ」と言われたら
簡単に断られてしまいます。

この考え方は
習慣を身につけることにも役立ちます。

机の上が汚い人に
机の上をきれいにしろと言っても
なかなか実行されません。

でも、毎日「チリひとつを捨てる」
「積み上げられた本を整える」といった
これならできるということであれば
実行してくれる可能性が高くなります。

それを続けているうちに
もう少し机の上を
きれいにしようという思いが強くなり、
最終的には本当に机の上が
きれいになるというわけです。

このように、
つい惰性でやってしまうことを
変えるのにも
「小さく始める」というのは有効です。

またアイデアを伝える人は
自分が知っている人や似ている人の方が
抵抗が少なくなります。

例えば、たとえ知らない人でも
年齢や出身地が同じだとわかっただけで
親しみを感じるようになるため、
新しいアイデを受け入れることへの抵抗が
少なくなるのです。

また選択肢を提示する際に
比較するものを入れるというのも
惰性の抵抗を緩める有効な手段となります。

人は何かを評価する場合、
必ず他のものと比較して評価しています。

例えば
「あなたは明るい性格ですか?」と
たずねられたとき、
知らず知らずのうちに
誰かと比較して答えています。

例えば、明石家さんまや
お笑い芸人を思い浮かべると、
それほど明るいとは言えないと
思ってしまいます。

一方で、無口でおとなしい友達を
思い浮かべていると、
明るい方だと思うと感じるものです。

このように人は絶対的な評価ではなく、
常に相対的に評価をしているのです。

このクセを使うことで、
惰性による抵抗を緩めることができます。

その際、ポイントとなるのは
極端な選択肢を追加するという
方法があります。

例えば、ワインのお店に行って
5千円と3千円のワインがあれば、
3千円のワインを買う人の方が
多い傾向にあります。

ところが、ここに1万円のワインも
一緒においておくと、
5千円のワインが安く感じられるため
売り上げが増えるのです。

このような方法を駆使することで
惰性という抵抗を
緩めることができるのです。
(続く)

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