ブログ:腰痛も伝染する

前回は「つながり」(講談社)から
肥満は伝染するなどの話をしましたが
今回はその続きです。

伝染するのは何も肥満だけではありません。
よく知られているものに腰痛があります。
そう、腰痛も伝染するのです。

日本でも腰痛は最も多い症状のひとつで
全国民の約30%、つまり4000万人もが
腰痛で悩んでいる人と言われています。

そんな腰痛ですが、
実ははっきりした原因がわからないケースも
多々あります。

そこには心理的、社会的要因も含め
様々な要因が関与していると言われています。

実際、ベルリンの壁の崩壊以前は、
東ドイツの腰痛罹患率は
西ドイツよりもかなり低かったのですが、
10年足らずで東ドイツの腰痛患者は増え、
西ドイツに追いついてしまったのです。

その意味では、
腰痛は文化結合症候群と言えます。

つまりその文化と密接なつながりのある
病気ということです。

文化的影響を受ける病気として
知られているものに
拒食症や過食症があります。

これらは豊かな社会では
よく見られますが、
貧しい社会では見られません。

日本でも社会が豊かになってくるにつれ
増えてきた病気のひとつです。

同じように文化的影響を受けるものに
「コロ」(性器収縮症候群)という病気が
知られています。

これは、
一部のアジア諸国やアフリカに見られ、
性器が消失する、
または体の中に吸収されてしまい、
強い不安やパニックに襲われる病気です。

事実、コロは流行したこともあり、
マレーシアや中国南部では
記録に残されています。

このように世界には、
その国の文化と強く結びついている病気が
あるのです。

もっと深刻な問題として自殺があります。

自殺も伝染することは
皆さんもご存じだと思います。

有名人の自殺がニュースで流れると
その後、自殺者が増えます。

これはウェルテル効果と言われるものです。

そのため有名人が自殺した場合、
あまり詳細な報道をしないようにしたり、
相談窓口の電話番号が
紹介されたりしています。

なお、伝染による自殺は若者に限られ、
24歳を超えた大人の自殺は
あまりありません。

なお、友人に自殺者がいると
自殺願望を抱きやすくなります。

前年に自殺した友人がいる少年は、
そうでない人に比べ、
自殺を考える可能性が3倍近くになり、
自殺を図る可能性も2倍近くに
高まるという研究もあります。

また仮想世界とのつながりも
人に様々な影響を及ぼします。

仮想空間に
自分の代理となるキャラクターである
アバターを作り、
それを通してゲームやコミュニケーションを
取ることが可能です。
(ゲームをしない私はよくわかりませんが)

このアバターを使った研究も
たくさんあります。

例えば、ボランティアの参加者を集め、
各々にアバターを割り当てます。

平凡な容姿のアバターもいれば
美形のアバターもいます。

すると美形のアバターを
割り当てられた参加者は、
仮想世界においては
平凡な容姿のアバターよりも
相手との距離を
かなり短く取ることがわかりました。

それだけではなく、
美形のアバターを割り当てられた人は
進んで話しをしたがったり、
自信がついてきたりしたいのです。

このように、
自らの容姿に対する見方の変化が
仮想空間の中で、
個人の行動や自己認識に影響を及ぼすのです。

実は仮想空間内だけで起こることではなく、
現実世界にも影響を及ぼします。

例えば、アバターが美形だった人は
現実世界でもより大きな自信を示し、
出会い系サイトの美形の相手が
自分とデートしたがると思う可能性が
高まるのです。

このようにネットや仮想空間でのつながりも
私たちに大きな影響を与えます。

こうして見てみると、
世の中のありとあらゆる人は
どこかでつながっており、
また、そのつながりを通して
影響を受けたり与えたりしていることが
わかります。

さらにその影響は
よい場合もあれば悪い場合もあります。

ただし、それらの影響は
ランダムに広がっていくわけではなく、
ある一定のまとまりやルールに従って
広がっていきます。

そのことについて著者は、
社会的ネットワークには
自己治癒力が存在していると
言っています。

私は心や身体には
自己治癒力が存在しているということを
ことあるごとに言ってきました。

でも、社会的ネットワークにも
まさに自己治癒力があるということを
この本を読んで初めて知りました。

この「つながり」の本には
他にも投票行動が
どのように繋がるのかなど、
様々なテーマのつながりについて
詳しく述べられています。

興味のある方はぜひ一度
読んでみて下さい。

多少、時間と根気が必要ですが、
読むだけの価値は十分にあると思います。

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