ブログ:家族にカウンセリングはできない!?

カウンセラーは相手の話を聴き、
悩みや心理的問題の相談にうまく対応し、
それらを解決する専門家です。

これだけ他人の悩みや相談に
上手に対応できるのであれば、
自分の家族の問題にもうまく対処し、
さぞかし円満な家庭生活を
送っていると思われがちですが、
実際はそうとは限りません。

フランスの哲学者である
モンテーニュも言っているように、
「王国を統治するよりも
家庭内を治める方が難しい」のです。

それはなぜかと言うと、
クライエントと家族とでは
心の距離感が大きく異なるからです。

仕事としてクライエントとかかわる場合、
相手は第三者です。

第三者の悩みや問題は、
客観的で冷静な態度で聴け、
うまく対応することもできます。

どんなにつらいことでも、
どんなに悲しいことでも、
自分とは直接かかわりのないことなので、
たいていの場合は、
その場限りの話で終わります。

だからこそ、
相手の気持ちに共感してあげられないと
クライエントからは、
なんか対冷たいとか、
わかってもらえていない感じがする、
といったように思われてしまうのです。

そのためできる限り、
相手の置かれた状況をイメージし、
気持ちを理解することで、
共感的にかかわれるように務めます。

これらは相手が第三者であるからこそ
必要な対応なのです。

一方、家族の場合は、
多かれ少なかれ、
最初から相手に対する不満や
意見の対立が存在しています。

つまり、相談にのったり
カウンセリングをする前から、
多少の感情の波が潜在的にあるため、
第三者のクライエントのように
客観的で冷静な態度でかかわるのが
難しいのです。

もっとも、
お互いに信頼関係や尊敬の念がある場合は、
素直に相談できますし、
相手も親身になって
相談にのってくれます。

この場合は全く問題ありません。

しかし、ほとんどの場合、
家族とは長く一緒にいるがゆえに、
よいところも悪いところも見えますし、
また好きなところも嫌いなところも
あるものです。

さらに、相手に対するネガティブな思いが
大きい場合は、
相談するのに大きな抵抗があったり、
相談しても仕方ないと
最初からあきらめている場合も
少なくありません。

また、せっぱつまって
相談を持ちかけたとしても
相手が真剣に
話を聴いてくれなかったりすると、
それだけでもう
真面目に相談する気が失せてしまいます。

こんな状態では
うまくいくはずがありません。

また、そこまでネガティブな思いがなくても
お互い相手のことを知っているがために、
言葉には出さなくても内心では、
「自分のことは棚に上げて
よくもそんなことが言えるわね」とか、
「また、いつものクセが始まった」といった
不満げな心のつぶやきが
出てきてしまうものです。

さらに、
両者が知っている人物が絡む問題で
その人の評価が異なる場合も
問題になります。

例えば夫婦がともに知っているAさんに
妻が批判されたとします。

妻からすれば批判されたのですから
嫌な気分にもなるでしょうし、
Aさんへの不満も言いたくなります。

一方、相談を受けたご主人の方は、
Aさんのことを
「いい人」だと思っていたとしましょう。

すると、自分がいい人だと
思っている人のことを
あれこれ言われるのは、
あまり受け入れられないものです。

Aさんが人を批判するようなことを
言うわけがないし、
妻の方が何かAさんを不快にさせることを
言ったんでは?などと
Aさんの肩をもつような思いも出てきます。

もちろん、そんな思いを
妻に直接言うことはないかもしれませんが、
そのような思いを持っていると
知らず知らずのうちに言動や態度に
その思いが表われてしまうものなのです。

そうなると、
妻の方も「もしかして私の方が
悪いって思っている?」と、
敏感に察知されてしまう可能性があります。

こうなると、もう親身になって
相談にのるのは難しくなります。

このように家族の場合だと、
お互い相手をよく知っているがゆえに、
多かれ少なかれ不快に思っている部分や
意見の対立する部分があるものです。

そのため第三者のクライエントのように
客観的で冷静な態度で話を聴くことが
できなくなってしまうのです。

このような理由から
家族のカウンセリングは
少々やりにくさがあるのです。

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