ブログ:こうして末期がん患者は死へと近づく

先日は末期がん患者さんが
「亡くなる直前の5兆候」について
お話をさせていただきました。

今回は、もう少し手前の段階、
つまり数ヶ月前からどのような過程を経て
最後を迎えるに至るかを
お話をしたいと思います。

人が死へ至るまでの経過と言っても、
実は病気によってだいぶ異なります。

慢性心不全や慢性呼吸不全の患者さんは
よくなったり悪くなったりを繰り返しながら
だんだんと死に近づいてきます。

ですから、いつが終末期なのかが
はっきりしないことがしばしばです。

ところががんの患者さんの場合は、
比較的典型的な経過をたどります。

がんと診断され、
手術や抗がん剤治療、
あるいは放射線治療を行なっても再発し、
さらに転移が進むと、
もう治療が困難になってきます。

こうなると、医者から
もう治療法がありませんと言われ、
いわゆる末期がんの状態になります。

末期がんというと、
もう動くことも食べることもできないような
イメージがありますが、
そんなことはありません。

見た目はまだ元気そうにしているので、
健康な人と何ら変わらないと思われることも
しばしばです。

だからこそ本人も
治療法がないと言われても
あきらめきれないという思いにも
なるのだと思います。

一般的に末期がんの患者さんでも、
亡くなる3ヶ月前くらいなら
普通に外を歩けますし食事もできます。

人によっては自転車にも乗れますし
車の運転もできます。

ですから、本人も家族も
3ヶ月後に死ぬとは思わないのです。

そんな状態ですから、
最近ちょっと体調が悪いと思い、
病院に行ったらいきなり末期がんだと言われ
びっくりする人も少なくありません。

この段階までは
少しずつ悪くはなってくるので、
今、どの程度悪くなっているのかが、
あまり自覚できません。

このような患者さんに
あとどれくらいでしょうかと聞かれることも
よくあります。

その場合、逆に本人に、
「あとどれくらいだと思いますか」
とたずねると、
「半年か1年くらいでしょうか」と
答える患者さんは少なくありません。

それくらい、今の状態から考え、
3ヶ月後には亡くなっているというのは
本人ですら想像できないのです。

その頃はまだ、普通の生活ができますが、
ただ、少しずつ食欲が落ち、
だんだん動けなくなってきます。

亡くなる1ヶ月くらい前になると
明らかに食事量は減り、
動く量もかなり減ってきます。

それでもまだ
トイレには自分で行けますし、
お風呂も介助があれば入れます。

実は、末期がんの患者さんの悪化の仕方は
ここからが早いのです。

それまではゆっくり悪くなっていきますが、
最後の一ヶ月は週ごとに悪くなります。

つまり、先週よりも今週、
今週よりも来週と週が進むごとに
明らかに悪くなっているというのが
誰の目から見てもわかるようになるのです。

その目安になるのが
食事の食べられ具合と
どの程度動けるかです。

それまでも
以前ほど食べられなくなってはいますが、
それでも半分くらいは食べられます。

それが3分の1,4分の1、
数口、水分のみといった具合に
どんどん食べられなくなるのです。

家族は食べないとダメだと言い、
なんとか食べさせようとするのですが、
患者さんにしてみれば、
それが苦痛以外の何ものでもないのです。

家族の気持ちはわかりますが、
食事は食べられなくなるのが
自然の成り行きですので、
無理に食べさせようとしては
いけないのです。

この頃になると
横になっている時間が圧倒的に長くなり、
トイレと食事以外の時間は
だいたい寝ているようになります。

身体がだるくて、
起きているのがつらくなるからです。

最近は自宅で亡くなる方も増えてきましたが
やはり最後は入院する人がほとんどです。

家族だけでは不安だとか、
寝たきりになると下の世話も必要になるので
結構、介護が大変だというのが
主な理由です。

今は老老介護の時代ですので、
自力でトイレに行けなくなったあたりが
入院になる一つの目安となります。

そして最後の一週間は
さらに悪化のスピードが加速されます。
週ごとの変化が日ごとになるのです。

つまり、
日に日に悪くなるのがわかるのです。

その後の変化は、
前回お話ししたような経過をたどります。

このように末期がんの患者さんの最後は、
本当に坂道を転げ落ちるように
急速に悪化していきます。

そのため、家族もその変化の早さに
戸惑いを隠しきれません。
でもそれが現実なのです。

だからこそ、やるべきことは
早め早めにしておいた方がいいのです。

会うべき人に会うとか、
仕事の引き継ぎや財産の整理、
遺言状の作成など、
時機を逸することなく
早めにやり終えておくべきなのです。

まだ大丈夫と言っているうちに
あっという間に悪くなります。

ですから、
くれぐれも手遅れにならないように
このような経過をたどることを
十分に知っておく必要があるのです。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA


    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください