ブログ:「損をしたくない」という罠

私たちには、
ついネガティブなことに
目が向いてしまうという
思考のクセがあります。

これが「ネガティビティ・バイアス」です。

たとえば、牛の挽肉を買う場合、
脂肪25%と表示されている肉を見ると
かなり体に悪そうに感じます。

一方、赤身75%と表示されていると
健康的な肉だという気がします。

実際には中身は全く同じものでも、
表示の仕方いかんで
このように正反対の印象を与えます。

実際、全く同じ挽肉でハンバーグを作り、
それを食べてもらうという実験があります。

参加者の半分には
「赤身75%」と表示されたハンバーグを、
残りの半分には
「脂肪25%」と表示されたものを
食べてもらいました。

すると、
「赤身75%」と表示されたハンバーグを
食べた参加者は
「脂肪25%」と表示されたものを
食べた参加者に比べ、
「脂っこさ」は低く、
「赤身の味わい」は強いと
評価しました。

さらに手術に関する研究もあります。

肺がんの患者さんに対して
手術をした場合は90%の確率で
生存したと伝えると、
80%の人が手術に同意しました。

ところが、手術をした場合
10%の確率で亡くなると伝えると
半数の患者しか
手術を選択しませんでした。

私も患者さんに
薬の副作用の説明をする場合、
この手法はよく使います。

がん患者さんに
麻薬系の鎮痛剤を処方すると、
30%程度の人に吐き気の副作用が出ます。

そのため、それを説明する場合は、
「30%の人に吐き気が起こる」ではなく
「70%の人には吐き気は起こらない」と
説明した方が、
吐き気は生じにくいのです。

このように人は、
ネガティブな切り取り方をされると
それを避け、
ポジティブな切り取り方をされると
受け入れる傾向にあります。

学生の評価でもそれが表われます。
例えば、10教科の平均点が
同じである二人の学生が
ある大学に入学志願を
してきたとしましょう。

一人は、A、B、C段階の三段階評価で
オールBでした。

もう一人の学生は
Aの教科が4つある反面、
Cの教科も4つあり、
B評価は2つでした。

この場合、合格させるとしたら
どちらの学生の方が
選ばれやすいでしょうか。

多くの場合、
オールBの学生の方が選ばれます。

なぜならば、
たとえA評価があったとしても、
同じ数のC評価があるので
ネガティビティ・バイアスにより
C評価に重きが置かれてしまうからです。

その結果、平均点が同じでも、
オールBの学生の方が
高く評価されてしまうのです。

逆にネガティビティ・バイアスを
うまく利用しているのが
上手な営業マンです。

車を売る場合、
お客さんに対してどのような
提示の仕方をするかによって
最終的な支払い価格が変わってくるのです。

例えば、車の本体価格が300万円だとすると
それに様々なオプションが付きます。

通常の営業マンは
次々にオプションについての説明をし
それを付け加えるか否かを
確認していきます。

しかし上手な営業マンは
最初にすべてのオプションをつけた価格の
350万円を提示します。

その上で、不要なオプションを確認し、
次々と減らしていくのです。

人は、すでにあるものを減らされると
損をするような思いになります。

そのため後者の方が
多くのオプションをつけることになり、
その営業マンの成績はよくなるのです。

この考え方は様々なところで使えます。

以前、病棟にいたナースが
半年で16kgものダイエットに
成功しました。

彼女にその秘訣を聞いてみると、
ご主人とある約束をしたというのです。

それは1kg痩せるごとに
1万円のお小遣いを
くれるというものでした。

ご主人はお金を払ってでも
奥さんに痩せてもらいたいと
思ったのかもしれません。

私はこの話を聞いて、
もっとよい方法を思いつきました。

友達でもだれでもよいのですが、
その人にあらかじめ10万円を
手渡しておきます。

もしも、自分が1ヶ月以内に1kg痩せたら
1万円ずつ返してもらうという
約束をするのです。

そのかわり、それが実現しなければ、
1万円は友達のものになるわけです。

うまくいけば
10ヶ月で10kg痩せることができます。

本人にしてみれば、
自分のお金がなくなるのは嫌なので
なんとか痩せようとします。

さらに、自分のお金だとはいえ、
1kg痩せたら1万円が手に入る(戻る)のは
嬉しいものです。

この方法も、損をしたくないという
人間の心理をうまく利用した方法です。

以前、痩せたいと言っていた人に
この方法を提案してみましたが、
あっさりと拒否されてしまいました。

多分彼女は、
できるという自信がなかったか、
そこまでして本気になって
痩せようという気がなかったかの
どちらかだったのだと思います。

いい方法だと思うのですが‥
どなたか10kg減量チャレンジ、
やってみませんか?

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