ブログ:成長から「脱成長」へ

(前回から続く)
なぜ、このようなことになって
しまったのでしょうか。

それは資本主義社会という
無限に成長することを宿命づけられた
社会システムに私たちが巻き込まれて
しまっているからです。

昔は、必要なものを必要なだけ作り、
それで世の中が回っていました。

しかし一部の上流階級の人たちが
富を蓄積するために、
貴族、教会、中産階級の商人らと団結し、
牧草地や森林、川などを柵で囲い、
それらを私有化してしまったという
「囲い込み」(エンクロージャー)の
歴史があります。

その富をさらに増やすために
今度は海外に進出し、
先住民を虐殺し、資源を強奪、
人々を奴隷化することで
多くの国々を植民地化していったことは
誰もが知っていることです。

もちろん、今は虐殺や強奪により
強引に国々を植民地化することは
ありません。

その代わり、
もう少し現代的なスマートな形で
同様のことが繰り返されています。

昔はどこでも、
八百屋や魚屋、肉屋があり、
また、お菓子屋や駄菓子屋もあり、
私たちはそこで買物をしていました。

今はそのようなお店を見ることは
めったにありません。

それに変わって出てきたのは、
スーパーやコンビニであり、
ちょっとした都会には
必ずと言ってよいほど
ショッピングモールがあります。

大企業がどんどん進出することで、
細々とやっていたお店などは
軒並み潰されてしまいました。

資本主義社会では、
たくさん儲けた会社や企業が、
その利益をもとにさらに組織を大きくし、
どんどん成長することで
組織が維持できるという
仕組みになっています。

そのような大企業は、
海外からできるだけ安く原材料を調達し、
中小企業に依頼する製品も、
可能な限りコストを下げることで、
より多くの利益を上げ、
ますます大きくなっていくのです。

また、大企業や大きな組織は
お金がたくさんあるので、
政府や各機関に働きかけ、
自分らの都合のよいように
法律やルールを変えることも可能です。

土地開発に不都合な
環境保護の主要な法律は廃止され、
以前は企業が立ち入れなかった
鉱山、鉄道、エネルギー、水道、
電気通信などの公共部門を民営化し、
どんどん儲けるための機会を
増やしていきました。

規制緩和や民営化が推進されたお陰で、
巨大企業は巨額の利益を
出せるようになりました。

資本主義や新自由主義は
大企業にとって都合のよい考え方なのです。

ところが、
大企業の利潤追求や成長主義による
自然破壊の進行は
近年問題視されるようになりました。

さすがにこのままではまずい、
自然や生態系が壊滅的なダメージを受け
人類の生存すら脅かすことになりかねないと
世界中の人々が考えるようになったのです。

そのための対策のひとつが
再生可能エネルギーへの取り組みです。

従来の石炭や石油を使ったエネルギーは
大量の温室効果ガスを排出し、
それが温暖化の原因になっていると
言われています。

今後はできるだけ、
太陽光や風力、地熱といった
再生可能エネルギーに
移行していこうというわけです。

実際、太陽光発電に必要不可欠な
ソーラーパネルは家の屋根だけではなく、
広大な平地に敷き詰められたものも
目にするようになりました。

また、風力発電も増え、
電気自動車もよく見かけるように
なりました。

こうしてみると、
ずいぶんと環境に優しい取り組みが
されるようになったと
思われるかもしれません。

ところが、
クリーンエネルギーへの移行には
膨大な量の金属やレアアースが必要であり、
それらの採取が生態系と社会に
さらなる負担をかけることになります。

つまり、クリーンエネルギーへの移行は
現行レベルを大幅に超える原材料の採取を
必要とするようになるのです。

例えば、ソーラーパネルを見てみ、
それに必要な銅は現在の38~105%増加し、
インジウムは3倍以上になります。

電気自動車へ移行するためにも
銅やコバルト、ネオジムといった資源の
採掘量を爆発的に
増やさなくてはなりません。

その結果、世界中で森林破壊や
生態系の崩壊、生物多様性の喪失の
大きな要因になるのです。

つまり、クリーンエネルギーの増大が
さらなる環境や生態系を
破壊するという本末転倒の事態を
引き起こすことになるのです。

なぜ、このようなことに
なってしまうのでしょうか。

それはクリーンエネルギーで
儲けようとしている大企業が
さらなる成長を
続けようとしているからです。

私たちは経済成長を続けるという前提で
すべてのことを考えているため、
このようなことになってしまうのです。

この問題を解決するためには
何かしらの方法で、
「脱成長」に舵を切る必要があります。

しかし、グローバル企業が、
世界を牛耳っている限り、
彼らの不利になる
「脱成長」などという対応は
まず実行されることはないでしょう。

私たちはこのまま、
「クリーン」や「再生可能」という
聞こえのよい言葉に踊らされ、
さらなる環境破壊を
推し進めてしまうことに
なってしまうのでしょうか。

資本主義社会のシステムの中に
がっちりと取り込まれている私たちに、
一体何ができるのか、
私にはよく分かりません。

このような問題に関心のある方は
ぜひ「資本主義の次に来る世界」
読んでみて下さい。

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