ブログ:「あなたの気持ちはわかる」は嘘
今回は、エリック・バーガー著
「残酷すぎる人間法則」の中から
なるほどと思ったことについて
紹介させて頂きます。
この著者の前作、
「残酷すぎる成功法則」も
とても面白かったのですが、
それに勝るとも劣らず、
この本も刺激的でした。
例えば、傾聴は人間関係の問題を
解決するための最強の手段となり得ますが、
こと、家族にはあまり使えません。
普通、こんなことを本には書きませんが、
実は、これは事実です。
実際、夫婦の言い争いの最中に、
相手の話を傾聴することなどできませんし
(我が家でもそうです)、
傾聴が実践できた
数少ないカップルの追跡調査でも、
効果があったのはごく短期間で、
争いはすぐに再燃するのです。
このことからもわかるように、
第三者として話を聴く場合は、
冷静な立場で傾聴できますが、
当事者の場合は、
とてもそんな冷静にはなれないので
傾聴などできないのです。
ですから、カップルセラピーや
夫婦セラピーの専門家でも、
そのセラピスト自身は離婚していたり、
夫婦生活が破綻していたりする人も
少なくありません。
だからと言って、
そのセラピストは下手なのかというと
そんなことはありません。
自分のことはできなくても、
他人のことはできるのです。
これが現実です。
よく「あなたの気持ちはわかる」と
言う人がいますが、
これも本当にわかっているかどうかなど、
はなはだ疑わしいと言わざるをえません。
例えばビデオに出てくる人の、
考えや気持ちを察する実験をすると、
相手が見知らぬ人の場合、
正答率は20%でした。
相手が、親しい友人の場合は30%、
配偶者の場合でも最大35%でした。
要するに、相手の気持ちが
わかったつもりでいても、
実際の3分の2は
間違っているということです。
なぜこのようなことが起こるのかと言うと、
多くの人は、
自分の頭の中で作り上げたスローリーを
正しいストーリーだと、
勝手に信じる傾向が強いからです。
これが自己中心性バイアスと呼ばれる
思い込みのクセの一種です。
それでも反論する人はいます。
いや、私はちゃんと相手の気持ちを
読み取る自信がある!と。
でも、それも誤解です。
もしも、そう思っているとしたならば、
それは、相手の心を
読み取る能力が高いのではなく、
相手の表情が豊かであったことが
大きな要因だと思われます。
また、第一印象についても
いろいろと誤解があります。
確かに、第一印象は7割が正しいことが
様々な研究でもわかっています。
しかし、裏を返せば
3割は不正確ということです。
にもかかわらず、
一度持ってしまった第一印象のイメージは、
その後なかなか修正するのが
難しいという現実があります。
なぜそうなってしまうのかと言うと、
いったんイメージを持ってしまうと、
それに反する事実は無意識にスルーされ、
自分の思い込みを維持し続けるからです。
これが確証バイアスと呼ばれる
心のクセのひとつです。
また、人はしばしば嘘をつきます。
私は嘘はつきませんと言う人でも、
1日に200回くらいは
嘘をついているという研究があります。
もちろん、そのうちの大半は
罪もない嘘です。
例えば、もらったプレゼントが
あまり気に入らなかったとしても
「すごくうれしい!」と言ったり
ちょっとしたトラブルだったにもかかわらず
「もう最悪!」と言ったりするものです。
もちろん、犯罪を犯しているのに
何もしていないというような
大きな嘘もあります。
ところが、
私たちは嘘を見破るのが苦手であり、
その成功率は平均54%であり、
嘘を見破る能力に長けていると
思われがちな警察官であっても
その確率はさほど変わりません。
ではどうしたら相手の嘘を
見抜くことができるのでしょうか。
実は、嘘を見抜こうとするよりも、
相手に真実を語ってもらうように
仕向けることの方が
確実性が高いことがわかっています。
そのためには、
できるだけ相手に敬意を持って
丁重にかかわればよいのです。
カウンセリングの場面でも
クライエントとの信頼関係ができると
「実は‥」といって今まで言っていなかった
問題の核心を突くような事実を
語ってくれることが少なくありません。
ですから、真実を知りたければ、
無理に白状させようとしたり
嘘を見抜こうとするのではなく、
優しく親切にかかわるのが
一番の近道なのです。
まとめると、第一印象のイメージは
7割程度は正しいのですが、
嘘を見抜く力は54%と、
コイン投げの確率とさほど変わりません。
さらに、人の心を読み取る力は
ひどくお粗末であり、
一度抱いた印象はなかなか変えられず、
間違った判断であったとしても
修正するのは難しいということです。
それが人の現実だということを
先ずは十分に認識しておく必要があります。
ですから、相手のことを勝手に
「わかった」などと思わずに、
先ずは、自分の判断はもしかしたら
間違っているかもと考え、
それを修正することに
意識を向けることの方が、
相手を理解するのには役立つのです。