ブログ:「淡い感情」が意思決定に影響

何かを判断したり決定したりする際、
怒りや喜び、悲しみや不安といった
喜怒哀楽の感情が影響することは
容易に察しがつきます。

しかし実際には、
このようなはっきりとした感情よりも、
淡い感情の方が大きな影響を及ぼします。

なぜならば、日常生活においては
自分でもはっきり認識できないような感情を
抱く機会の方が圧倒的に多いからです。

道ばたに咲いている草花を見たとき、
テレビで火事のニュースを見たとき、
なんとなく気分が乗らないとき等々、
私たちは喜怒哀楽とまでは言えない
「淡い感情」を抱いており、
これらが意思決定に
大きな影響を与えているのです。

例えばこんな研究があります。

披験者に100分の1秒間、
「笑っている人の顔」「起こっている人の顔」
「(人とは無関係の)図形」の写真の
どれかを見せます。

それぞれの写真の直後に、
披験者には読めない「くさび形文字」
(メソポタミア文明で使われていた文字)を
2秒ずつ、次々と見せます。

100分の1秒の写真は時間が短すぎて
披験者は見たという認識はありません。

ですから、いろいろな「くさび形文字」を
見たとしか思っていません。

その後披験者に、それぞれの文字について
どう思うかとたずねたところ、
笑顔の写真の直後に見た文字に対して
「好き」と好印象を抱いた披験者が
多いことがわかりました。

この実験から、
笑顔の写真を一瞬見たときの
ちょっとした感情が、
意味もわからない文字を「好き」だと
思わせてしまう影響力があることが
わかりました。

このように、強い感情ではなく
一瞬浮かび、すぐに消えるような
「淡い感情」でも
私たちの無意識に働き変え、
思いや行動を変えてしまうのです。

もちろん、このような「淡い感情」にも、
ポジティブな感情とネガティブな感情が
あります。

たとえ淡い感情であったとしても
ポジティブな感情の場合、
視野や思考の幅を広め、
能力、活力、意欲が高まり、
人脈は活動の範囲が広がることが
わかっています。

これが「拡張―形成理論」です。

要するに、
ちょっとしたポジティブな感情でも
仕事の効率や質を上げ、
心身のストレスを軽減させることが
できるということです。

だからこそ、
コーヒーを飲んでホッとするとか、
デスクにお気に入りの写真を貼るなど、
些細なことであったとしても
ポジティブな淡い感情を作り出せるので、
それが日常にもよい影響を及ぼすのです。

もちろんその逆の、
ネガティブな「淡い感情」でも、
日常の行動に影響を与えます。

これは、なんとなくある
小さな不安や不満です

これらをそのままにして溜め込んでいると、
心身の不調をもたらすことになります。

しかし、私たちはこれらの感情を
些細なものととらえているため、
自分がネガティブな「淡い感情」を
抱き続けていることに気づいていない場合も
少なくありません。

その結果、心身症となり、
心身の不調を来すことになるのです。

私が心療内科医をしているとき、
心身の不調をきたして来院する
患者さんの多くは、
自分がストレスを溜め込んでいるという
自覚があまりありませんでした。

ストレスというと大きな悩みや問題だと
思われがちですが、
ネガティブな「淡い感情」を生じるレベルの
小さなストレスであったとしても、
それがずっと続いていると、
心身の様々な問題を引き起こすのです。

その意味でも、
「淡い感情」はとても重要なのです。

また「淡い感情は」はお金の使い方にも
影響を与えます。

例えば何かの商品を買う際、
現金払いよりもキャッシュレスの方が
お金を使いすぎてしまうことが
知られています。

これはキャッシュレスだと
お金を使ってしまったという
心理的な痛みを感じにくく、
また、お金をいっぱい使ったことに対する
ネガティブな「淡い感情」も
生まれにくいため、
簡単にお金を使ってしまうのです。

またメニューに対して、
「2,000円」と書いてあるのと
「2,000」と書いてあるのでは、
後者の方が大幅に消費額が増えます。

どちらも2,000円であることは
頭ではわかっているのですが、
「2,000」と書かれると、
お金を支払うという行動が
心理的に響かないため、
簡単にお金を使ってしまうのです。

他にも、
幸せをお金で買う5つの原則や
「先が読めない」が最強のストレス、
タイプ別による行動や判断の違いなど、
面白いテーマについて
たくさん書かれています。

興味のある方は、
ぜひ、相良奈美香著、
行動経済学が最強の学問である」を
読んでみて下さい。

おすすめです。

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