ブログ:無意識の正体は「ゆらぎ」?

今回も池谷裕二著
単純な脳、複雑な私」(ブルーバックス)
の内容をもとにお話しさせていただきます。

脳の神経細胞は
外部刺激に反応するだけではなく、
何の刺激がなくても、
自発的な活動を絶えず繰り返しています。

例えば、
脳神経の一部を取り出して
特殊な方法で見てみると、
神経細胞の自発運動が、
ときに強く、ときに弱く、
ときに神経細胞同士が足並みをそろえ、
ときにバラバラに活動しているのが
わかります。

つまり、脳の神経細胞は
常にゆらいでいるのです。

実は、この「ゆらぎ」の存在が、
人の思考や行動を左右しているのです。

どういうことかを簡単に説明します。

実験的に脳の神経の一部に、
ある刺激をすると、
それに伴い反応が起こります。

しかし、全く同じ刺激を与えても、
毎回、全く違う反応が返ってくるのです。
なぜかと言うと「ゆらぎ」があるからです。

神経回路の内部は自発的な活動により、
常にゆらゆら揺れているのです。

そこに「入力」刺激を受けると、
回路はその瞬間の「ゆらぎ」を取り込みつつ、
「出力」しています。

つまり、
「入力」+「ゆらぎ」=「出力」
という反応が
脳ではいつも行われているのです。

そうなると、いつ入力刺激が来るかが
重要になってきます。

なぜならば、
その瞬間の「ゆらぎ」によって、
反応が決まってしまうからです。

結局、どんな反応が返ってくるかは、
刺激のタイミングの問題なのです。

逆に言うと、
今の時点の「ゆらぎ」がわかれば、
どんな反応が返ってくるかが、
予測できるということです。

例えばこんな実験があります。

「ランプが点灯したら、
できるだけ早くレバーを握って下さい」と、
披験者に伝えます。

このときにレバーを握る握力は、
人間は機械ではないので、
当然、毎回一定ではなく、
強さにばらつきが見られます。

このばらつきは何によって決まるのか?
それが「脳のゆらぎ」なのです。

ランプが点灯する直前の脳の状態を
MRIで測定すれば、
次に強く握るか、弱く握るかが
わかるというのです。

また、ゴルフプレイヤーで
行った研究もあります。

パターでカップにボールを沈めるのは、
プロであっても失敗することがあります。

たとえ同じ場所、同じ距離、同じクラブと、
すべて同じ条件にして、
プロ級の腕を持つ人が打ったとしても、
うまく入るときと入らないときがあります。

これも脳の「ゆらぎ」が原因です。

パットを打つ直前の脳のゆらぎの状態を
見ることによって、
パットが成功するか否かが予測でき、
しかもどれくらいずれて外すかも
わかってしまうというのです。

「ゆらぎ」は行動だけに
関係するわけではなく、
認知や知覚にも関係しています。

トリックアートで有名なものに
「ルビンの壺」(下図)があります。

これを見ていると、
ときには壺に、
ときには向き合った人の顔に見えます。

面白いことに、
ずっと見つめていても、
壺か顔かのどちらかが
常に見え続けているということはなく、
時間が経つと自然に入れ替わります。

これも、脳がゆらいでいるから、
そうなるのだと言われています。

さらに、「注意力」も
「ゆらぎ」が関係していることが
わかっています。

単純作業をしていると、
どこかでミスを犯すのが人の常です。

そのようなミスが、
いつ起こるかを脳の活動から
事前に予測できるのです。

また、この「ゆらぎ」を
うまくコントロールできれば、
よい反応を出すことが
ある程度はできるようになるとも
言われています。

この本には、
はっきりと書いてはいませんでしたが、
どうも瞑想といったことに
たどり着きそうな感じでした。

ここからが私の考えですが、
前回も最後でも述べたように、
無意識の反応には、
この「ゆらぎ」が関係しているのではと
思っています。

気づきやひらめきといった「出力」は、
「ゆらぎ」が関係していますが、
その「ゆらぎ」により
無意識が作り出されているのではと
思うのです。

何も考えず、ただボーッとして
自然の中を散歩していると、
ふと、面白いアイデアが
浮かんだりすることがあります。

何も考えない状態と思っていても、
実は脳は活発に活動しています。

外界からの適度な刺激が、
適度な脳の「ゆらぎ」を生み出し、
それが、よいアイデアを
思いつかせてくれるのかもしれません。

このあたりは、
脳科学の世界でも、
研究が現在進行中です。

細かいことはわかりませんが、
どうも無意識と脳の「ゆらぎ」とは
関係があるのではと私は思っています。

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