ブログ:オンラインが危ない!

前回紹介した榊浩平著、
「スマホはどこまで脳を壊すのか」
(朝日新書)の内容をもとに、
今週もお話をさせて頂きます。

前回は、スマホ等の使用により
子供の脳の発達が止まってしまうという
お話をさせていただきました。

今回は、オンラインコミュニケーションでは
心と心がつながらず、
一人でボーッとしている状態と
あまり変わらないという
ショッキングな話をします。

コミュニケーションの重要性は
今さら言うまでもありません。

ただ、最近は
対面でのコミュニケーション以上に、
オンラインでのコミュニケーションの方が
盛んに行われる傾向があります。

同じコミュニケーションでも、
対面とオンラインとでは
何が違うのでしょうか。

最近の研究でわかったことは、
対面とオンラインとでは
コミュニケーションの質が
全く異なるということです。

アメリカの研究では、
オンラインにより
グループの意思決定をする作業は
対面会話と比べると、
意思決定が難しく、
話し合いに時間がかかり、
会話の満足度も低いことが
報告されています。

活発な議論が必要になる
重要なテーマについて話し合う場合は、
オンラインは不向きなようです。

また、初対面の人との会話において
対面とオンラインで比較した研究では
対面に比べオンラインの方が、
相手に対してあまり好意的な印象を
持てなかったという結果が出ています。

対面とオンラインとでは
相手に抱く印象にも
違いが表われてくるのです。

さらに、対面とオンラインでの会話における
脳の働きについての研究がありますが
これは衝撃的でした。

脳の活動は、時々刻々と変化しており
常に揺らいでいます。

最近の研究では、
会話をしている人たちの間では
脳活動のリズムが
揃ってくるという現象が見られ、
これを「脳活動が同期している」と言います。

この同期現象が見られている際には、
コミュニケーションにおいて
共感のような現象が起こり、
「つながっている」と感じるようです。

また、周囲の人への配慮や思いやり、
グループで一つの目標に向かって
頑張っているときなどにも
脳活動の同期が見られます。

逆に、グループ内にいても
ボーッとして他のことを考えていたりすると
当然のことながら「同期」は見られません。

つまり、「脳活動の同期」を見ることにより
どれくらい相手と「つながっている」かが
わかるということです。

先ずは対面での会話ですが、
これはコロナ前に行われた研究です。

5人のグループを作り、
各々が120センチ間隔で
円上に並べた椅子に座ってもらい、
5分程度の会話をしてもらいます。

この状態で脳活動を測定した結果、
何もせず一人で、
ボーッとしているときの脳活動に比べ、
グループで会話をしているときの方が
明らかに脳活動の同期の程度が
高いことがわかりました。

これはある意味、当たり前のことです。
コミュニケーションをしているのですから。

その後、コロナが流行し、
会話はオンラインが中心になりました。

そこで、オンラインで対面と同様に
脳活動の同期がどうなっているのかを
調べることになりました。

その結果、オンラインでの会話では
脳活動が同期していないことが
わかったのです。

さらに衝撃的だったのは、
脳活動の同期状態に関しては、
オンラインでの会話と、
一人でボーッとしている状態と
同じだったのです!

つまり、オンラインの会話は、
脳から見ると、頭が働いておらず、
正常なコミュニケーションに
なっていないということです。

オンラインの会話は、
情報を伝えることはできても
脳活動の同期が見られないため、
相手と「つながっている」という感覚が
持てないのです。

ではなぜ、オンラインでの会話では
相手とつながることが
できないのでしょうか。

著者はいくつかの仮説を提示しており、
そのひとつは「視線」のずれです。

オンラインでは、カメラの位置の関係上、
相手と視点を合わせることが不可能であり、
そのため心が通じ合えないというのです。

もう一つの仮説は「パラパラ漫画」仮説です。

パソコンやスマホでの映像は
パラパラ漫画と同様の原理で、
一般的には1秒間に60枚の画像が
流されることで、
動いているように見えます。

しかし、脳の神経細胞は、
目から入ってくる視覚情報を
1ミリ秒、つまり1000分の1秒の単位で
処理しています。

60分の1秒と1000分の1秒では
16倍以上の差があり、
脳からすると、パソコンで見る画像は
現実の「人」ではなく、
パラパラ漫画の一コマに描かれた
キャラクターの一人としか
認識されないのかもしれません。

そんな理由で、
オンラインでの会話では
脳活動の同期が見られず、
心の心のつながりが
持てない可能性があるというのです。

現在、オンラインセミナーも盛んですが、
私はオンラインセミナーが嫌いで、
対面のセミナーにこだわり続けています。

この本を読んで、
なぜ、オンラインセミナーがやりにくいかが
少し理解できた気がします。

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