ブログ:「現状にとどまる」という心のクセ

12月18日に京都で行った講演では、
心のクセ(認知バイアス)の話を
2時間半もしゃべってしまいました。

いろいろな話をしたのですが、
その中で「現状維持バイアス」と
「現在バイアス」についても話しました。

現状維持バイアスとは読んで字のごとく、
問題が起こらない限り、
現状を維持してしまうという心のクセです。

多くの人はこのバイアスに
どっぷりつかっています。

私の場合、いまだに携帯電話を
使っていることでしょうか。

また、ホームページを
10年くらい変えていないというのも
現状維持バイアスの表れです。

多くの人が、
屋外ではマスクは不要と言われても
マスクをし続けているといのも
現在バイアスで説明できます。

またコロナがインフルエンザなみになり
海外では、コロナはすでに過去のものに
なっているにもかかわらず、
日本では未だに
「2類」を「5類」に下げようとせず、
ダラダラとそのままにしているのも
現状維持バイアスが関与しています。

医者の場合は、
一度出した薬は効かなくても、
そのままずっと出し続け、
やめることがなかなかできません。

そのため患者さんの薬は
どんどん増えるばかりなのです。

これなども医療の中でよく見られる
現状維持バイアスのひとつです。

とにかく現状維持バイアスは、
誰もが持っている
根深い心のクセと言ってもいいでしょう。

また「現在バイアス」も
やっかいな心のクセです。

これは目の前の楽しみを優先して、
本来の価値ある行動を
先送りするというものです。

いわゆる「先延ばし」です。

私も、講演の準備や原稿書きは
当然、やるべきことなのですが、
目の前の楽なことや楽しいことに
心がひっぱられてしまい、
どうしても先延ばしになってしまいます。

これに対しては、
通常、なんとかやる気を出すとか
意欲を奮い立たせるといったことに
目が向けられがちですが、
これではうまくいきません。

なぜならば、行動が必要だからです。

人はやる気があるから行動するのではなく、
行動するからやる気が出てくるのです。

つまり、まず行動をしなくては
先延ばしへの対処はできないのです。

ただ、むやみに「行動しよう!」などと
自分を鼓舞しても、
なかなか行動には移せません。

そこで重要になってくるのが
「小さな行動」です。

「これくらいならできるかも」と
思えるような行動なら人はやれるのです。

「小さな行動」であれば脳は錯覚し、
やる気がなくても動いてくれるのです。

講演の準備を例にとると、
資料を1ページだけ読もうというのであれば
これならできます。

ただ実際は、1ページ読むと、
もう少し読んでもいいかと思い、
結局、30分~1時間くらい
資料の読み込みができてしまうのです。

このように、
まずは「小さな行動」で
それならできると自分の脳をだまし、
実際に行動をさせてしまえば、
あとから意欲は自ずとついてくるのです。

これが現在バイアスへの
一番の対処法です。

今回の講演準備も、
こうしてやっていました。

それはそうと、
今回、講演の準備をしていて
気づいたことがあります。

それは心のクセと行動との関係です。

心のクセにより、
自分の意思決定が左右され、
その結果、不適切な行動を
取ってしまった場合は、
それに気づくことで、
適切な行動に変えることはできます。

例えば、乳がん検診でよく行われる
マンモグラフィの検査ですが、
一般的には乳がんの死亡率を20%
低下させると言われています。

しかし、少し見方を変えて見てみると
実際の死亡率の低下は
0.04%だということがわかります。

その事実を知ると、
自分の意思判断が変わり、
ならばマンモグラフィーの検診は
受けなくてもいいかと考えるようになる人は
少なからずいるはずです。

このように、思い込みが変わるだけで
行動が変わる場合もたくさんありますが、
そうではないものも当然あります。

先ほどお話しした、
現状維持バイアスや現在バイアスなどが
その典型例です。

頭ではわかっていても、
現状の楽さや行動を起こすことへの
煩わしさがあるために、
なかなか行動へと踏み切れないのです。

その場合は、
思いを変えようとするのではなく、
先ほど説明したように、
小さな行動から入っていく必要があります。
その方がずっと現実的なのです。

私は、心のクセ(認知バイアス)について
この5~6年勉強をしてきました。

それを通して、
「心のクセ」に気づくことが大切だと
思っていたところがあります。

しかし実際には、
気づいただけでは行動が変わらないものも
多々あります。

やはり「小さな行動」や環境を
うまく利用することも
心のクセに気づくことに
勝るとも劣らず重要なことだと
今回の講演を通して気づきました。

これでまた一歩、前に進めた気がします。

なお、今回の講演は後日視聴ができますので、
ご希望の方は聴いてみて下さい。
目からウロコの話がたくさん出てきますよ。
→後日視聴

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