先週は、人は「体で思考する」
という話をしました。

脳は、体の感覚や動き、
ジェスチャーと連動しており、
その相互作用が
考えたりひらめかせたりすることに
大きな影響を与えています。

しかし実際はそれだけではありません。
私たちを取り巻く
自然環境や空間なども
脳の働きに大きな影響を与えます。

自然環境が私たちの思考に
影響を与えるというのは、
経験的にも理解できます。

自然豊かな風景を眺めていると
それだけでとても心が癒やされ、
清々しい気持ちになったという経験は
誰もがあると思います。

このような自然豊かな環境は
ストレスを軽減し、
精神のバランスを取り戻し
よりしっかりと思考することの
手助けをしてくれるのです。

実際、うつ病の治療の中には
「自然の中のウォーキング」があり、
抗うつ剤に勝るとも劣らぬ効果があることが
知られています。

つまり、自然は、副作用がなく、
かつとても効果的な「薬」だとも
言えるのです。

さらに室内に自然を取り入れることも
脳に有効な働きをもたらします。

例えば、室内観葉植物は
働く人の注意力や記憶力を向上させ
生産性を上げます。

また自然環境のみならず
物理的空間や環境も
思考に影響を及ぼします。

例えば職場環境を見てみましょう。
多くの場合、仕事場は
オープンスペースになっています。

それにより
コミュニケーションが促されるという
メリットはあります。

しかしその一方で、
人の話し声に敏感になり、
見られていることに気づくと
そちらに意識が向いてしまい
脳のパフォーマンスはかなり落ちます。

反対に、
プライバシーが守られるスペースでは
効率や生産性、集中力、創造性が
高まることが多くの研究でわかっています。

また、天井が高い場所にいると
人の思考は広がり、抽象的になりますし、
対称形の建物は
人に力強さや頑強さといった印象を与え、
曲線は安心感や心地よい感覚を抱かせます。

まさに、場所や空間には
人の心を変えるだけの力があるのです。

また、考えていることやアイデアを
紙やノートなどに書き出したり
図や模型という形にして
現実の空間に落とすという作業も
知的空間を広げるのに役立ちます。

これは、頭の中だけで考える負担を
少なくするだけではなく、
より考えがまとまり、
新たな視点やアイデアを
見つけやすくする働きがあります。

このように、
頭の中の考えを
物理的空間を利用して表現することは
脳の働きを高めるのに大いに役立つのです。

さて、「脳の外で考える」の最後は
「人と思考する」です。

これを一言で言うならば、
専門家や仲間、グループで話をすることで
思考は広がり、様々なアイデアや気づきを
もたらすということです。

現代は、独自性やその人らしさが
大切にされていますが、
実は、自分よりも知識や経験が豊かな人の
まねをする方が成功する可能性が
高くなると言われています。

模倣して得たものをもとに
それをさらに発展させれば
よりよいものを生み出す可能性があるのです。

私が主催している
ホリスティックコミュニケーション
実践セミナーも、
最初は模倣からスタートしました。

つまり、同じようなことをしている人の
セミナーに参加し、
そのスタイルややり方を取り入れ
それに基づいて
セミナーを作っていきました。

また、仲間とともに考え、
議論することもとても重要です。

なぜならば、
脳は、考えたり行動したりする際、
自分一人でするのと、
人と交流を持ちながらするのとでは
脳の処理の仕方が異なるからです。

また、これはよく知られていることですが、
他人に教えることで
人はより深く学ぶことができます。

さらにグループやチームも
その人の思いや考え方に
大きな影響を与えます。

例えば、
忍耐強くやり抜くための意思は、
自分が大切に思っているグループのために
努力するときに強化されます。

また考えや気持ちをお互いに
率直に話し合うだけで、
グループの団結力やパフォーマンスが
向上することもわかっています。

このように、人とのつながりも、
思いや考えをより発展させるのに
大きな役割を果たしているのです。

以上、3回にわたり
アニー・マーフィー・ポール著、
「脳の外で考える」(ダイヤモンド社)
について話をさせて頂きました。

頭の中だけでなく、
体や環境、人とのつながりを通して
人はよりよく考えられるということが
おわかりいただけたでしょうか。