ブログ:心の治癒力なくして治療なし②

(前回から続く)
また、医者患者関係でも
安心感や信頼感が生まれれば、
心の治癒力が引き出され、
病気や症状の改善につながります。

例えば、鍼治療(実際には偽鍼を使用)で、
治療者が、温和で共感的かつ
丁寧な説明をしたグループと、
淡々とした最小限のかかわりしかも持たなかった
グループとでは、
総合的な満足度や症状の改善度において、
前者のほうが明らかによかったという
研究報告があります。

つまり、
薬や治療の効果だけではなく、
医療者や治療者、セラピストの接し方が
治療効果に大きな影響を
与えるということです。

だからこそ、
患者さんとの関係性は重要であり、
医療者はいかに良好な関係性を作るかを
意識する必要があるのです。

さらに、
医者やセラピストの説明の仕方いかんで
治療効果が全く変わってしまうということも
いくつかの研究からわかっています。

気管支喘息発作に対しては
気管支拡張剤の吸入をすることで
症状が改善しますが、
逆に気管支収縮剤を吸入したら
当然、症状は悪化します。

例えば、喘息発作を起こしている患者さんに
気管支拡張剤を吸入してもらうさい、
「これは気管支拡張剤です」と言うのと、
「これは気管支収縮剤です」と言うのとでは
後者の場合は前者に比べ、
呼吸困難感の改善度が半分くらいに
低下してしまうのです。

実際にはどちらも同じ
気管支拡張剤を吸入しているのですが、
医者の説明によって、
効果が大きく左右されてしまうのです。

また、患者さんの意欲や期待感によって
治療効果が左右されることも
知られています。

治療意欲がなければ
当然、改善率は低くなります。

しかし、期待感に関しては
それが強ければ強いほど
改善率も高くなるというわけでは
ありません。

逆に、期待感が強すぎると、
かえって改善率が下がってしまうのです。

多分、期待が大きすぎると
それに見合った効果が認められない場合
失望してしまい、
効果がそれなりにあったとしても、
あまりそれを実感できないのではと
考えられます。

ですから、過度の期待を持たず、
ほどほどの期待感をもって
治療に臨むのが一番よいのです。

また治療の予防効果にも
患者さんの取り組む姿勢が
薬そのものの効果を上回ることが
知られています。

例えばこんな研究があります。

心臓発作を起こしたことのある患者さんに
予防効果のある本当の薬か、
予防効果の全くないプラシーボかを与え、
どちらも「これは予防薬です」と説明して、
定期的に飲んでもらいます。

患者さんの中には、
毎日しっかり薬を飲む患者さんもいれば
ときどき忘れる患者さんもいますが、
これは「薬をきちっと飲むべき」という
意識がちゃんとあるか否かに左右されます。

ここで面白いのは、
その後1年間における死亡率です。

なんと、毎日ちゃんと
プラシーボを飲んだ人の死亡率は、
時々忘れながらも本当の予防薬を
飲んだ人の半分以下だったのです。

つまり、本当の予防薬を
中途半端に飲むよりも、
全く効果のないプラシーボを
きちっと飲んだ患者さんの方が
予防効果があったということです。

このような研究からも、
意欲や思いという心の治癒力の側面が
予防効果にも大きな影響を与えていることが
わかります。

今回の講演の最後は、
治療者やセラピストの先入観が
患者さんの治療効果を左右するという
研究データを紹介しました。

例えば、薬を処方する場合、
あまり効かないだろうなと思って出す場合と
これは効くかもしれないと思って
出す場合とでは、
たとえ同じ薬を出したとしても、
効果が異なるという研究があります。

このことから、
治療者の無意識レベルの思いが、
雰囲気や態度、言動を通して、
患者さんに伝わってしまい、
それが治療効果にも反映されて
しまうことがわかります。

いかに、治療者の患者さんに対する思いが
大切かがよくわかります。

このように、治療をする場合、
薬や治療そのものに勝るとも劣らず、
心の治癒力が重要になってくるのです。

その心の治癒力に影響を及ぼすのが、
治療者やセラピストの態度や説明の仕方、
患者さんやクライエントが抱く
安心感や信頼感、期待感、意欲、
さらには治療者の先入観などです。

ですから、治療を考える場合、
薬や治療法のみならず、
患者さんの心の治癒力をいかに高め、
活性化するかという視点も
とても重要になってくるのです。

その意味で、
「心の治癒力なくして治療なし」なのです。

この連続講演会の2回目
12月18日(日)に京都でやります。
(後日視聴も可能です)。

1回目の講演も視聴することも可能ですので
興味のある方は
是非、聴いてみて下さい。

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