ブログ:あと、どれくらい生きられるんでしょうか?

緩和ケア外来に通院する患者さんや
入院中の患者さんは、
ほとんどすべてが
末期がんの患者さんです。

私の病院の場合、
緩和ケア病棟に入院した患者さんの
半分は2週間以内に亡くなり、
4分の3は1か月以内に亡くなります。

もちろん、少し落ち着いて
いったんは退院される患者さんもいますが、
いずれ再入院となることが多く、
最後は、当然ですが亡くなります。

一方、外来通院している患者さんは
まだ通院できるレベルですから、
数か月くらいは頑張れるだろう人は
たくさんいます。

そうは言っても
末期がんの患者さんですから、
近い将来、
やはり最後を迎えることになります。

もっとも、
口腔がんの肺転移の患者さんで
7年以上も元気に
外来通院していたという例外的な人も
ときにはいますが…

そのような、信じがたい患者さんも
いないではないですが、
ほとんどの患者さんは、
遅かれ早かれ亡くなります。

そんな患者さんの多くが
私にたずねる質問があります。

それが、
「あと、どれくらいでしょうか?」
という質問です。

これに答えられる医者はいません。
人の命がいつ終わるかなど、
誰にもわからないのですから。

ただし、状態が悪くなると
ある程度の察しはつきます。

末期がんと診断された患者さんでも
しばらくは今まで通りの生活が
できるのが普通です。

そのうち、食事量が少しずつ減り、
からだのだるさも増してきます。

そうなれば、あまり動かなくなり
横になっていることも多くなるため、
より一層、体力が落ちてきます。

食事が入らなくなるにつれ、
次第に衰弱していき、
最後は寝たきりになり、
少しくらいの水分は飲めても、
食事も全く入らなくなります。

当然、その結果として死が訪れます。
そうやって人は亡くなっていくのです。

末期がんと診断されてしばらくの間は、
徐々に悪くなっていくという印象ですが、
最後の一か月は急速に悪くなります。

多くの患者さんは、
最後の一か月は週毎に悪くなり、
最後の一週間は
日毎に悪くなるというイメージです。

ですから、多くの家族は
最後の一か月、一週間の急激な変化に
気持ちがついていかず、
こんなに早く亡くなるなんて
思いませんでしたという人が
結構います。

それくらい最後は、
特に最後の一週間は
死に向かって急速に悪くなります。

そんな過程を経て人は亡くなるので、
食事がだんだんと食べられなくなり、
それが全く入らなくなると、
その後、1~2週間で
亡くなるケースがほとんどです。

ただし、点滴をしていたりすると
その期間は多少長くなりますが、
それでも数週間といったところです。

点滴は栄養だと思っている人が
多いのですが、
実際はほとんどが水です。

ですから、点滴を続けると
どんどんむくんできますし、
患者さんよっては胸水や腹水が増えたり、
痰がふえて、常にゼロゼロした状態になり
苦痛を増やすことにもなりかねません。

そのため、緩和ケア病棟では
患者さんを苦しめないためにも
基本的に点滴はしません。

ですから、患者さんに
「あと、どれくらいですか?」と
聞かれた場合は、
「食事が全く食べられなくなったら
1~2週間くらいというのが普通です」と、
伝えるようにしています。

このようなことをたずねてくる患者さんは、
まだ、多少なりとも食事が食べられており、
余裕のある患者さんである場合が
ほとんどです。

このような説明をしておくと、
いずれ訪れる死に対して、
心の準備をしておいてもらうことができ、
いざ、食事ができなくなってくると
自ずと最後が近づいてきたことを
悟ってもらえるのです。

もちろん、
そんなことを聞きたくない患者さんは
「いつまで?」などとは聞いてきません。

でも、多くの患者さんは
状態が悪くなるにつれ
食事が全く食べられなくなります。

それに伴い、体のだるさも増し、
もうそろそろ死ぬんだろうなと、
感じるようです。

もっとも、その頃になると、
しんどさの方が強くなってくるため、
早く逝かせてください!と
懇願されることも少なくありません。

そうかと言って、注射一本で
逝かせるなどということはできません。
そんなことをしたら殺人罪に問われます。

でも、薬を使って
ウトウトしてもらう時間を
長くすることはできます。

人は、意識がはっきりしているときは
苦痛を感じますが、
寝ているときやウトウトしているときは
その苦しさから解放されます。

そんな朦朧とした状態に
自然となっていく患者さんも多いのですが、
逝かせてほしいと懇願されたりした場合は、
薬でそのような状態を作ります。

当然、その延長線上には
本当の昏睡に陥るときが来ますし、
そうなれば、あとはそのまま
最後を迎えることになります。

最後のときに向かっていく、
末期がんの多くの患者さんに対しては、
このようにしてかかわっているのです。

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