病院で検査をした場合、
当然、その結果は
患者さんや家族に伝えます。

がんが見つかった場合などでも、
今は、本人に告知するのが
原則となっています。

80歳、90歳のお年寄りで
認知症があるような人が別ですが、
普通の人であれば、
検査でがんが見つかれば当然告知し、
そのうえで必要な治療の説明を
することになります。

では、検査をした結果、
治療がすでに困難である
末期がんが見つかった場合は、
どのような説明をするのでしょうか。

がんセンターや大学病院の場合、
末期がんであることをはっきり伝え、
もう治療はできないので、
あとは緩和ケアに行ってくださいと言われ、
あっさりと切られることがしばしばです。

そのため、見捨てられたと思って
落ち込む患者さんもたくさんいます。

そんな、絶望に打ちひしがれた患者さんが
緩和ケアの外来にはよく来ます。

酷な話ではありますが、
末期がんが見つかってしまった場合は、
誰かがどこかでその事実を
伝える必要はあるので
仕方ありません。

もっとも、多少なりとも
希望や可能性を残した言い方を
してもよいのではとも思うのですが…

ただ、こればかりは、
主治医の、考えやコミュニケーション能力に
かかっているところが大きいので、
よい医者に当たることを
祈るほかありません。

もっとも、末期がんと言ってもいろいろで、
がんの種類やその人の生命力によっては、
何の治療をすることもなく、
一年以上、ごく普通の生活をしながら
生き続けられる人も少なからずいます。

このように、
長い間、状態が落ち着いている場合、
現状把握の目的で
時々はCTなどの検査を
するべきでしょうか?

私は、原則として
するべきではないと思っています。

もちろん、患者や家族から、
今、どんな状態なのかを知りたいので
検査をしてほしいと言わる場合もあります。

その場合は、以下のような説明をして
検査をすることは
あまりお勧めしませんと伝えます。

末期がんの患者さんは、
数か月もすれば
目で見てわかる程度に
がんが大きくなっているのが普通です。

ですから、検査後にする説明では、
以前よりがんが大きくなっていますとか、
新たに肝臓や肺にも転移が出現しました、
といった悪い事実を知らせるだけの説明を
することになります。

悪い結果を説明する可能性が高いのに、
それをわかっていて
わざわざ新たに検査をするというのは
あえて希望を失い、
より落ち込むことを
選択しているようなものです。

それよりも、
落ち着いているのであれば検査はせず、
もしかしたら進行していなかもしれない、
逆に小さくなっているかもしれないと、
期待感を持ち続けているほうが
よいのではないでしょうか。

そんな話をすると、
多くの患者さんや家族は、
ならば、もう少しこのまま
様子を見ますと言います。

もちろん、
進行していることがわかってもいいから、
現状をしっかりと把握しておきたいので
検査をしてほしいと
言われる場合もあります。

その場合は当然、検査をしますし、
結果も正直に伝えます。

それが患者さんの意志なのですから、
それはそれで全く問題ありません。

ただ、時々問題になるのは医者の方です。

医者は患者さん以上に、
むやみやたらと検査を
したがる傾向にあります。

治療中の患者さんに対しては
定期的な検査をすることは必要でしょうが、
末期がんの患者さんは
上記の理由から、
本人が強く希望しない限り、
余計な検査はしない方がよいのです。

しかし医者は、
自分が現状を知りたいという思いから、
患者さんが希望もしないのに、
とりあえず
CTを撮っておきましょうと言って、
勝手に検査をしてしまうのです。

その結果、
聞きたくもないのに、
さらにがんが広がっているといった
説明を聞かされるはめになります。

緩和ケア医の岸本寛史先生は、
このような、患者さんの思いに配慮せず
医者の常識は正しいと言わんばかりに、
当たり前のように説明してしまうことを
「正しい説明という暴力」と言っています。

患者さんは、病状が悪化してきたら、
悪くなってきていることは、
いやでもわかります。

ですから、検査をして
ダメ押しをするようなことは
できる限り避けたいのです。

少なくとも 患者さんに対して、
「正しい説明という暴力」だけは
ふるいたくないものです。