私が医者になった30年前は
何かにつけて、
製薬会社から接待されたり
お金をもらったりする機会が
結構ありました。

研究会に行けば、
豪華な立食パーティーがあり、
タクシーチケットはくれるし、
必要ならホテルも用意してくれます。

場合によっては、
二次会と称して
高級なバーやスナックにも
連れて行ってもらったこともあります。

もちろんすべて製薬会社もちです。

さらに、
新薬の治験データの発表会となれば、
それに携わった多くの医者が
高級ホテルに集められ、
各々に「ご意見料」という名目で、
7~10万円程度のお金がもらえました。

その後、このような
医者と製薬会社の癒着が表面化し、
露骨な接待やお金のばらまきが
できなくなりました。

もちろん、そうは言いながらも
製薬会社がバックアップする学会や研究会で
講演や座長をしたりすれば、
当然、謝礼等はもらえます。

当たり前の話ですが、
製薬会社にとっては、
そのような講演は新薬の宣伝を兼ねており、
できるだけ多くの医者に
薬を処方してもうことが目的です。

製薬会社もひとつの企業であり、
できるだけ薬を売り、
できるだけ利益を上げないことには
組織運営はやっていけません。

ですから、
社会ルールや法律を守るかぎり、
医者をうまく利用して宣伝することは
何の問題もないことです。

ただし、このような接待やお金が絡むと
医者も便宜を図らざるをえなくなるのは
政治家と一緒です。

これは何も特殊なことではなく、
どこの企業でもやっていることであり、
相手を味方につけるための
ごく一般的な戦略のひとつです。

先日、島集徹著、
「医療ムラの不都合な真実」(宝島社新書)
を読みました。

医者と製薬会社との癒着に関しては
私自身も経験的に
わかっているつもりでしたが、
その予想をはるかに超える現実が
あることに驚きました。

例えば、学会での発表や
医学雑誌に載せる論文ですが、
その作成のすべてを
製薬会社に雇われたプロのライターが
書いているというのも
珍しくないというのです。

実際、「悪の製薬」(青土社)には、
以下のようなことが書かれています。

「デンマークの倫理委員会で承認された
臨床試験のうち、
製薬会社の資金提供で行われた
論文を調べたところ、
75%の事例でゴーストライターによる
代作の証拠が見つかりました」

確かに私も以前、
「講演スライドはすべて
当社で用意しますから、
先生には一切お手数はおかけしません」
などと、言われたことがあるのを
思い出しました。

また、様々な名目で
製薬会社から医者個人や、
大学医学部やその附属病院などにも
多額のお金が支払われたり、
寄付されたりしています。

その情報は
マネーデータベース「製薬会社と医師」で
見ることができます。
https://db.tansajp.org/

これを見ると、
どの製薬会社がどの病院や医師に
いくら支払っているのかが
すべてわかります。

私も自分の名前で検索すると
ちゃんと出てきました。

私がどこからいくらもらっているか
興味のある方は調べてみて下さい。

これを見ると、
2018年の支払金額の1位は
小野薬品工業の109億円で、
2位が第一三共の79億円、
3位が中外製薬の69億円と続きます。

このデータベースに載っている
80社の合計は1407億円になり、
このお金が製薬会社から
大学病院などに流れているのです。

ただ、実際問題として
医学部や大学病院は
製薬会社からのお金がないと
研究や運営がかなり厳しいのも事実です。

そのため、医者個人に支払われる
講演料などとは別に、
臨床治験費や研究費、奨学寄附金として
医学部や病院に支払われています。

当然、その見返りとして
それなりの便宜を図るであろうことは
想像に難くありません。

こうして製薬会社は、
医学部の教授といった
それぞれの分野で影響力のある人と
持ちつ持たれつの関係を作ることで
大きな影響力を持つことになります。

このようなつながりがあるため、
製薬会社に都合のよい論文や発表を
量産していくことは十分可能です。

さらに問題となるのが、
ガイドラインの変更です。

ガイドラインとは
最新の研究結果を踏まえ、
最善と思われる治療法などを
まとめたものです。

これを基にして、
医者は治療をすることになります。

そのガイドラインを作成するのは
大学教授らをはじめとする
その分野で権威や影響力のある人たちです。

しかし、
もしも製薬会社に都合のよい論文を参考に、
製薬会社と持ちつ持たれつの関係にある
医者たちがガイドラインの作成に
携わるとしたならば、
一体、どのようなことが起こるのでしょうか。

簡単に言うと、
病気の基準値がどんどん下げられ、
病人をできるだけ増やし、
その分、薬をもっとたくさん
処方されるようになるのです。

例えば、高血圧の基準値を見てみましょう。

昔の高血圧の定義は
年齢+90というものであり、
年齢とともに基準値は
変動するものでした。

それが、1970年代になると
160/95mmHg以上が高血圧となり、
さらにそれが
140/90mmHg以上に下げられました。

そして2019年からは、75歳未満の人は
130/80mmHg未満であることが
目標となり、
正常血圧は120/80mmHg未満と
なったのです。

このように血圧の基準は
どんどん下げられますが、
それにより、
今まで正常と言われていた人が
突然、高血圧症という病気に
なってしまうのです。

その結果、現在、高血圧の患者は
全国で4,000万人以上いると言われており、
3人に1人が高血圧という状態です。

実は、高血圧に関しては
様々な研究結果が出されており、
今の基準が必ずしも正しいとは、
言えないというのが現実です。

医療の世界も裏側から見ると
表からは決して見えない
なかなか複雑で
ややこしい問題がいろいろとあるのです。