(前回の続き)
前回までの話のもとになった、
テクニック要因が15%といったデータですが、
その後、さらに研究、調査がなされ、
新たなデータが発表されました。

それが2014年に出版された
「On Becoming a Better Therapist」という
英語の本に載っています。
(翻訳本はありません)

それによると
今まで15%とされていたテクニック要因は
何と2%にまで下がっていました!
(以前このブログで1%言いましたが、
2%の間違いでした、すみません)

つまり、心理療法でよくなる98%は
技法はテクニックとは
別のものだということです。

多少の区分けの変更や、
明確には分けられない部分もあるのですが、
治療外要因といわれていたのは
40%から86%になっていました。

要するに、
心理療法でよくなるほとんどの要因が
実は、クライエントの持つ強さや環境、
生活要因によるものだというのです。

だからと言って、
セラピストや心理療法が
必要ないという意味ではありません。

クライエントのもつ強さを呼び起し、
それを最大限に活用してもらうためには、
セラピストの援助がある方が、
実現しやすいことは言うまでもありません。

また、前のデータで述べられていた
治療関係要因、期待感、テクニック以外にも
フィードバック効果や治療者要因というのも
つけ加わりました。

当然のことですが、
これらはすべて独立したものではなく、
多くの場合、オーバーラップしています。

いくつかある心理療法の要因の中で、
最も影響力があるのが
セラピスト要因の5~8%でした。

それと同等の影響力があったのが
治療関係要因の5~7%です。

ここで重要になってくるのが
「治療同盟」という考え方です。

これは心理学の専門用語であり、
セラピストとクライエントが協力し、
共同作業をしながら問題解決に
取り組んでいくという
考え方を言い表した言葉です。

当然、その過程の中で
信頼関係や治療関係も強くなってきます。

治療はあくまでも、
クライエントとの共同作業であり、
セラピストだけの力では
どうにもならないという考え方が
「治療同盟」の根底にはあるのです。

また、フィードバック効果も3~6%あり、
これも上の二つと同じように
治療に影響を与えることが
わかってきました。

フィードバックとは、
クライエントの考えや行動、結果に対して、
セラピストが適切な反応を返すことです。

これにより、
クライエントに新たな気づきが生まれたり、
より、やる気が出てきたりするのです。

実は、心療内科医として
患者さんを診ているときには、
フィードバックの重要性には
あまり気づいていませんでした。

ところが、
実践セミナーを開催するようになり、
参加者の前でデモンストレーションを
見せるようになってから、
その重要性に気づいたのです。

セミナーでは毎回、
参加者の一人に出て来てもらい、
実際の悩みや問題を語ってもらいます。

私は傾聴、反応、質問、提案などを通して、
眠っているクライエントの力を呼び覚まし、
問題の解決に向けての一歩を踏み出す
きっかけ作りをします。

最期に、クライエントが語ったことや
気づいたことについて
私が要約をして返します。

その際に、クライエントが
今言ったことや、気づいたりしたことが
いかに重要なのかを伝え、
同時に、それに関連して
ちょっとしたコメントや提案を
することもあります。

終了後にクライエントから
感想を聞かせてもらうのですが、
最後のフィードバックが
とてもよかったと言ってくれる人が
少なくありません。

最初は、単なる感想として
受け止めていましたが、
長年、やっているうちに、
ふと、気づいたのです。

もしかして、
フォードバックそのものが、
実はとても有効なセラピーに
なっているのではと。

では、なぜフィードバックが
有効なのでしょうか。

まず、今までモヤモヤしていた
クライエントの思いが
すっきりと整理されます。

そのうえで、
本人にプラスにやるようなコメントや
ちょっとした提案をしたりするのですが、
これらはあくまでも、
クライエントの思いや行動、気づきに
基づいたものです。

だからこそ、とても印象に残り、
今後の自分に
役立つという思いが持てるのです。

実際、そのフィードバックが、
クライエントのその後の生き方や考え方に
大きな影響をもたらしたというケースも
ありました。

そんな体験を何度もするうちに、
次第にフィードバックの重要性や有効性に
気づいたのです。

以上、4回にわたり、
「心理療法・その基礎なるもの」の内容や
それに関連する話をしてきました。

いろいろ話をしましたが、
私が一番言いたかったのは、
クライエントの問題を解決する力、
つまり「心の治癒力」の重要性です。

どんな心理療法やセラピーであれ、
クライエントの思いに
フィットしたかかわりをすれば、
自ずと「心の治癒力」が呼び覚まされ、
その力を発揮してくれるようになるのです。

ですから、
私はどのような心理療法を
使うのかということよりも、
セラピスト自身のかかわり方の方に
興味があります。

皆さんはいかがですか。