(前回からの続き)
次に、治療関係要因です。

これは医療では医者患者関係であり、
心理の世界では、
セラピスト・クライエント関係のことです。

治療関係がうまく構築されれば、
クライエントに安心感や信頼感が生まれ、
それが治療によい結果をもたらすことは
容易に理解できます。

傾聴力や共感力、反応力、
質問力があるセラピストの治療関係は
多くの場合、良好です。

もちろん、前回お話したような、
クライエントが重要だと思うことに
寄り添ったかかわりをすることでも
治療関係はよくなります。

一方で、このような
心理療法に関連するもの以外にも
セラピストの温かさや信頼感、共感力、
謙虚さ、自信、ユーモアといった要素も
治療関係要因には影響を与えます。

ただし、これらはセラピストの性格や
治療スタイルにも関係してくることなので、
すべてを身につけることは
なかなか難しいと思います。

心理療法を学ぶことも大切ですが、
それに勝るとも劣らず、
自分自身を磨いたり高めたりすることに
意識を向けることも実は大切なのです。

そのような努力が、
この治療関係要因を高めることにも
つながってきます。

なお、クライエントが
心理療法を受けていた時間の長さと
その効果には全く関係性がないことが
研究から明らかになっています。

長く心理療法を受けたからといって
よくなる率が高くなるわけでもなければ
その逆でもないということです。

要は、量より質ということです。

私が心療内科時代に治療した患者さんは、
平均して4.2回で終了していました。

中には1回で終了した人も
少なからずいます。

その経験からも、長ければいいとか
短ければダメということは
全く言えないということはよくわかります。

次に、期待感についてです。

これは、クライエントが
どれくらい心理療法に期待感を
持っているかという要因です。

これには、セラピストの知名度や肩書、
評判、著書があるか否かといったことが
大いに影響します。

そんなセラピストの行う心理療法なら、
きっとよくなるに違いないという期待感が
実際の問題解決に
プラスに働くということです。

私の場合も、
「医者」という肩書や
本を書いているという実績が
患者さんの期待感を高め、
それが治療効果に寄与した部分は
あったと思います。

さらに、
「癒しの儀式」も期待感を高めます。

純粋な心理療法の場合は
コミュニケーションのみで、
身体に触れることはありません。

一方で、アロマや整体、マッサージなどは
モノを使ったり、身体に触れたりします。

それらによる効果の有無は別として、
そのような行為自体には、
自ずと期待感も伴ってくるものです。

さらに、セラピストの信念や知識、自信なども
クライエントの期待感を高める
重要な要素になります。

セラピストの経験に裏打ちされた自信は、
雰囲気や態度から
自ずとにじみ出てくるものです。

クライエントはその雰囲気を感じ取り、
知らず知らずのうちに期待感を
高めるものです。

最期はテクニック、治療技法です。

これは様々な人が
様々なことを言っており、
私が知らない心理療法も
たくさんあります。

精神分析療法や行動療法のような
古典的な心理療法から、
「嫌われる勇気」で
有名になったアドラー心理学、
今主流の認知行動療法など様々です。

また、原因や悪い面に目を向けるのではなく、
健康面に目を向け、
それを強化することが大切だと考える
心理療法もあります

それが、人間性心理学や
トランスパーソナル心理学などです。

さらに、森田療法や内観療法といった
日本発祥の心理療法もあります。

私が実践し、セミナーで教えているのは
これらのどれとも異なる
ブリーフセラピーという心理療法です。

これ以外にもたくさんありますが、
大切なことは、
どの心理療法が
よいか悪いかということではなく、
クライエントにフィットする心理療法は
どれかということです。

クライエントが
精神分析療法に興味があるのであれば、
それによりよくなる率は高くなるでしょう。

その正反対の考え方である行動療法が
よいと思っているクライエントは
それでよりよくなる可能性が高くなります。

ただし、どの治療法であったとしても、
それそのものによる治療効果は
高々15%です。

多少クライエントの意のそぐわない
心理療法であったとしても、
治療外要因や治療関係、期待感といった要因が
よれなりに機能すれば、
それでよくなることは十分にあるのです。
(続く)