前回は、
まれにしか起こらないことを、
あたかもよく起こるかのような錯覚を
引き起こす言い方を私はよくしている、
ということについて書きました。

がんの進行が自然と止まったり、
がんが消えてしまったりするという
がんの自然寛解(かんかい)が
結構あるという話です。

実際の頻度は、
数百人~数十万人に一人と
研究者によってまちまちであり、
確かな数字はわかっていません。

なので、結構あるというのは
誇張した言い方であることは認めます。

ただし、末期がんの患者さんが
絶望感に打ちひしがれている場合、
少しでも希望や可能性を持ってもらえるよう、
このような言い方をすることは
高額なサプリメントなどを売ろうなどという
利己的な意図が裏にない限り、
私は許される言い方だと
勝手に思っています。

もっとも、このような
錯覚を引き起こす言い方は
世の中でも普通にされています。

この数年、話題を独占している
新型コロナウイルスの報道などが
まさにその典型です。

「危険」「死者数」「緊急事態」
「過去最高」といった言葉を駆使して、
新型コロナに感染したら
死ぬかもしれないという不安感を
煽り立てる報道が繰り返し
行われていました。

それが実際はどうなのかどうか、
数字を見て確認してみましょう。

昨年コロナで亡くなった
患者さんの数は約15,000人です。

志村けんが亡くなり、
大騒動になっていた令和2年の
コロナによる死者数は3,492人ですから、
実は昨年の4分の1以下です。

これは、例年のインフルエンザの死者数と
ほぼ同数です。

ただし、現在の統計データは、
がんや交通事故など
他の原因で亡くなった患者さんであっても、
PCR陽性であれば、
すべて「コロナ死」という扱いになります。

ですから、この数は
かなり水増しされており、
コロナ感染による直接の死者数は
実際にはもっと少ないと思われます。

ついでに言っておきますが
ワクチン接種後に亡くなった人は、
現在まで1,400人以上います。

しかし、ワクチン接種当日や
翌日に亡くなった人も含め、
そのほとんどは
因果関係は不明とされています。

コロナ死の統計は、
交通事故で亡くなっても
PCR陽性であれば「コロナ死」に
カウントされるのに、
ワクチン接種直後の死亡に関しては
因果関係不明という取扱いで
「ワクチン死」にはカウントされません。

「コロナ死」と「ワクチン死」の扱いが
都合によって使い分けられているのは
少々気になるところです。

ついでのついでに、もう一つ言っておくと、
テレビやニュースで報道されている
「感染者数」というのは
「PCR検査陽性者数」のことです。

PCR陽性の中には、
実際には感染していないのに陽性となる
「擬陽性」も含まれているので、
実際の感染者数は、
発表されている数よりも少なくなります。

このように、新型コロナに関しては
できるだけ数を多く見せる工夫が
随所でみられます。

でも、そのことについては、
今は目をつぶり、
話を死者数に戻します。

毎年、交通事故死や窒息死、溺死といった
不慮の事故は4万人弱いますが、
これは昨年の新型コロナによる死者数の
2.5倍に上ります。

令和3年の自殺者数は
速報値で20,830人でしたので、
これも新型コロナの死者数よりも
多くいます。

参考までに言いますが、
統計データは年が変わるとリセットされ、
新しい年のデータをゼロから取り始めます。

ところがなぜか新型コロナに関しては
感染者数も死者数も、
初めての感染者や死者が出た令和2年からの
累計数になっています。

なぜ、新型コロナだけが
令和2年、3年といったデータではなく、
累計データを出し続けているのか‥

ここでも、
数の多さを強調したいという意図が
あるような気がします。

こうしてみると、
他の原因による死者よりも、
いかに新型コロナによる
感染者数や死亡者数だけが特別扱いされ、
極端にクローズアップされているかが
よくわかります。

最近は、オミクロン株の感染拡大が
毎日のようにニュースで報道されています。

驚異的なスピードで
感染が広がっていることが
しばしばニュースで取り上げられました。

一方で、
重症者数や死者数は少なく、
一部では、通常のインフルエンザよりも
軽いと言われています。

実際、新型コロナが出てくる前年の
2019年のインフルエンザの
感染者数は約1,000万人で、
死者数は3,575人でした。

1月だけに限って言うならば、
その1か月間で1,685人が
インフルエンザで亡くなっています。

つまり、毎日50人以上の人が
インフルエンザで亡くなった
計算になります。

一方、新型コロナの死者数は、
1月27日現在で259人、
1日平均では9.6人です。

死者数で言えば、
例年のインフルエンザの7分の1と
圧倒的に少ないのです。

現在のオミクロン株で言うならば、
今年に入ってから1月27日現在までの
感染者数は70万人ですから、
感染者1万人に対して亡くなるのは
3~4人という計算になります。

これは最初に述べた
がんが自然寛解する人の数と
同じくらいだとも言えます。

要するに、私が言いたかったのは、
「末期がんが自然とよくなることがあります」
という話と、
「コロナに感染して亡くなる人もいます」
という話はどちらも、
まれにしか起こらない事実を取り上げ、
それがあたかもよく起こるかのような錯覚を
誘う言い方をしているということです。

たとえまれなことであっても、
そこに注目し、クローズアップすれば、
あたかもそれが、
よく起こるような出来事のように
錯覚させることができてしまうのです。

このような言い方をする背景には
私の場合は、
患者さんに「希望」をもってもらいたいという
思いがあるからです。

一方、報道の場合は、
「不安」を煽ることで
注意を喚起する意味もあるでしょうが、
できるだけ興味を引く言い方をすることで、
視聴率が稼ぎたいという意図が
あるように思います。

「希望」と「不安」、
どちらも錯覚により生じる感情です。

これに「利益」が絡むと、
さらに極端に走りがちになります。

私としては、死亡の危険性が
インフルエンザと同等以下であるならば、
あまり「不安」を煽り立てずに、
例年のインフルエンザ並みの報道に
とどめておいてもらいたいというのが
率直な気持ちです。

皆さんはいかがでしょうか。