先週は、「ウソをつく」について
いろいろと書きました。
今週は「大げさに言う」について書きます。

大げさに言うというのも
ウソと言えばウソなのですが、
ほんの少しの真実が
入っているという意味では
ウソではありません。

ものごとを大げさに言うことは
誰もが普通にしていることです。

「驚いて、心臓が止まるかと思った」
「今まで食べた料理の中で一番おいしい」
「あんたなんて、最低最悪!」

こんな表現は、
日常生活でもごく普通に使います。

ただ、誰が聞いても、
大げさに言っているだけだなと
思われるものがある一方で、
その表現が、
あたかも真実であるかのように
思ってしまうような言い方もあります。

実は、患者さんに対しては
後者の方をよく使います。

例えば、めったに起こらないことを、
あたかもよく起こるかのように
言うような場合です。

具体的な例をあげましょう。

末期がんの患者さんが
「もうよくはならないんでしょうか」などと
たずねてきた場合には、
以下のようなことを言います。

「よくならないとは言い切れません。
なぜならば、
全く治療をしなかったにもかかわらず、
がんの進行が止まってしまったり、
がんが消えてしまう人が
実際には結構いるからです」

こんなことを言ってあげると、
患者さんの目が急に輝き始めます。

もちろん、これはウソではありません。
いわゆる、「がんの自然寛解(かんかい)」
という現象です。

論文もたくさんありますし、
症例報告も何千とあります。

ただし、その頻度については、
はっきりした数字はわかっておらず、
数百人に一人という人もいれば
数十万人に一人くらいだという人もいます。

ちなみに、
私はすでに3,000人以上の
末期がんの患者さんを診ていますが、
そのような患者さんは10人程いますから、
300人に一人くらいの割合で
自然寛解の患者さんがいたことになります。

そのような事実を踏まえ、
私は患者さんに、
がんが自然とよくなる人も「結構」いますと、
やんわりと、大げさに言います。

誇張せずに言うとするならば、
「末期がんの患者さんのほとんどは
そのまま亡くなりますが、
ごくまれによくなる人もいます」
といった表現になります。

実際には、まれなことであったとしても、
そのような事実があるということを
伝えてあげるだけで、
患者さんには希望を持ってもらうことが
できるのです。

特に、ひとつふたつ、
実際にがんが消えてしまった
患者さんの話などをすると
かなりインパクトがあります。

このような言い方をする背景には、
まれにしか起こらないことを、
あたかもよく起こるかのような錯覚を
引き起こそうとする意図があります。

でも、悪意はありません。
患者さんに希望を持ってもらうためには
有用であり、
それは必要なことだと思っています。

特に、40代、50代の患者さんの場合はそうです。
高齢者からすると、
まだ若いこれらの人たちは
そう簡単に
死を受け入れられるものではありません。

ましてやそれが
20代、30代であれば
なおさらなおことです。

そんな患者さんは、
たとえ緩和ケアに紹介されても、
心の片隅には、
何とかならないものだろうかという思いを
持っている人は少なからずいます。

だからこそ、
このような言い方をあえてしてでも、
希望や可能性を
最後まで持ってもらえるのであれば、
私はそれでよいと思っています。

だからと言って、ここで
高価なサプリメントを勧めたりするのは
好みません。

ただ、患者さんや家族は、
高額のサプリメントを勧められ、
購入しているケースはよくあります。

その業者のほとんどは、
全くのウソを言っているわけでは
ないと思います。
(以前、でっちあげの症例を本に載せ、
逮捕された例はありましたが)

自然寛解の例を見てもわかるように、
何もしなくても、
末期がんが治るケースがあるのですから、
どんなサプリメントや治療法でも、
その効果の有無とは別に、
自然と治るということは
ありえると思います。

ですから、
このような業者も私と同じように、
まれなことではあっても、
それが起こる可能性があると、
希望をもたらす言い方を
しているであろうことは
想像に難くありません。

ただ、私とその業者の大きな違いは、
その背景に、利益を得るという意図が
あるかないかだけです。

私の場合は当然ありません。

このような、
まれなことが、あたかもよく起こるような
そんな錯覚をさせる言い方は
世間でもよく耳にします。

その代表例が新型コロナの話です。
これについては次回お話します。