私は、プラシーボ効果(反応)や
ノーシーボ効果については
よく知っていましたが、
「逆プラシーボ効果」というのが
あるのを最近知りました。

この「逆プラシーボ効果」というのは
次のような研究からわかったものです。

不眠症の患者さんに対して、
「リラックスできる薬」と説明して
それを服用してもらった患者さんのグループと、
「目が冴える薬」だという説明をして
それを飲んだ患者さんのグループとでは、
どちらの方が、
眠りやすかったかを調べた研究です。

その際、使用された薬はどちらも
でんぷんの粉を
固めて作ったもの(プラシーボ)であり、
全く薬効はないものです。

プラシーボは、それを飲むことで
安心感や期待感、ときに不安感が生じ、
それにより様々な反応が生じるということは
よく知られています。

通常は「リラックスできる薬」を
飲んだ患者さんは
安心感を持つため
プラシーボ効果が生じ、
早く眠りにつくと考えられます。

ところが、この研究では逆の結果がでました。
つまり、「目が冴える薬」を飲んだ人の方が、
普段よりも早く入眠できたのです。

一方、「リラックスできる薬」を飲んだ方は
反対に普段よりも入眠するまでの時間が
かかったというのです。

なぜこのようなことが起こったのでしょうか。

それは、目が冴える薬を飲んだ不眠症患者は
自分が眠れないのは、
「目が冴える薬をのんだからだ」と考え、
眠れない自分を責めたり
感情的になったりということが減り、
むしろリラックスできた結果、
普段よりも寝つきがよかったのではと
考えられました。

この現象は、
プラシーボ効果と逆の効果が生じるため、
「逆プラシーボ効果」と呼ぶのだそうです。

ただしこの研究は、
同じようなことを他の研究者がしても
うまくいかなかったという発表もあり、
「逆プラシーボ効果」が
本当に存在するのかどうかは
はっきりしていません。

しかし私は、説明の仕方や
対象者の性格いかんで
「逆プラシーボ効果」は十分に
起こりうると思っています。

なぜならば、心理療法では
このような逆説的なアプローチを
時々使うからです。

不眠症の患者さんは、
どうしても眠ろう、眠ろうとします。
しかし、この眠ろうという思いが
眠くなるのを
妨げているという側面があります。

一方、眠れなくてもいいと思えたり、
反対に眠らないでおこうと思うと
かえって眠くなってしまうのです。

なぜならば人は、
「眠る!」「眠ない!」という
自分が発する意識的なメッセージには
無意識に反発してしまうクセが
あるからです。

その無意識のクセを逆手に取り、
「眠らない!」と自分に言い聞かせながら、
布団の中で目をつむって横になっていれば
それでよいのです。

これは「眠ろう」という思いから
自分を解放するための方法のひとつです。

要するに、
「眠ろう」という思いが緩み、
こだわりがなくなれば、
人は自ずと眠ってしまうのです。

そのこだわりを緩めるための
ひとつの手段が「眠らない!」という
逆説的な言葉なのです。

もちろん、「眠れなくてもいいや」と、
開き直るというのも悪くはありません。

その方が、自然体に近いのでよいのですが、
眠れない人は、
「眠らなければ」というこだわりが強いため、
「眠れなくてもいい」などと開き直ることが
なかなかできないのです。

ですから、開き直るのをさらに一歩進めて
「眠らない!」の方が効果的なのです。

ただし、「眠らない」を
「起きておこう」とか
「目を覚ましておく」という
言葉に変えてはいけません。

なぜならば「眠らない」という
否定形の言葉だからこそ意味があるのです。

人は、「眠らない」という言葉を
イメージしようとすると、
「眠る」という言葉をイメージし、
それを否定することになります。

つまり、「眠る」というメッセージが
無意識レベルには入るため、
現実には、自ずと眠る方に
傾いてしまうというわけです。

しかし、「起きておく」とか
「目を覚ましておく」は文字通り、
起きている方のイメージが
出てきてしまうため、
自然の眠りを妨げる可能性があるのです。

人は、言葉通りに
受けとめるとは限りません。
このような、無意識レベルで生じる
知らず知らずのメッセージの方が、
その人の行動に影響を及ぼすのです。

この方法は、
不眠症の患者さんのすべてに
通用するわけではありませんが、
眠れない時は一度試してみる価値は
あるのではないでしょうか。