ブログ:「感情」を考える①

私は今まで感情に関しては
あまり深く考えたことがありませんでした。

もちろん、前回のブログでも紹介したように
感情をうまく利用したアプローチは
今までもしばしばしていました。

しかし、感情そのものについて
じっくり掘り下げて考えるということは
したことがなかったのです。

ところがつい最近、
源河亨著、「感情の哲学入門講義」
(慶応義塾大学出版会)という本を読み、
感情に対する認識を
大いに深めることができました。

感情とは何かという話ですが、
これはなかなか難しいものがありますが、
現在は二つの側面から
感情は定義されています。

それは、思考に関わる側面と
身体反応が関わる側面の二つです。
もう少し具体的に説明しましょう。

例えばニュースで見知った
凶悪殺人犯に偶然出くわしたとき、
恐怖の感情がわいてきますが、
この場合、捕まえられたらどうしようとか、
殺されるかもしれないと思うから、
恐怖心が出てきます。

ところがその人が
凶悪殺人犯だということを知らなければ
そのような恐怖心は出てきません。

つまり、怖いという感情が生まれるのは、
対象となるものを見て、
それに対する価値判断をするという思考が
関与しているからです。

嬉しい、楽しいという
ポジティブな感情も同様です。

父の日に子供からプレゼントをもらうと
嬉しいという感情がわいてきます。

これは子供たちが自分のことを
大切にしてくれていると理解できるので、
その結果、嬉しさが生じるのです。
(逆にスルーされると
少々落ち込みます~私の場合)

このように、
感情は、価値判断という
思考に伴って
生まれてくるものだという見方が
ひとつあります。

もう一つの見方は、
感情は身体反応の結果として
生まれるものだという視点です。

みなさんは、
「悲しいから泣くのではない、
泣くから悲しいのだ」というフレーズを
聞いたことがあると思います。

常識的には「悲しいから泣く」ですが、
この考え方によると、
涙が出る、もしくは
涙が出る準備という身体反応が先ず起こり、
その反応に伴い、
悲しいという感情が生まれるというのです。

怒りや恐怖などの感情が生じたとき、
呼吸は浅くなりますが、
その際に深呼吸をすると
少し気持ちが落ち着いてくるのは
この考え方に基づいた対処法です。

ただし、身体反応が同じでも
それに対する解釈が異なることにより
生じる感情も
違ってくることも知られています。

そのことを如実に表しているのが
「吊り橋効果」です。
これはとても面白い実験により
立証された効果です。

どのような実験かというと、
通りすがりの男性が
吊り橋を渡っている途中で
サクラのインタビュアーが近づき、
心理テストへの協力を依頼します。

それが終了した後、
インタビュアーは、
結果を詳しく聞きたければ
後で電話をくださいと伝え、
名前と電話番号を書いたメモを手渡します。

それを魅力的な女性インタビュアーと
男性インタビュアーがそれぞれ行い、
さらに同じことを
吊り橋の場合と固定した橋の場合でも
調べらました。

この研究の狙いは、
吊り橋を渡っている際のドキドキを
インタビュアーへの恋愛感情によるドキドキと
勘違いするのかを調べるものでした。

もし勘違いしたならば、
後で女性インタビュアーに電話する人数が
高くなるであろうという予想したのです。

結果は予想通り、
吊り橋と固定橋とで比較した場合、
女性インタビュアーへ電話をした人数は、
吊り橋の方が固定橋よりも
統計的に多かったのです。

一方、男性インタビューアーの場合は、
吊り橋であろうが固定橋であろうが
差はありませんでした。

これらのことから、
男性は吊り橋の恐怖からくるドキドキを
女性への恋愛感情と錯覚するということが
分かったのです。

この吊り橋効果の実験からわかることは、
ドキドキという身体反応が起きたとしても、
それをどう解釈するかの違いにより、
恐怖心になったり、
恋愛感情になったりするということです。

つまり、身体反応だけで
感情が決まるわけではなく、
そこには評価や解釈といった
思考による価値判断の影響も
あるということです。

今まで述べたことを総合すると
感情は頭で理解、解釈した結果生じる側面と
身体反応によって生じるという側面があり、
その両者が関与しているということです。

ですから、
感情をコントロールすることを考える場合、
考え方が変わるようなアプローチは
もちろんのこと、
身体反応に変化を及ぼすようなアプローチも
有効だということです。

身体的アプローチに
あまり目を向けていなかった私にとっては、
このことは大きな学びになりました。

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