いよいよ今日は旅行の最終日です。
本日の予定は、八甲田山麓のドライブ、
その後、十和田市にある現代美術館に寄り、
そのまま三沢空港に行き、
帰路につくという流れです。

朝はいつものように4時半に起き、
今度は一人で、
奥入瀬渓流の散策を楽しみました。

先日と同様、石ヶ戸の休憩所まで車で行き、
そこから歩いたのですが、
先日は気づかなかった掲示板が
目に入りました。

なんと「クマが出るので注意」と
書いてあるではないですか。

鬱蒼とした木々の間を流れる渓流を眺めながら
遊歩道を歩いていましたが、
あんな「注意」を見たせいで、
クマのことが頭にちらつき、
自然を満喫するという気分には
今ひとつなれませんでした。

それでも1時間半ほどの散策を無事終え
焼山荘に戻りました。

朝食も無駄な会話は一切なく、
とても静かな時間でした。

朝8時頃には、
再びあのうるさい車に乗り込み、
焼山荘を後にしました。

ガイドブックの案内通りに、
先ずは蔦(つた)の七沼に行きました。

蔦温泉旅館の駐車場に車をとめ、
そこから歩いて行きましたが、
7つの沼を全部回ると1時間半もかかるので、
ここは一番大きく、
一番近くにある蔦沼だけを見ることにしました。

往復15分程度の道のりでしたが、
行きはあんなに重そうだった
嫁さんの足取りが
車に戻るとなると、とても軽やかになり、
スタスタ歩くではないですか。
気持ちは行動によく表れるものですね。

その後も水連沼、地獄沼を見て回り、
次に城ヶ倉大橋を訪れました。

この橋は全長360メートル、
高さ122メートルで、
橋から見える渓谷の眺めは壮大で
まさに絶景です。

橋の手前で車を停め、
雄大な八甲田山系を眺めながら
橋の中間地点まで歩いていきました。

その絶景に思わず、
「ほら見てごらん!すごいよ!」と
声を出してしまいました。

ふと、後ろを振り向くと‥
一緒に歩いて来ていたと思っていた嫁さんは
なんと、ついて来きてはおらず、
遠く彼方にみえる橋の手前のところ
いるではないですか。

ここでもまた、
いけない、人の好みは自由だ、
私の感動を押し付けてはいけないと、
自分を強く戒めました。

私はそのまま橋を渡り切り、
今度は橋の反対側を歩き、
巨大なブロッコリーのように見える
渓谷の山々の風景を楽しみながら
橋を戻ってきました。

途中、手すりから下をのぞくと
122メートルの高さを実感、
足がすくむのがわかりました。

私は、ここから唾を落としたら
下までどれくらいの時間がかかるか
実験してみたいという衝動にかられてしまい、
人が見ていないのを確認すると、
唾を落としてみました。

ところが、少々風が吹いていたこともあり、
私の口から落ちた唾の塊は、
10センチ程下にあった二番目の手すりに
ペチャっとついてしまいました。

落下距離122メートルの予定が
10センチで終わるなんて
とうてい納得できませんでしたが、
そんなことはしてはダメだという
神様の思し召しだと思い、
この実験はここで諦めることにしました。

そんなことをしながら
ゆっくり歩いていたので、
嫁さんもよほど退屈だったのか、
橋の真ん中に向かって、
少し歩いてくるではないですか。

まあ、一人でゆっくり
歩きたかったんでしょう。
それもよしとしました。

その後さらに車を走らせ、
八甲田ロープ―ウェーに到着。

ここも例外にもれず、
閑散としていましたが、
ロープ―ウェーは101名の定員で
乗客は私たちを含め11名いたので
まだましな方です。
遊覧船は501名に対して7名でしたから。

ここから標高1,324メートルの
田茂萢岳(たもやちだけ)山頂まで登り、
そこでトレッキングを楽しみました。

30分コースと60分コースがありましたが、
私が60分コースに行こうとすると、
「え~そっち?」と、
とても嫌そうな顔をされましたが、
私は最大限に楽しみたかったので
60分コースを歩くことに決めました。

途中、まだ雪が残っているところがあり、
遊歩道も3か所ばかり、雪で埋もれて
見えないところがありました。

雪で足を滑らせたら、
そのまま滑落して死んでしまいそうな恐怖が
ありましたが、
そこは慎重に積雪の上を歩き、
雄大な八甲田山系の山々を眺めながら
トレッキングを楽しみました。

その後、ロープ―ウェーで山麓駅まで降り、
再び車を走らせました。

途中、休憩所があったので、
そこで一休み。

そこには、私財を投じて、
十和田湖でのヒメマスの養殖を成功させた
和井内貞行の話や、
八甲田山の雪中行軍で
210名中199人が亡くなったことなど、
興味深い話がパネルで紹介されていました。

「なつかしいなあ、和井内貞行なんて、
確か小学校の教科書に載っていたよなあ」
「八甲田山の映画見た見た!
いや~あれは悲惨だったよなあ~」

私は結構こういうのは好きなので、
嫁さんに(決して強要するような言い方ではなく)、
あくまでもさりげなく話しかけたのですが、
「ふ~ん」ならまだしも、やはり無視でした。

ここに来て私は悟りました。
「嫁さんの辞書には知的好奇心という文字はない」
ということを。

旅行のウキウキ感は
日に日に小さくなり、
今や風前の灯火です。

それでも最後の力を振り絞り、
頑張って車を走らせました。

途中、予定になかった
田代平(たしろたい)湿原にも
寄ろうということになり、
嫁さんが地図とカーナビを頼りに
道を教えてくれました。

道路標識には、
田代平湿原は左だと矢印が出ていたのですが、
嫁さんは、まっすぐに行けばいいと言い張ります。

でも、長年の経験から、
私は道路標識を信じることにしました。

すると、ちゃんと目的地に着くことができました。
そこに至っても嫁さんは、
「だってこの地図を見たら、もう一本先の道だし」
などと言っていましたが、
今度は私がスルーしました。

結婚当初からですが、
嫁さんの道案内はかなりの確率で間違うことを
経験的に学んでいたことが役立ちました。

田代平湿原は、結構広いのですが、
季節柄、あまり花などは咲いておらず、
単に湿原があるだけだったので、
30分程度歩いただけで
帰ってきてしまいました。

これで八甲田山麓のドライブはすべて終了です。
約4時間半の旅でした。

そこから再び車を飛ばし、
1時間ほどで十和田市にある現代美術館に行きました。

ここはガイドブックでも紹介されており、
錯覚を使った作品などが
たくさんあるのかなと思っており
とても楽しみにしていたのですが、
実際はそうではなく、
私にはあまり面白いとは思えませんでした。

すでに14時を過ぎていましたが、
ビールも飲みたかったので
そのまま三沢空港まで行き、
レンタカーを返して、
空港のレストランで昼食をとることにしました。

15時には空港レストランに到着、
17時のフライトまで2時間あるので
ゆっくり飲めるなと思うと、
萎みかけたウキウキ気分が
再び膨れてくるのが感じられました。

入口に「生ビールはありません」という
貼り紙があったので、
一瞬ドキッとしましたが、
瓶ビールや他のお酒はあるとのことで
ホッとしました。

ホタテのフライやバラ焼き、
ソーセージ、枝豆などを注文、
瓶ビールは黒ラベルと
スーパードライしかないというので、
あまり飲まないスーパードライを
注文してみました。

嫁さんと乾杯し、ビールを飲みながら、
「やっぱりスーパードライって、
スーパードライっていう感じだから
スーパードライだよね」と言ったら、
「全然、意味がわからないし」と言いながらも、
今日、初めてちょっと笑ってくれました、鼻で。

お客さんは誰もいなかったので、
遠慮なく窓際の席に座って、
飛行機が飛び立つのを見ていました。

もっとも、待っている間に飛び立った旅客機は
1機だけでしたが、
三沢空港に隣接したところに
航空自衛隊三沢基地や米軍基地もあるため
そこからの飛行機が結構飛んでおり、
それを見ているだけでも楽しめました。

変な格好の飛行機もあり、
「あの飛行機、頭の上にスノーボード載せているよ」
と言いましたが、
これは完璧に無視されました。

ビール3本、日本酒1合を飲んで結構食べて、
気分もだいぶ良くなったところで16時30分、
そのままチェックインをしました。

行きの飛行機よりは人数が多い気がしましたが
それとて席は結構空いてしました。

予定より20分も早く伊丹空港に着いたおかげで、
空港バス、新幹線、在来線、タクシーと
すべてでほとんど待ちしで乗り継ぐことができ、
三沢空港を17時に出発したにもかかわらず、
20時20分には自宅に戻っていました。

予定より1時間も早く帰れた計算です。
家に帰り、孫や子供に会うと、
嫁さんは、今までの静けさがウソのように一転、
大きな声で笑い、
あれこれ語り始めるではありませんか。

早速、秋田のホテルを出たところで
急に雨に降られた話などを
とても楽しげに子供らにしゃべっていました。

こんな満面の笑みや快活な笑いの、
せめて1万分の一でも
旅行中に見せてくれたらと思いながらも、
この場には
私はいてはいけないような気になり、
さっさと2階の寝室に上がり寝ました。

こうして3泊4日の青森の旅は終わりました。
コロナの影響の甚大さを痛感させられましたが、
その分、ゆったりと過ごせたのでよかったです。

それはそうと今年の旅は、
なんか私たち夫婦の
結婚生活の縮図を見ているような気がしました。

長い沈黙、かみ合わない会話、
すれ違う行動、かすりもしない趣味。

まあ、それでよいのではないでしょうか。
山あり谷あり、ときには嵐や台風も来ます。
恋と月は満ちれば欠けるものです。
人生、そんなもんです。

ということで、
今年の旅行の報告はこれで終わりです。

1週間、お付き合いいただき、
ありがとうございました。