前回は、コーチングと
私が教えている
ホリスティックコミュニケーションとの
考え方や質問の仕方が
かなり似通っているという話をしました。

今回は逆に、
宮越大樹さんがされているコーチングと
異なる点について話したいと思います。

この著者との最も違うと思った点は
目指すべきゴールの設定のところです。

ゴールを明確にすることは大切ですが、
その際、クライエントは
目の前の問題が解決された状態を
ゴールとする場合がほとんどです。

例えば、チーム内の人間関係が
よくないという問題に対して、
「人間関係がよくなればいい」という
目標を掲げがちです。

しかし、この本では、
それは単なる「現状の裏返し」であり、
本当に求めていることは、
その先にある、
自分軸(自分の人生の価値観)に基づいた
ものである必要があるというのです。

本当の目的とは、
例えば「ともにチャレンジする」といった
根底にある人生の価値観を
はっきりとさせることが必要だというのです。

もちろん、それは大切なのですが、
実際には、人生の価値観といったことは
そう簡単に出てくるものではありませんし、
はっきりしていない人の方が多いと思います。

ですから、私はそこまではこだわりません。
目の前の問題をとりあえず解決するだけで
先ずはよしと思っています。

人間関係が多少なりとも改善し、
少しでも仕事がやりやすくなれば
それはそれでよいのではないでしょうか。

そのような成功体験の積み重ねによって
次第に人生の方向性や自分の価値観が
見えてくるのであって、
最初から自分にとっての人生の価値観など
わからなくてもよいのです。

コーチングを受ける人は、
どちらかというとビジネスマンや
やる気のある人が多い気がします。

そうであれば当然、
将来は起業するといった
夢や希望を持っています。

その夢が大きければ大きい程、
自分の信念や価値観が
はっきりしている方がよいと思います。

しかし、私の場合は、
心身症の患者さんが相手だったので、
自分の価値観とか、未来の夢などといった
そんな大それたことに目を向ける人など
ほとんどいないというのが現実でした。

とにかく目の前にある、
家庭や職場でのストレスから逃げたい、
早く楽になりたいという患者さんの方が
圧倒的に多かった気がします。

そんな患者さんに対しては、
人生の価値観といった
大それたものを見つけることに
エネルギーを注ぐよりも、
先ずは目の前の問題を
どうしたら解決できるのか、
そちらの方にエネルギーを注ぐ方が
先決だと思っていました。

第一、私が見ていた患者さんはみんな
気力やエネルギーなどなかったので、
目の前の問題に対処するだけで精一杯であり、
理想を追い求めるといったレベルの人など
全くと言ってよい程いませんでした。

そのあたりの違いが、
考え方やアプローチの違いに
出てきているのではないかと思いました。

それともうひとつの大きな違いは
本書ではエンプティ・チェアの技法を
しばしば取り入れていたことです。

これは昔からある方法ですが、
対人関係、例えば親子関係や上司との関係などで
気持ちや考え方の違いが問題になる場合などには
とても有効です。

相手の立場に立って
ものごとを考えることが大切だとわかっていても
反感を持っている人、
例えば自分のことを
理解してくれない父親の気持ちになって
ものごとを考えるなんて普通はできません。

ところがこのエンプティ・チェアは、
それを可能にしてくれるのです。

通常は、椅子を二つ用意し、
ひとつには自分が座り、
もう一つの椅子には、
父親などが座っているとイメージして
話をすすめていきます。

最初は、自分が目の前の父親に文句を言い、
次に、父親の座っている椅子に自分が座り
今度は父親の立場で、
自分に対して話をするのです。

実際に、二つの椅子を
行ったり来たりするという行動をすることで
視点が変わり、
実際、父親の視点で話をすることになるので、
反感を感じていた父親を
理解ができるようになったり、
反感の気持ちが少なくなったりするのです。

ただ、いかにも心理療法っぽいやり方であり、
セラピストの前でやるのは少々気恥ずかしく、
また、多少の強引さを感じるところもあり、
私はあまり好きではなかったので
セミナーには取り入れていません。

このような多少の違いはあるにせよ、
基本的な考え方は一緒であり、
クライエントに接する質問の仕方も
ほぼ一緒です。

特に今行っているセミナーでは、
患者さんではなく、
一般の人を対象としているので、
やっていることはコーチングだと言っても
過言ではありません。

そうであれば、
私も十分にコーチングを
教えることができるということになります。

今、ブリーフセラピーとコーチングを融合した
ブリーフコーチングというのもあります。

この本を読んで、
今後は、私のセミナーを
もう少し発展させた形のものにしても
いいかなという気になってきました。