ACTとは近年注目されている心理療法のひとつで、
アクセプタンス&コミットメント・セラピーの略で
頭文字を取ったもので「アクト」と呼んでいます。

ACTという言葉を知ったのは10年くらい前で、
すでに心療内科医をやめ
緩和ケア医になっていたときですが、
興味を惹かれたので何冊か関連本は読みました。

そこで受けた印象は、
森田療法と似ているなあというものでした。
森田療法は日本発祥の心理療法で
「あるがまま」がキーワードです。

つまり、不安や緊張、恐れといった感情を
何とかしようとするのではなく、
その感情や思いを「あるがまま」に
受け止めることが治療につながるという
考え方の心理療法です。

ACTも同じ視点を持っています。
つまり「自分はダメな人間だ」という思考や、
不安や緊張といった感情をそのまま受けとめ、
それにうまく対処することで
自分を不快にし、
追い詰めようとする思考や感情の波を
上手にかわすことを基本としています。

従来の心理療法は、
不都合な思考や感情を
変えたりなくしたりするためには
どうしたらよいかと考えます。

今、主流の心理療法である認知行動療法も
「自分は価値のない人間だ」といった思いの
不適切さに気づいてもらい、
それをどうやって
「自分だって価値がある」という思いに変えるか、
そこが中心になります。

私は以前から、
この考え方にはついていけませんでした。
なぜならば、少々強引だと感じていたからです。

逆に、自分を変えよう、前向きになろうと
思えば思うほど、その思いが足かせになり、
かえってうまくいかないのです。

そのため私のセミナーではよく、
「自分を変えようとしてはいけない、
変わるのを待てばそれでいい」と
言っています。

だからこそ、
自分の思いを無理に変えようとするのではなく、
また、それを肯定や否定もすることなく、
そのまま受け入れたらOKという
ACTの考え方には共感を覚えるのです。

ACTでは、そのための方法として
マインドフルネスの考え方や
脱フュージョンといったテクニックも
取り入れられています。

悩んでいる思いや感情を
そのまま受け入れただけでも
気持ち的にはだいぶ楽になるのですが、
一方で、それだけでは現実の問題は
全く解決しないこともしばしばです。

そこで大切になってくるのが行動です。
ACTでは、自分の人生にとって
価値あるものを見つけ、
それに向かって行動することを
セラピーのもう一つの軸に置いています。

そのための具体的な目標を定め、
それに対して「今」できることを
していけばそれでよいというわけです。

しかし、
人生の目的や価値とは何かと言われても、
なかなか明確になっている人なんかいません。

ビジネス本や成功哲学関連の本では
よく言われることですが、
私個人としては大切だと思いつつも、
そこまでしなくてもいいんじゃない、と、
思ってしまうところがあります。

なぜならば、
人生の価値や目的がはっきりしている人なんて
高々5%程度です。

ほとんどの人は、なんとなく生き、
何となく生活し、なんとなく楽しみ、
そして死んでいくのです。

つまり、これが人生の価値だといった、
明確なものがなくても、
まあ悪くない人生だったかなと思えるならば、
それはそれでよいのではないでしょうか。

逆に、こんな人生は嫌だ!
もっと自分らしく活き活きと生きたい!と
思っている人は、
自分の人生の価値や目的をある程度明確にし、
それに向かって目標を立てて、
突き進んでいくという姿勢は必要でしょう。

一方、私がやっている
ホリスティックコミュニケーション
(ホリコミ)では、
もっと身近なこと、
例えば、人間関係の問題や
もっとやせたいといった問題を扱います。

その問題解決に対する目標を明示し、
そこに向かうために今できる行動は何かを
探していきます。

「今」に焦点をあて、
行動を大切にするという意味では
ACTと同じですが、
目標に関しては人生の価値といった、
大それたことはあまり追求しません。

だからこそ、もう少し気楽に、
かつ身近なこととして
取り組めるのではないでしょうか。

なお、最初に述べた森田療法も、
私の実践していたブリーフセラピーも
今回のACTも、
すべて禅や東洋思想が背景にあります。

西洋は物事を分析し、原因を見つけ
それに対処するという考え方ですが、
東洋は、そのままを受け止め、
「今」できることをするという考え方です。

今はやりのマインドフルネスも同じです。
心理療法も時代を追うごとに、
西洋的な視点から東洋的な視点に
変わってきている印象があります。

実際には両者の視点とも必要ですが、
私としては、東洋の視点をベースに据え、
あとは必要に応じて西洋的な考え方を
取り入れるのがよいのではと思っています。