私が心療内科医時代に
治療として使っていた手段は
薬ではなく心理療法でした。

心理療法も数多くありますが、
その中でもブリーフセラピーという
心理療法を主に使っていました。

その後、心療内科医を離れ、
緩和ケア医になったものの、
やはり心理療法の面白さが忘れられず、
今でも機会があれば本を読んだり
勉強したりしています。

もっとも、今は心理療法を使って
患者さんの治療を直接しているわけではないので、
一抹の寂しさはあります。

その寂しさを埋めてくれるのが、
私が現在主宰している
ホリスティックコミュニケーション
実践セミナーです。

ここでは毎回、
参加者の一人に対して
デモンストレーションを行っています。

これは、参加者自身の
今持っている実際の悩みを語ってもらい、
それに対して私が対応するのを
リアルタイムで見てもらうというものです。

もちろん、
デモンストレーションという側面があるので、
参加者の皆さんにわかりやすいような流れを
意識していますが、
出される問題はすべて現実の悩みなので、
中にはなかなか難しいものもあります。

例えば、嫁姑問題や
職場での人間関係の問題など、
そう簡単に解決しそうにない問題も
しばしばあります。

デモンストレーションの時間は
30~40分なので、
どんなに難しい問題でも
それくらいの時間で、
とりあえず片をつける必要があります。

そのためには、
ちょっとしたコツや考え方があります。

先ず、ある程度の情報収集は必要ですが、
ここで事細かく話を聴いてしまうと、
それだけで時間がなくなってしまうので、
ここは必要最小限にとどめます。

また、この段階で
よく犯しがちな過ちがあります。
それは問題の原因を探そうとしてしまうことです。

何が嫁姑関係をこじらせている原因なのか、
どうして職場の人間関係が
うまくいかないのかといったように、
問題の原因を探そうとして、
「なぜ‥なんですか?」と聞いてしまうと
袋小路に入ってしまうことになります。

原因探しをし始めると、
あっという間に時間がなくなり、
かつ、問題は様々な要因が絡んでいるため
実は本当の原因など見つけられないのです。

かりに原因らしきもの、
例えば「相手に対する配慮が足りない」とか
「仕事に対する積極性がない」などが
問題の原因だったとしても、
そのような思いや態度は、
頭では理解できても、
実際にはそう簡単には変えられないのです。

ですから原因探しをしても、
多くの場合は徒労に終わることになります。

ではどうするのかと言うと、
先ずは目指すべき目標や方向性を
定めることです。

それを見つけるのに重要なのが
「どうなったらいいと思いますか」
という質問です。

これは問題が解決した状態を
はっきりさせるための
とても重要な質問です。

もしこの質問をせずに話を続けてしまうと
ゴールがはっきりしないまま進むため、
結局、何をしているのか
よくわからなくなってしまうのです。

あとは、その目標を
実現可能なレベルまで小さくします。
ここまでできれば
あとはそう難しくありません。

その小さな目標を実現するための具体的な行動を、
質問を通して引きだしていきます。

過去にうまくいった経験や、
こんなことならできるかもしれないと
思われる対処法をたずねればよいのです。

最終的に、これならできそうと思われる、
小さな行動が見つかるので、
それを実行してもらったらよいのです。

この際に大切なのが、
問題を解決しようと思わないことです。

人は、何とかしようと思えば思うほど、
また自分を変えようと思えば思うほど、
堂々巡りに陥り、
二進も三進も行かなってしまいます。

何とかしようと必死になっていると、
なかなかうまくいきませんが、
そのこだわりをいったんわきに置き、
とりあえず目の前にある
できることからやっていくという、
そんな姿勢が問題解決には必要なのです。

逆説的な言い方ですが、
問題を解決しようと思っていると
なかなか解決できませんが、
解決しようという思いを手放したとき、
自ずと解決の方向に進みだすのです。

だからこそ、悩みを持った相手に、
「どうしたら解決できるんだろうか」と
考えさせてしまうような対応ではなく、
「こんなことならできるかもしれない」と
思ってもらえるようなかかわりが
大切になってくるのです。

そのために必要なのが、
1、問題の原因は探らないこと
2、ゴール(目標)や方向性を明確にすること
3、「今」できることだけに意識を向けること

この三つが重要になります。
実はこのような考え方は
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)
という、最近流行ってきた心理療法の考え方と
よく似ています。

ACTについては次回ご紹介させていただきます。