ブログ:心配です

新型コロナウイルスの流行で、
私たちの生活様式は
すっかり変わってしまいました。

どこに行くにもマスクをしなくてはならず、
マスクをせずに人混みの中を歩いていると、
白い目で見られます。

最も大きな変化を感じるのは、
人が集まる会議や集会、研究会の自粛です。

それに代わって
Zoomや動画による会の開催が
盛んになってきました。

会議嫌いの私にとっては、
各病院から定期的に集まる会議が
なくなったことは嬉しく思います。

しかし、学会や研究会、講演会も中止、
もしくはzoomや動画での開催になってしまったため
実際にみんなで集まるという機会が
ほとんどなくなってしまいました。

日本各地で行われる学会などは、
勉強するという本来の目的の他に、
気晴らしや他のメンバーとの交流という
もう一つの大切な目的もあります。

ところが、中身が動画になってしまうと、
目的のひとつであるお出かけ気分を味わうとか、
仲間で楽しく飲むという機会がないため、
かなりモチベーションが下がります。

私が毎年参加していた緩和医療学会も、
今年は集会が中止になり、
動画配信という形に変わりました。

新しい知見を知りたいとか、
他の人の意見を
聞きたいという思いはあるものの、
それだけではどうしても参加する気にはなれず、
結局、今年は参加するのをやめてしまいました。

学会に参加する際、
いかに気晴らしや交流という側面が、
大きな影響力を持っていたのかを
改めて感じた次第です。

楽しみとしての側面があるからこそ、
勉強も頑張ってみようと思えるのであって、
講演を聴くだけであれば、
よほど興味のあるもの以外は、
やはり気持ちが乗らないものです。

こんな不真面目な人間は
少数派かもしれませんが、
明らかに同じような思いを持っている人は
それなりにいるとは思います。

また、歓迎会や送迎会も
やらなくなってしまいました。

個人的に飲みに行くのはよいとしても、
少なくとも病院としては、
5人以上での飲み会は禁止という
おふれが出ているので、
当然、歓送迎会もできません。

人は、仕事での顔と、
飲み会などでの顔が異なることは
しばしばあります。

だからこそ、相手の意外な側面が見えたり、
思いの外、親しみを感じたりすることがあるので、
そういう意味では飲み会などの交流の場は、
とても大切だと思っています。

ところが、今は
その機会もなくなってしまいました。

仕事や勉強といった本質的なこと以外は、
単なるおまけだと思いきや、
実は、そこにはもっと大切なものがあるのです。

にもかかわらず、
飲み会などを自粛することを余儀なくされ、
その大切なものが、
見失われてしまうのではと危惧しています。

人は、理由があって一度やめてしまうと、
再度、やり始めるというのは
なかなか気が進まないものです。

特に本質的なものではないと思われる
懇親会のようなものは、
なくても全く問題ないので、
感染予防の名目のもと、
消え去ってしまう可能性も否定できません。

しかし、そうなると、
仕事上では得られない
「つながり」や「きっかけ」という
大切なものが失われていきます。

人が気づいたり変わったりするのは、
ちょっとしたことがきっかけだったりすることが
よくあります。

誰かの些細な一言だったり、
ちょっとした出会いだったり、
そんなことが人の意識を変え、
行動や考え方を変えるのです。

そのようなことは、
いつもの仕事とは異なる状況で
起こることの方が圧倒的に多いのです。

だからこそ異業種交流会といったものが
もてはやされるのです。

また、私が医者になった30年前とは異なり、
今はスマホやインターネットの普及により、
人と直に会わなくても、
ある程度の仕事はできてしまいますし、
相談事なども全てメールで片付きます。

ところがその便利さとは裏腹に、
人とのつながりが
希薄になってしまった気がします。

それは他人の思いや情緒、感性といった
目に見えない感覚の部分にも影響を及ぼします。

携帯電話やメールの出現により
速さや便利さを手にしましたが、
その代わりに、
人とのつながりや交流の場が減り、
それによって失われたものも
少なくないように思います。

今回の動画への移行により、
ますます人とのつながりが
失われていく気がしてなりません。

状況が落ち着いても、
一度、便利さを知ってしまうと、
もう元のようには戻れません。

無駄や非効率、わずらわしさの中に、
実は、気づきや成長のチャンスがあるのですが、
そのような機会は、
今後はどんどん失われて
いくのではないでしょうか。

無駄だと思われる時間にも価値があり、
不要と思われるものの中にこそ
新たな発見があることを、
忘れないでほしいものです。

この世の中はこれから
どうなってしまうのでしょうか。

無機質な人間が
満ち溢れるような世の中にだけは、
ならないことを祈ってやみません。

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